INTERVIEW
【なんでゴミ拾ってるんですか?vol.2】
in ITALY
2020年9月より世界で初めて環境教育を制度上“義務化”したイタリアでは、小学生から高校生まで、年間で最低でも33時間の授業を受けることが必須だといいます。そんな環境意識の高い観光大国イタリアの南部、澄み渡る瑠璃色の海に囲まれた都市・トロペアで毎週ごみを拾い続けているのは、 2018年から同市の市長を務めているジョヴァンニさんです。その献身的な姿から町のひとと清掃中に出くわしても市長だと気づかれないそう(笑)トロペアの姉妹都市である南あわじ市を訪れにちょうど来日されていたので、インタビューをさせていただきました。
私が市長を務めているイタリア南部の都市・トロペアは、人口約6,300人と小規模な都市ながら、毎年観光客が多く訪れる人気の場所なんだ。なので季節によっては街中にごみが多く散乱してしまうことがある。たとえばイタリア人はよくチューイングガムを噛むんだけど、ごみ箱が設置されているにも関わらず、そのまま路上で吐き出してしまうひとが多々いる。そういった現状を受けて、毎週末、土曜日と日曜日に街のごみ拾いをしているんだ。当初は自分から率先して妻と一緒にごみ拾いやプロギングを実施し、その様子を毎回SNS上で公開していった。すると、みるみる参加者が増えて、今となってはまるで「フォレスト・ガンプ」のように、多くのボランティアたちが僕の背中に続いてごみ拾いを行ってくれているよ。だから、今回はじめてこの「スポGOMI」の開催について相談された時は、即答でイエスと答えたね(笑)まさに我々が求めていた、本当に素晴らしい試みだと思う。
たとえば、タバコのポイ捨てが後を絶たないことに対しては、観光客のひとが適切に吸い殻を捨てられるように、トロペアの美しい景観が描かれた携帯灰皿を、訪れる人に無償で配っているよ。窓が割れているとその町全体の治安が乱れてしまうというセオリーがあるように、道端のごみだけじゃなく、雑草を抜くとか、常にキレイな街を目指して日頃からさまざま取り組みをしているんだ。イタリアは、産業廃棄物といった企業に課されたルールは厳格だけれど、家庭ごみといった市民レベルのごみのルールはまだまだ緩いんだ。ルールを守る市民の意識の低さも目立つ。だから、私が台風の目となってトロペアから人々にお手本を示していかなければならない。観光客にマナーを教えるためには、まず住民である自分たちが変わる必要があるからね。
ここまで多くの人たちが住んでいる大都市にもかかわらず、こんなにも隅々までキレイなのには本当に驚いたよ。一昨日は知事さんに表敬訪問をしに、香川県に行ってきたんだけど、地方の街も本当にキレイだったね。それは日本の教育の賜物であると思う。日本の小学校では生徒たちが自分たちの教室を掃除するという文化があると聞いた。ぜひともトロペアの学校にも取り入れたいと思っている。
よく南北問題と言われるように、イタリアは北に比べて、南は貧乏で民度も低いなんて言われてしまうんだけど、トロペアは別だと言いたいね。マーケティング的な観点からも、街を綺麗にすることが有利に働くと気づいている自治体は、まだまだ少ないんじゃないかな。ちなみに、トロペアの海辺に流れ着く海洋ごみはシチリア島由来のものが多いんだ。貧乏であることと街をキレイに保つことは全くの別物ってことを、この「スポGOMI」を通じて他の市へも伝えていきたいね。
まずは、自分の街を愛しましょう。サッカーファンを見れば分かるように、イタリア人は自分の生まれた地に誇りを持っているひとが多いんだ。誰だって自分の街が汚れていたら健康的にも精神的に悪影響だと分かっているはず。みんな一人ひとりが、自分の身の回りのごみを拾うことができたら、世界はもっとよくなる。みんなが笑顔になれる。落ちているごみをみかけたら、無視せず拾うという文化を一緒に作っていこう。イタリア大会へは私も市長として参加し必ず優勝してみせるよ!
ジョヴァンニさん(本名:Giovanni Macrì)
2008年の10月 トロペア市長に就任
ご出身:イタリア共和国トロペア市
趣味:清掃活動、イタリア料理(赤玉ねぎが名物)
好きなサッカーチーム:ユベントス
日本のお気に入りの場所:浅草の和食店『権八』(映画『キルビル』の撮影地)
SNS:Facebook/Instagram
最後に一言
トロペアには、歴史があり、建築があり、美味しい料理があり、そしてキレイな街と海があります!日本の皆さんも是非一度お越しください!
住民の数に対して観光客の数が多くなってしまうオーバーツアリズム問題。トロペア市も多くの観光客によるごみの流出に頭を抱えていましたが、市長自らの地道な清掃活動によって、ごみ拾いの輪が広がり、2021年にはイタリアで一番美しい村として選出されたとのこと。環境に対するジョヴァンニ市長の熱いパッションに感動しました。