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海の課題にデザインの力で向き合う「海のデザインスクール2024」を開催しました!

イシュープラスデザインは「海のデザインスクール2024〜身体とシステミックデザインで考える海と私たちの未来〜」を開催。参加した高校生や大学生らが自然観察や海釣り体験等を通して社会課題をデザインの力で捉え、手に入れたい未来の風景を描きました。

2024.11.01

イシュープラスデザインは、10月12日(土)〜10月14日(月・祝)に河川から海、そして人間の営みのつながりを体感し学ぶとともに、見えてくる課題をデザインの力を使って捉え、海と私たちの手に入れたい未来を描くことを目的として、<海のデザインスクール2024〜身体とシステミックデザインで考える海と私たちの未来〜>を開催いたしました。このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。

海のデザインスクール2024
開催概要

2泊3日のプログラムで自然観察、釣りや魚食文化等の体験を通して、いすみ市の里山・里海の自然と人々の営みを体感するとともに、社会課題を包括的に捉える「システミックデザイン」の手法を使って海と人間の課題を捉え、私たちが想像する未来のためにできることを全員で考えていきます。
日程
2024年10月12日(土)〜10月14日(月・祝)
開催場所
千葉県いすみ市
参加人数
高校生〜大学・専門学校生 11名
協力団体
サカナヤマルカマ
グローブライド株式会社
後援
千葉県いすみ市、いすみ市教育委員会

1日目の様子

10月12日(土)のプログラム
オリエンテーション
いすみ川でSUP体験
【講義】いすみ川の生物多様性
河口と干潟の観察
課題の地図を描くワーク①

初日は「街から川、そして海へ」をテーマに始まります。

参加者が初めて顔を合わせるオリエンテーションは、いすみの自然や生息する生物について資料を保管・展示する、いすみ環境と文化のさとセンターの貴重な空間をお借りしました。食や農の領域に課題感を持ちながらいすみ市のまちづくりに取り組まれている、いすみライフスタイル研究所所長の高原さんにご挨拶をいただき、3日間のいすみ体験が学生たちのワークのヒントになったらいいなと期待の言葉をかけていただきました。

すみパドルクラブさんのご協力のもと行ったSUP体験では、まだ強い日差しが残る午後でしたが、水辺の心地よい風を受けながら、手や足を水につけて温度を感じたり、カワセミを眺めたり、初めてのレジャーとして楽しみつつも、いすみ川の様子をよく観察する学生たちのまなざしが印象的でした。

いすみ川を実際に体感した後は、生物の教員も経験された房総野生生物研究所の手塚さんから里山と里海のつながりや生物多様性について講義いただき、体感したことと知識を結びつける時間を過ごします。講義後は、バケツとシャベルを持って干潟へ移動。砂の中で過ごす小さな生き物たちの捜索に熱中しました。

初日最後のプログラムでは、システミックデザインを用いたワークに進みます。

「イセエビチーム」「マダコチーム」「サザエチーム」の3チームに分かれ、事前課題として記入してきた海や魚にまつわる課題を付箋に書き起こしていきます。さらに、1日いすみの自然に触れたことで感じた課題を新たに言語化していく作業も行います。そうして目の前に並んだ課題たちを原因→現象→結果の順に並べ、結びつけていくことでワークシートの上に因果関係を可視化していきます。こうして1日目のプログラムは終了です。

2日目

10月13日(日)のプログラム
漁船で海釣り体験
獲った魚を捌き、食べる
【対談】海の実態
-地図を描くワーク②

2日目のテーマは「海の実態」
早朝5時、大原漁港に集合し、乗船の準備と釣り方のレクチャーを受けます。

前日から酔い止めも服用し、学生・スタッフともに準備はバッチリ。いすみの海は、波の動きがなかなかに激しく、船に揺られるだけでも刺激的な体験です。船に釣り場を少しずつ変更してもらいながら、それぞれ釣り竿の動きに凄まじく集中していました。魚が喰らいつく瞬間の生命の感覚を知り、耐え忍んだ先に釣り上げた嬉しさは、学生たちにとって非日常的な体験で、1日目とはまた異なる豪快な笑顔が見られました。

船を降りた後、疲労の色も見えるなか、初めて自分たちで釣り上げた魚を捌き調理する体験に、どの学生も率先して挑む姿が見られ、さっきまで捌き方を教わっていたひとりが、次の瞬間にはまた違うひとりに教えている、そんな嬉しい相乗効果も生まれたお昼の時間でした。

