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INTERVIEW

【ココに注目!スポGOMIワールドカップ2023 vol.1】

アンバサダー松田丈志さん
~世界大会がみんなのものに~

in JAPAN

初開催となるスポーツごみ拾いの世界大会「スポGOMIワールドカップ2023」。2023年2月の発表後、日本を含め海外でも順次、予選大会が開催されていますが、ほとんどの国がスポGOMIの初開催国です。そんな中、参加した方は皆「参加して良かった」と笑顔を見せてくださいます。
このスポGOMIの特徴とは、他のスポーツにはない魅力とは、そして、競い合うことの是非について世の中では様々な声が上がる中、あえてごみ拾いを競技にする意味とは・・・
かつて4大会連続でオリンピックに出場し、競泳男子で計4個のメダルを獲得。現在は日本オリンピック委員会のアスリート委員長や、今回のスポGOMIワールドカップのアンバサダーなど、多方面でご活躍されている松田丈志さんにお話を伺いました。

このワールドカップが企画される前から、スポGOMIを広めるアンバサダーをされてきました。世界大会と聞いて、初めにどんな印象を持たれましたか?

僕の場合、世界大会にあこがれを持ちながら水泳競技をしてきました。そして実際に出場できるようになって、世界の舞台で味わった楽しさや悔しさ、そして様々な経験を通して自分自身も成長してきました。だから世界大会というのは好きですね。

一方で、頭の片隅にあったのは、世界大会というのは誰もが経験できるものではないということでした。水泳に限った話ではありませんが、世界の舞台に立つためには、本人の努力はもちろんですが、体格など生まれ持ったものによる面もあると思います。

これに対して、スポGOMIの良さは誰にでも世界大会に出場できるチャンスがあるということです。世界大会という言葉がみんなのものになったような感覚がして嬉しかったですね。

そもそもスポGOMIアンバサダーにはどのような経緯で就任されたのでしょうか?

出演していたスポーツニュース番組の取材で、墨田区内で開催された「スポGOMI甲子園」の決勝大会を見に行ったのがきっかけでした。2020年の11月です。

最初は野球の甲子園のように、身体能力のずば抜けた高校生が出場しているのかなと思って見に行きましたが、スポGOMI甲子園では幅広いバックグラウンドの高校生が選手として出場していたのが印象的でした。

例えば、スポGOMIのルールに「走ってはいけない」がありますよね。そこで競歩部の女子生徒3人はそのスキルを活かしてもの凄いスピードで移動していました。他にも、部活動が掃除という「掃除部」の子もいました。例えば水泳のインターハイであれば、泳ぐ能力が高い人や、競争を勝ち抜いてきた人しか出ることができませんが、スポGOMI甲子園には、経験がない人でも出られますし、予選大会を勝ち上がれる可能性がありますよね。スポーツはちょっと苦手・・という子も出場しているのがとても良いなと感じました。

そんな経緯もありまして、アンバサダー就任のお話をいただきました。その時、国外でもスポGOMIが広まっているという話を聞きました。環境問題に対する意識から、日本発の取り組みとして世界に広がっているのだなと。その時から、いつか世界大会が開かれたらと期待していました。そしていよいよ、その時がきたのだなと思います。

過去の大会で、印象に残っているシーンなどありましたら

これまで東京のほか、新潟県佐渡市や静岡県富士市、三重県津市等、全国各地の大会に参加してきました。ほとんどが友達や知り合い同士でチームを作って参加していたのですが、中には大会当日に急ごしらえしたチームもあって、お互いの会話にぎこちなさも残る中ごみ拾いに出発していました。でも、試合後はすっかり仲良くなっていたんですよね。短い時間でも同じ目標に向かって活動するだけで、こんなに絆が深まるのだなと改めて思いました。

各地の大会に参加してきた松田さんにとって、スポGOMIならではの魅力とは

普通のごみ拾いだと、時に「やらされている感」といいますか、そういったネガティブな感じになる時も正直ありますよね。でも、スポGOMIの場合、ごみを拾ったら得点になりますから、ごみを見つけると「よっしゃあっ」ってなるんですよね。

もちろん、ごみが落ちているのは良いことではありませんよ。でも、ごみ拾いが楽しいものに変わるのは良いことだと思います。それに、一度ごみ拾いをした人は、今後ごみをポイ捨てすることはないのではないでしょうか。スポGOMIに参加した人が増えれば増えるほど、街中のごみが減っていくと思います。

スポGOMIは性別や年齢、障害の有無関係なしに、誰でも参加できるところも魅力的です。これからの時代、多様な人との関係性が重要だと思います。小さいコミュニティで生きるのではなくて、いろんなバックボーンを持った人と関わっていくことが子どもたちの成長にも大事だと思いますし、アスリートのセカンドキャリアにだってそういうのは重要だと思います。いろんな人生や背景がある人たちとの接点があることで、その人の人間性を高めると思います。スポGOMIはそんな人たちとの出会いをもたらしてくれる場にもなるはずです。

