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海遊館でジンベエザメに海のことを聞いてみよう!~海と日本PROJECT~

海遊館でジンベエザメに海のことを聞いてみよう!は、日本財団が推進する「海と日本プロジェクト」のサポートプログラムです。

2017.09.08

海遊館でジンベエザメに海のことを聞いてみよう!は、日本財団が推進する「海と日本プロジェクト」のサポートプログラムです。北海道大学教授から最新のジンベエザメ研究についての講義を受け、海遊館飼育員や参加者同士で交流を深めました。

海遊館で人気のジンベエザメをとりあげ、北海道大学名誉教授など、3名の講師による講演会を開催することで、幅広い世代に、海洋生物や海そのものに関心をもってもらうことを目的とします。

日程
8月6日(日)シンポジウム:10:00-12:45  サイエンスカフェ:14:00-17:00

開催場所
海遊館  シンポジウム 1階大ホール、サイエンスカフェ 4階 VIPルーム

参加人数
シンポジウム107名(事前申し込み98名、当日参加9名)
サイエンスカフェ20名(事前申し込み)

主催
海遊館

講演会1 サメの仲間とジンベエザメ〜その姿と暮らし〜
このたびの講演会は、サメ研究者であり、北海道大学名誉教授の仲谷一宏博士、海遊館と共同でジンベエザメによるバイオロギングの研究を進める北海道大学の宮下和士教授、遺伝子レベルで脊椎動物の進化を研究する理化学研究所の工樂樹洋博士の3名が、約50分間ずつ講演。海遊館でも人気の高いジンベエザメに関して3名の研究者から話が聞けるとあって、徳島、埼玉や千葉県などから参加した人たちもいました。

乱獲による生息数の激減が危惧されるジンベエザメ。海遊館でも「海くん」、「遊ちゃん」の2匹を飼育中で、4階から7階まで貫く大水槽を悠々と泳ぎ回る姿は、小さな子どもから大人まで大人気です。

仲谷博士の講演は、テンジクザメ目のテンジクザメ科、クラカケザメ科、コモリザメ科など7科の特徴についてスライドを使いながら紹介。来場者の大半はサメ好き。もうこの時点で、場内の視線は仲谷博士に釘付けとなっていました。
次に仲谷博士が取り上げたのは、テンジクザメ目のサメの鰓孔の特徴について。鰓孔の数は種により5~7対あり、テンジクザメ目は5対。通常、魚類は口から水を入れ、二酸化炭素を多く含む水を鰓孔から排出する鰓呼吸を行っています。では、テンジクザメ目ではどうか? 仲谷博士は、5番目の鰓孔についての研究成果の一部を紹介しました。
会場内ではスマートフォンなどに壇上のスライド写真をおさめる光景が見受けられました。それがもっとも顕著だったのが、テンジクザメ目の生殖法について説明が始まってから。サメは卵生と胎生があり、胎生のジンベエザメでは、一度に300匹もの子どもを妊娠した個体が確認されています。その写真が紹介されると、会場内にどよめきがおこったほど。子どもからシニアまで、世代をこえてサメの話を楽しんでいるのが伝わってきました。
仲谷博士の講演はさらに、種類によるエサの食べ方にまで及びました。質問タイムには、プランクトンを食べているのになぜ、魚類で最大のサイズにまで成長できるのか、頻繁に生え替わるサメの歯のメカニズムなどについて質問が寄せられ、おおいに盛りあがりました。

講演会2 バイオロギングでジンベエザメを追う
続いて、北海道大学の宮下教授の講演となりました。テーマの「バイオロギング」とは、生き物に発信器を装着して生態等を調査することをいい、バイオ(生物)+ロギング(記録)を掛けあわせた造語です。このバイオロギングでは、おおむね以下について観察できます。
①生き物の行動のメカニズム(泳ぎ方、エサの食べ方、潜り方など)
②生き物の生理(体温調節、心拍数調整などのしくみ)
③生き物の社会行動(子どもの教育や群れの行動など)
④生き物の環境(たとえば水中の生き物なら、その行動から水中のさまざまな情報を集めてもらう)

宮下教授は北海道で行ってきたサケの産卵行動についての研究成果を動画で紹介しました。カメラを背負うのはサクラマス。テレビ番組など一般的に目にするサケの遡上光景は、俯瞰もしくは、カメラマンが手にする水中カメラを使ったものがほとんどですが、バイオロギングでは、魚の目線で川の中での産卵行動を見ることができます。カメラはサクラマスのあいだをスルスルと自在に進んでいき、臨場感たっぷり。場内から驚きの声があがりました。
さらに、宮下教授らのグループは、オホーツク海を南下する流氷に乗ってきたゴマフアザラシの子どもに発信器をつけて行動範囲を調査。オホーツク海沿岸の紋別市沖合で放したゴマフアザラシはサハリンまで泳ぎ、その後、再び南下してオホーツク海を泳いでいたことが判明したということです。