お昼休憩後は、話を聴くインプットタイムです。

大原で長年漁師をされている中村さん、いすみ市役所水産課の山口さん、ウエカツ水産代表のウエカツさん3名による、ロジックだけでは語れない身体知が詰まった対談です。日本列島の魚種の変化、魚食文化が遠いものになる今、漁師という生業をいかに守っていけるかなど、感じている課題についてお話しいただきました。なかでも学生たちは、月の周期が漁獲量に影響を与えているという話が気になっているようでした。中村さん曰く「システムとか難しいことは分からないけど、経験からそうなんじゃないかっていうものがあるんだよ」ということで、明文化はされていないが、漁師たちの経験で認知されている規則性のようなものがるという、都市の暮らしでは実感できない経験のお話でした。自然を相手にする不確実性のなかで魚を獲り、家族を養う漁師という職業が、いかに生きることと直結しているのか意識した時、その場にいた全員が息を呑む感覚があったと思います。地図を描くワーク②のプログラムでは、1日目に個人で付箋に書き起こした課題をチーム内全体で眺め、新たに見えてくる因果関係に注意しながら相関図を描いていきます。特に、課題を強化し、深刻化させている負の循環を探しながら、描いていくことが相関図作成のポイントになります。並んだ付箋のどこがつながり得るのか、真剣な表情と議論で、海や魚にまつわる課題の地図を仕上げていきました。

3日目の様子

10月14日(月・祝)のプログラム
伊勢海老漁の見学
ワークプログラム①
ワークプログラム②
-振り返り、総括

3日目のテーマは「海から未来へ」

最終日も早朝の大原漁港に集まります。見学では予定にはなかった、漁網を解く作業に参加できることに。快く受け入れていただいたことで、学生たちも思い切って漁師さんと会話を切り出している様子でした。例えば、漁網に絡まるアラメという海藻が、農業の肥料として活用されている事例を知ったり、「食べられるよ」と聞いて恐る恐る齧ってみたり、ただごみとして捨てられるものではなく、自然のなかでは、資源の循環が当たり前に起こっていることを知り、学生たちは未来のヒントを得たように感じたのではないかと思います。

最後のワークプログラムは、長丁場。それぞれが生きていたい2040年の未来を7コマのマンガワークシートに描くことがゴールです。床に横になって目を瞑り、自然や社会の状態はどうなっているか、自分はどんな仕事をしてどんな幸せを感じているか、一緒に暮らしている人はいるのか、ファシリテーターの未来の語りを頼りに2040年を手繰り寄せていきます。現在に意識を戻したら、描いた未来を実現するためのアイデアをひたすら付箋に書き出す作業です。数を出すことで思わぬところでアイデア同士が繋がったり、誰かが出したアイデアが良質なアイデアのきっかけになることがあるからです。ひとり1つずつ育てたいメインアイデアと、コラボレーションできそうなサブアイデアを決めたら、それは「いつ」「どこで」「誰が」「何をする」ことで達成されるのか、ワークシートを使って、ブラッシュアップします。ここまでで仕上げたアイデアを7コマのマンガに落とし込めば、未来の風景の完成です。

3日間の振り返り

3チームごとに2日目に描いた課題の地図をおさらいし、個人単位で未来の風景を発表します。元々海や魚に関心を持っている学生もそうでない学生も、3日間の合宿プログラムを通して新しい出会いと学び、初めて感じる情動、身体の疲労もありました。その中で、正解のない重量級の個人ワーク・グループワークを最後までやり切った学生たちでした。

一方で、実験的な試みでもあった今回、講師たちの講評コメントでは、期待ゆえの厳しさがありました。事前に準備した知識や論理ではなく、知るまでそれが知りたかったんだ!と気づけないようなことを現場でどこまで粘り強く求められるのか。自分の感覚で感じ取ったことを大切に持ち続け、丸く収めるのではないアイデアに昇華することができるのか。学生たちにとっても、社会課題解決を生業にする大人たちにとっても、これからの課題が見えた気がします。

全プログラム通した振り返りの中には、「3日間で得たことをまだまだ消化できていない」、「課題を解決できるアイデアを考えたかったけどやはり難しく、もっとブラッシュアップしたい」など、もっとこうしたかったと語ってくれる学生たちがいました。海のデザインスクールは、プログラムをきっかけに、海と山、人の暮らしとの大きなつながりを認識し、参加者の意識が変わり、行動が変わっていくことを目標にしています。悔しさが滲んだ様子や今回学んだことを糧にしたいという言葉が聞けたことで、開催してよかったと心から思えるデザインスクールになったと思います。

参加した学生たちの声

・いつか食べれなくなってしまう未来もあるかも知れないからこそ、今ある魚食文化を大切にして、少しずつ周りの意識も変えていけたらと感じた。

・海のデザインスクールということでしたが、海だけではなくて森林など環境や生態系のバランスなどいろいろな要素が相関関係にあることを教わって、人が地球で環境と付き合ってどう生きていくのかを考える必要があることを学んだ。

・システミックデザインの考え方が本当に面白かった。以前からグラフィックのデザインにものすごく強い興味があったがこのような社会デザインは全く知らなかった。

 

イベントレポートは実施事業者からの報告に基づき掲載しています

参加人数:11人