INTERVIEW
【なんでゴミ拾ってるんですか?vol.3】
in VIETNAM
国連環境計画(UNEP)のレポートによれば、毎年70万トンのプラスチックごみが海に流れ出てしまっているというベトナム。焼却場が不足していたり、埋立地が溢れてしまっていたりといった問題を抱える中で、今回スポごみ世界大会の予選が、かつて「東洋のパリ」と呼ばれたホーチミン市にて実施されました。大会を後ろから支えているのは、大学で日本語を学びつつ環境問題対策にも取り組んでいる、大会オーガナイザーのリンさん。無事に清掃活動が終わったタイミングで、自身のルーツ、スポごみへの想いなどをインタビューさせていただきました。
私はここホーチミン市生まれなのですが、実家の近くに子どもの頃からよく通っている、とても緑が美しい公園があるんですね。人生のターニングポイントの時には必ず訪れる大切な場所なんですが、だからこそ綺麗に保っておきたくて、公園に行くたびにごみ拾いをするようになりました。公園と私の心は一心動体なんです。公園が綺麗になっていれば、私の心も澄み渡る。おかげさまで清掃活動することがすっかり当たり前になっています。日本語もよくそこで勉強していますよ。
ベトナムに来ている日本人の方々と話すうちに、もっと流暢に話したいと思ったのがきっかけです。日本人の環境意識の高さは世界一だと思います。実は私はサッカーが大好きで、ワールドカップも朝早く起きてほぼ全試合みたんですが、日本人のサポーターたちが試合後にごみ拾いをしている姿がベトナムでも話題になりました。日本を通して環境問題を勉強したいと思い、大学では日本語を専攻しました。ちなみに、今は3年生なので卒業に向けて「スポごみ」をテーマに論文を執筆しています。卒業後は観光とSDGsの関係について等、日本と同じく環境対策が進んでいるドイツの大学院へ学びに行きたいですね。
溢れかえった埋立地の問題をはじめ、手をつけなくてはいけない問題は色々あると思いますけど、例えば市民レベルでいえば、ごみの分別がまったく行われてないことがありますよね。高級マンション以外では、燃えるゴミも燃えないゴミもペットボトルといった資源も全部ひっくるめてごみに出してしまっています。理由は沢山ありますが、厳しいルールが整備されていないことが大きいのではと感じます。ルールを破っても罰金されないので誰も従いません。例えばベトナムはバイク社会なのですが、バイクに乗っている赤ちゃんのミルクをそのまま親が運転中にポイ捨てしててしまうなんてこともよくあります。戦争が終わってから、まだ50年も経っていないので、これから経済成長をしていく過程で、市民への環境教育の在り方も考えていかなきゃいけません。そういう意味で今回、スポごみを通して若い人たちが自主的に分別について勉強できたことはとても重要です。
実は参加者を募集するまでは、正直ここまで沢山の人たちが集まるとは思っていませんでした。しかも若い参加者がほとんどです。もちろん日本行きのチケットがかかっていることもありますが、環境に対するベトナム人の関心が急激に高まっているのかもしれません。ベトナム人だけではなく世界中のひとたちが、サッカーのように、このスポごみワールドカップを通して環境対策で一つになることで、次世代に豊かな地球環境は受け継がれていくのだと思います。私は選手ではないので今回は東京には行きませんが、そのうちぜひ、キレイな街・東京へ行ってみたいと思います。それまで引き続き、ごみ拾いと勉強を頑張ります!
リンさん(本名:Nguyen Hong Linh)
2020年4月 Hong Bang大学に入学 日本語学科専攻
ご出身:ベトナム社会主義共和国ホーチミン市
趣味:清掃活動、サッカー鑑賞
好きなサッカーチーム:ドイツ代表
日本のお気に入りの場所:北海道(日本で行ったことがある唯一の場所)
SNS:Facebook・Instagram
最後に一言
ベトナムは未だ発展途上ですが、この20年間、経済は成長し続けています。環境への意識も日本のようにこれから飛躍的に変化していくと思うので、ぜひ見守っていただけると嬉しいです。
ベトナムは世界で4番目の海洋プラスチック排出国と言われていますが、実際に現地を訪れてみると街中の散乱ごみはそこまで多くはなく、発展途上国ならではの取り組みが自然発生していたり(溢れた資源ごみ等を非公式に回収する民間人、それを買いとるジャンクショップやリサイクル工場が複数ある等)想定していたイメージとのギャップに驚くことが多かったです。また、リンさんへのインタビューを通じて、若いひとたちの環境意識の高さや、これからますます発展を続けていくであろうベトナムの明るい未来が垣間見えました。