そして、話題はいよいよ海遊館との共同プロジェクトによるジンベエザメの回遊について。このジンベエザメは高知沖の定置網にかかったものです。しかし、最初の2回は失敗。そこで、設定した日時に自動的に切り放されるポップアップアーカイバルタグ(衛星タグともよばれる)を装着。これにより衛星に送信された情報は、衛星を介して研究者の端末に届きます。3回目にようやく成功し、1か月間のデータ(回遊の範囲)を回収したところ、高知沖から日本列島近海を北上していることがわかりました。4回目では黒潮にのって回遊していることが判明。さらに5回目では日本列島をいったん北上したジンベエザメが、6か月のあいだにフィリピンまで南下したことがわかりました。
また、以前は浅いところを泳いでいると思われてきたジンベエザメが、成功した3回の調査で、最大1,650メートルまで潜ったことも判明。しかも、わずか70分間の間に一気に潜り、浮上していました。
なぜ、短時間のうちに深いところまで潜るのか? 仮説としては、エサを探すため、効率よく移動するため、体温調整(体内にこもった熱を下げる)のためなどが考えられるとのことです。次なる目標は1年間の追跡データの回収で、調査は現在も続いています。

講演会3 DNAで見るジンベエザメと私たちの関わり
午前中最後のプログラムは、神戸にある理化学研究所に在籍する工樂樹洋博士による講演です。博士の主な研究は、「分子進化学&発生学」で、このたびの講演テーマは、「 DNAで見るジンベエザメと私たちのかかわり」についてです。
DNAで調べると、たとえば「シノノメサカタザメ」は、サメではなくエイの仲間であることが簡単にわかるとのことで、DNAレベルでの研究の重要性を思い知らされるエピソードが紹介されました。
続いて、ジンベエザメなどの DNAの調査方法の紹介がありました。海遊館で行われた採血の様子をおさめた映像では、給餌中、立ち泳ぎをするジンベエザメに、エサを与えます。すると、海面に浮上してきたジンベエザメの海くん、遊ちゃんは立ち泳ぎの姿勢で、海水とともにガバーッとエサを口に入れます。そのとき、ダイバー(飼育スタッフ)がそっと近づき、尾びれのあたりに注射器の針を刺しました。静止に近い状態なので、採血がしやすいとのことです。

さらに、講義はジンベエザメとヒトの推定ゲノムサイズの比較や、幸せホルモンと呼ばれるオキシトシンのアミノ酸配列の比較などだんだんと高度に。とはいえ、うなずきながら聞いている高校生や大学生らしき参加者もいました。

3名の講演を終え、最後は講演者が勢揃いしての質問タイム。仲谷博士がサメの研究者になった動機をたずねる中学生、「海洋生物に関係する仕事につきたいがどうしたらよいか?」と悩みを打ち明ける20代女性などさまざまな質問が飛び交いました。

 

海遊館大水槽前でサイエンスカフェ開催
午後から行われたサイエンスカフェに集まった20名は、「海遊館 いきものサロン」の方々で、根っからの海洋生物好き、海遊館ファンの方です。シンポジウムの講師3名に加えて、サイエンスカフェには海遊館の獣医師、伊東隆臣さんやベテラン飼育スタッフらも参加しました。ソファでくつろぎながら、参加者全員が自己紹介したのち、3名の講師がシンポジウムの概要を、スライドを使いながら紹介しました。
「ミツクリザメは、自分は動かないで、パクッとあごを前に出してエサを食べる。シュモクザメは水平舵を確保しており、エサの脇を通りすぎてから、すぐに回転してエサを食べる」と北海道大学の仲谷博士がサメの摂餌方法について説明しているあいだにも、VIPルームの向こう側では、シュモクザメやエイ、アジなどの回遊魚が泳ぎ回っています。
「ジンベエザメの追跡調査で……」などと北海道大学の宮下教授が説明している最中に、ガラスの向こうでジンベエザメの巨体が近づいては消えていきます。「すばらしいですねえ」と参加者のつぶやきがあちこちで聞かれました。
いっぽう、理化学研究所の工樂博士の話題はシンポジウムではほとんどふれられていない イヌザメについてでした。海遊館の水槽にも成熟した個体が21匹おり、年中産卵するため、ゲノム研究などに利用できる条件が整っていたとのこと。いまはどのメスが卵を産んでいるか判別できていないため、宮下教授のバイオロギングの技術で産卵行動を調べてみたいと抱負を語っていただきました。
この後、サイエンスカフェの後半は、参加者全員が思い思いの場所でフリートーク。その大半は、水槽の前に立ち尽くしたまま、西田館長や仲谷博士をはじめとする講師陣や海遊館スタッフと談笑していました。日頃の疑問をたずねたり、海への熱い想いを語ったりしながら、海のスペシャリストと海好きの会話は途切れることなく、17時の終了まで続きました。

 

【ジンベエザメとは】

テンジクザメ目ジンベエザメ科に属します。ジンベエザメ科では唯一の種で、全長は大きなもので13メートル以上に達し、サメのなかでは最大の大きさを誇ります。エサは動物性プランクトン。熱帯から温帯にかけて世界中の海の表層面を生息域としています。

 

<告知チラシ>

イベントレポートは実施事業者からの報告に基づき掲載しています