世間では時に、競争することの是非についていわれることがあります。さらに「競うことは良くない」という声も一部にあります。そのような中、スポGOMIは、ごみ拾いをあえて「競技」にしていますよね

僕は競うことは大事なことだと思います。世の中は競争社会ですし、競争があることで磨かれるものや成長する瞬間は必ずあります。ただ、大事なのは競争する時のルール作りだと思っています。

仮に本気で勝ち負けを競うとして、例えば僕と水泳を始めたての小学生が競争することには何の意味もありませんよね。他にも例えば、全国大会に出場できるのはその都道府県予選で勝ち上がった一校のみという条件のもとで、全寮制で勉強もろくにしないで練習ばかりしている学校と、県立で勉強もしっかりやっている学校に試合をさせて勝ち負けを決めるのは、果たしてどうなのか・・

スポーツ競技で大事なのは公平性ですから、いかに公平にプレイできる状況を作り出せるかが大事だと思います。その辺りの細かいルール作りができれば「より良い競争」ができると思います。

競争にも、良い競争と悪い競争があるのかもしれないですね。そして良い競争にするにはルール作りがポイント。確かにそうですね。

公平性を追求するのであれば、スポGOMIもまだルール上での検討余地はあるかもしれません。例えば拾ったごみに土がついていたら重さが増しますよね。これをどこまで良しとするのか。大会の規模や、優勝したチームに渡すものが大きくなればなるほど、プレイする側は過熱していきますし、“本気で”勝ちたいという人も出てくるでしょう。大会によっては、新たなルールの整備や、遵守体制をより厳しく敷く必要が出てくるかもしれませんね。

重要なご指摘です。実は今回、世界共通のワールドカップルールを作ることにしまして、既存ルールをベースにしてはいますが、一部見直した部分もあります。また新しく取り入れた制度もあります。例えばより厳格にルールが遵守されるように、1チームにつき1人の審判(安全管理も兼)をつけるなど。これまでのスポGOMIはレクリエーション性が高いものでしたが、ワールドカップルールのスポGOMIはより競技性が高いものになっているといえます。

オリンピック種目でも、まさにそのような歴史や経緯があります。例えば柔道では、道着の色もそうですし、技が決まる・決まらない時の線引きなど、様々なルールが整備されてきました。今のスポGOMIの良さを残しつつ、一方で新しいカタチをどのように作っていくのか。重要なことだと思います。

年齢や性別など関係なしに参加でき、戦略や戦術、チームワークで誰もが勝てる可能性があるといわれるスポGOMI。コツなどありましたら

地図や移動している時の情報から、ごみが溜まっていそうな場所を推測して素早く移動するといった戦略を立てることが大事だと思います。一方で、海外の方からすれば、日本の街は一見、すごくきれいだと思います。「これで競技ができるのか!?」と驚かれる方もいるかもしれません。

でも、一見ごみがなさそうでも、あるところにありますよね。例えば植え込みの中や大きな道路の信号付近。タバコの吸い殻なら駐車場や自販機、喫煙所やコンビニ付近などに落ちていることが多いですよね。

日本の場合、もちろん堂々とポイ捨てしている人もいますが、こそっと見えないところで、というケースが多いかもしれません。この記事は英訳もされるということで、特に海外の代表チームの方に参考になりましたら。

 最後にアンバサダーとして、読者に意気込みをぜひ

私の願いは、いつかスポGOMIが開催できなくなることです。それくらい街にごみが無い社会になったら良いなと思います。実現するのは確かに難しいことですが、目指し続けて実際にアクションすることが大事です。スポGOMIに参加することで、ごみやごみ拾いに対する意識は変わります。ですから、スポGOMIの参加・競技人口を増やして、環境に対する意識を持つ人を増やしていければと、活動していきます。

SDGsの認知も高まる中、「何かしなければ」と思いつつも一体何をしたら良いのかわからない・・という人も多く見られる中、スポGOMIの魅力を発信して、参加を呼びかけていきたいと思っています。

PROFILE

松田丈志さん

宮崎県延岡市出身。1984年6月23日生まれ。
4歳で水泳を始め、久世由美子コーチ指導のもと実力を伸ばし、長きにわたり競泳日本代表として活躍し、数多くの世界大会でメダルを獲得した。
オリンピックには、アテネ大会より4大会連続出場し4つのメダルを獲得。
ロンドン大会では日本代表チームのキャプテンを務め、出場した400mメドレーリレー後のインタビューで「康介さんを手ぶらで帰すわけにはいかない」とコメントした言葉が2012年の新語・流行語大賞のトップテンにもノミネートされた。
32歳で出場したリオ大会では、日本競泳界最年長でのオリンピック出場・メダル獲得の記録を作る。
2016年の国体を最後に28年の競技活動を引退。
現在はスポーツの普及・発展に向けた活動を中心に、スポーツジャーナリストとしても活躍中。

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