INTERVIEW
【なんでゴミ拾ってるんですか?Vol.5】
in INDIA
体感気温40度を超える猛暑の中で行われたインドステージ。インド南西部の都市、チェンナイにあるビーチをフィールドに、28チームが熱戦を繰り広げ、317kgものごみが集まりました。
予選大会開催にも協力をいただいた、現地の環境団体、ViDHAI Recyclingの代表DIVYA P VENKATさんにインドのごみ事情や環境運動にかける想いについてお聞きしました。
私はチェンナイでプラスチックの技術者をしていて、R&Dやプラスチックの処理や生産、デザイン、マーケティング、リサイクルなど、プラスチックに幅広い業務を行っています。
そんななか、ごみ置き場に行ったあるとき、廃棄されたプラスチック医療ごみで子どもが遊んでいる状況を目にしました。捨てられた注射器などが子供のおもちゃにされていたのです。この様子を目の当たりにして、ごみ問題を何とかしたいという想いを抱きました。
――ViDHAI Recyclingの活動について教えてください。
プラスチックの環境問題について広く取り組んでいます。ビーチクリーンなどの清掃活動のほか、プラスチックごみ問題について学校で子どもたちに教えたりしています。例えば、使い捨てのプラスチックバックはなぜよくないのか、などです。
また、漁網を投棄することなどの問題について、漁師やその子供たちに教えています。インドの漁師は投棄された漁網による海洋プラスチック発生の問題についてあまり知りません。そこで、この問題について漁師の子供たちに教えることで、漁業者全体の認識の変化を狙っています。
2014年にこの活動を始めたときは、教育を受けた後になぜごみ拾いに取り組むのか、不思議がられることも多くありました。しかし最近は周りの人たちは熱意を認めてくれていて、自主的に分別に取り組んでくれたりもしています。
ViDHAIの職員は25名いますが、そのほかにボランティアで活動に参加してくれる人がいて、海岸での清掃活動に参加してくれる人は600人ほどです。このボランティアの多くは学生です。
――インドのごみ回収の仕組みや、インドの人々のごみのポイ捨てに対する考え方は?
まずインドにおけるごみ回収についてですが、今回予選を開催したチェンナイなどの大きな都市の場合は、基本的には行政がごみの回収と処理を管理しています。
行政の管理下にある公社が私企業と契約をして、それぞれの家からごみ回収を行っているのです。ごみを回収するシフトは朝、夕方、深夜となっています。
インドでぽい捨てされているごみのうち、6割のごみが食べ物関係のごみと言われています。
そしてその多くは、人々が仕事終わりなどに捨てて帰ったりするものです。ごみ箱があればみんな当然そこに捨てるのですが、ごみ箱がいっぱいになってしまい、そこから漏れ出ているケースもよくあります。
インドはとても人口の多い国です。そして今は若者がとても多い。大人の場合はごみへの意識をなかなか変えてくれませんが、若者は違います。若者や子供たちにアプローチすることでこの現状を変えていきたいと思っています。
――インド社会のごみ拾いへのまなざしについてはどうでしょう?
そちらもまた少しづつ変わり始めています。
スポGOMIインド予選でもみんな楽しんでごみを拾ってくれました。
――スポGOMIには普通のごみ拾いとは違う点が多くありますが、スポGOMIの意義や役割は何だと思いますか?
スポGOMIはユニークな取り組みで、ごみ拾いの参加者も集めることができますし、今回のワールドカップでは日本に行くことができるということで参加者のモチベーションも高いです。
また、スポGOMIを通して分別への意識を向上させられているところも大きいと思います。インドでは分別意識があまり浸透していませんが、参加者は分別の意識も得てくれたのかなと感じています。
――おっしゃる通り、スポGOMIでは拾うことだけではなく、分別することがポイントになっています。
通常の海岸の清掃では分別について意識することがあまりなく、拾うことだけが目的になってしまいがちなのですが、スポGOMIはそうでないところがいいですね。
インドではみんながみんな分別意識を持っているわけではなく、分別せずに捨てる人や、そもそも分別方法を知らない、という人も多いんです。
今回の予選は海岸で行われましたが、今回の実績をもとに街中でも展開していきたいですね。
3つのステップがあると思います。
一つ目は市民の認識の向上です。何が問題なのか、一人一人が知る必要があります。
二つ目はアクションの呼びかけです。例えば、プラスチック袋を使わないように呼びかけたとしても、では代わりに何を使えばいいのかわからなければ意味がありません。ViDHAI Recyclingではオーガニックバッグを使うことで、環境に負荷をかけずに暮らせる、というようなことを発信し、実際にオーガニックバッグを配ったりもしています。
三つ目は政策の提言です。環境問題解決のための政策を立案するよう働きかけ、政府からの環境問題解決への取り組みを実現することですね。
ディヴィヤさん(Divya P Venkat)
2014年にViDHAI Recyclingを設立
出身:チェンナイ
趣味:SF小説、シャーロックホームズシリーズの大ファン
好きなクリケットチーム:チェンナイ・スーパー・キングス
ウェブサイト:https://vidhairecycling.in/
最後に一言:
気候変動の脅威が迫る現代においては、子どもたちや市民に社会的責任に対する意識と感性を持たせるために、スポGOMIのような活動やスポーツを確立し、創造し、実施することが求められています。ゴミ拾いをスポーツにすることは、SDGsの重要性を示すと同時に、多面的な強いメッセージを発信します。スポGOMIに参加し、ワールドカップで優勝することは、私たちが母なる地球、自然、そして周りの仲間を大切にすることを示す、より新しい未来への道を開くことになります。
今や世界で最大の人口を持つインドですが、ごみの分別やぽい捨ての抑止などについては社会基盤の整備が未発達な部分があり、街中では道端などに捨てられているごみを多く目にしました。 そのようななかで、DIVYAさん率いるViDHAI Recyclingはプラスチック問題に対し幅広い活動を行っていました。スポGOMI運営としても、今回の予選開催がインドのプラスチックごみ問題解決の一助になることを願っています。