海と日本公式サイトの最新ニュースをウィジェットで埋込み

<iframe class="uminohi-widget official-newest" src=" https://uminohi.jp/widget/newest/" width="100%" height="800" frameborder="no" scrolling="no" allowtransparency="true"><a href="https://uminohi.jp">海と日本PROJECT【日本財団】</a></iframe><script src=" https://uminohi.jp/widget/assets/js/widget.js"></script>

ヨコハマ海洋市民大学2024年度講座第6回「夜の湖面に魔法をかける〜水辺を活用した地域活性化浜名湖の事例」を開催しました!

ヨコハマ海洋市民大学実行委員会は、ヨコハマ海洋市民大学2024年度講座・第6回「夜の湖面に魔法をかける〜水辺を活用した地域活性化浜名湖の事例」を開催。エンターテイメントビジネスで活躍する菱沼妙子さんを講師に招き地域活性化について理解を深めました。

2024.11.27

ヨコハマ海洋市民大学実行委員会は、令和6年11月7日(木)に横浜の海が抱える社会課題の解決に挑戦する市民を養成する、ヨコハマ海洋市民大学2024年度第6回講座「夜の湖面に魔法をかける〜水辺を活用した地域活性化浜名湖の事例」を開催いたしました。このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。

開催概要
ヨコハマ海洋市民大学実行委員会は「横浜の海が抱える社会課題を自ら考え、解決できる市民(海族・ うみぞく)」を育成するヨコハマ海洋市民大学2024年度講座の第6回目を開催した(年10回開催)。
開催日時
20246年11月7日(木)19:30~
開催場所
象の鼻テラス(神奈川県横浜市中区)
参加人数
28名(会場受講生14名、オンライン受講4名、ゲスト3名、講師・実行委員7名)
共催
海と日本プロジェクト、象の鼻テラス
後援
横浜市・海洋都市横浜うみ協議会

講師自己紹介

「私は三代続く生粋のハマっ子です!」シビックプライドを感じさせる講師のお話から始まりました。「南区・お三の宮 日枝(ひえ)幼稚園から高校まで横浜で学びました」。受講生のハマっ子たちには「なるほど」な始まりです。そんなハマっ子講師の菱沼妙子さんは神原音楽事務所で音楽関係のアーティスト招へいやイベントプロデュースなどに15年携わり、その後松竹株式会社にて歌舞伎の海外公演を担当、さらには韓国ミュージカルを日本に招へいするなど長い間エンターテイメントビジネスの世界で活躍されてきました。

Grandscape 浜名湖とは

「横浜の事例ではなくて残念ですが」としながらも「これまでの文化芸術の領域での経験を活かして、現在は地域活性化に取り組んでいます。その一つの事例をご紹介します。」と映像が紹介されました。短時間の画像ですが、内水面(湖面)の利点を活かした美しい映像です。まさしく「夜の湖面に魔法をかける」とはこのことです。

Grandscape 浜名湖のHP:https://www.grandscape-hamanako.com/


左)湖面にかけられた魔法   右)講座風景

会場となった浜名湖の舘山寺は浜松市唯一の観光地だと紹介されました。筆者は浜名湖そのものが大きな観光地という印象を持っていましたが、浜名湖のある浜松市は観光都市ではなくかつては天竜材(木材)やガチャマン綿織物の一大産地、そして「スズキ」や「ヤマハ」「カワイ」「フォト二クス」など、全国的に有名な大企業が拠点としている産業都市なのです。観光は浜松市の重点事業ではありませんでした。

そんな中、2018年に文化庁が全国にアーツカウンシルと言う組織を作り、浜松市も取り組むことになり、講師はプログラムディレクターとして就任することになります。それもこれまでの実績と人脈が浜松との運命的な出会いを引き寄せたようです。まずは浜松の文化状況を調査することから始め、500人を超える市民にヒアリングをしました。その中で「浜松のインバウンドを活性化したい」という一人の女性に出会い、舘山寺温泉観光協会とのつながりが生まれます。浜名湖は中国の西湖と友好協定を結んでおり、その縁で舘山寺観光協会の方が中国・西湖の「印象」と言う湖面を活用したショーを視察されていたことから「ぜひ、あのようなショーをやりたい」と話が盛り上がります。これをきっかけに観光協会が湖に浮かべステージとして使う台船を調達しました。そして観光庁の助成事業へ手を挙げ、採択へとつながります。まずは、実証実験としてのGrandscape浜名湖がスタートしました。1年目の2020年12月の実証実験が大好評で次年度より「本興行」として2,500名を超える観客を21年、22年と動員するショーとなりました(内閣・文化庁の日本博にも採択されました)。

目指したもの・制作過程

地方都市によくある「よそから来た人たちがイベントをやって去っていく」ものにはしたくなかったと講師は語ります。作品の中では浜松市・浜名湖由来の神事をモチーフに、人と自然の関りを描くことにしました。折りしもコロナ禍、観る人に前向きな力を与えられるような作品を目指したそうです。かつて遠江と呼ばれた静岡県西部の里は、豊かな自然に恵まれる一方、洪水や火災に見舞われ、秋葉山(あきばやま)の山伏の火伏の儀式や猪鼻神社(いのはなじんじゃ)の市杵島姫命(いちきしまひめのみこと・水の神様)へ祈ることで住民は心をひとつにして災害を乗り越えてきました。そこに重ねるように現在の同調圧力の強い生きづらい社会、コロナ禍で気力を失いかけた人々を一人の少女の働きかけで希望と自分らしさを取り戻す物語として完成しました。


左)祈る山伏たち   右)豊作を喜ぶ里の人たち

会場の舘山寺もかつては観光地として栄えていましたが、近年の団体旅行から個人旅行へのシフトに対応が遅れ斜陽化が否めない状況にあります。施設老朽化や経営者・観光協会会員の高齢化などに加え、地元電鉄会社の経営する高級ホテルの閉鎖など明るい話題がありませんでした。このような地元の課題と向き合い解決を目指します。解決策の一つ目はもちろん観光活性化です。ナイトエンターテイメントを実施することで宿泊型・滞在型観光の増加を目指します。そのためには観光地として話題となるイベントの開催や地域資源を意識した「ここにしかない体験」や「ここにしかない景観」を打ち出してゆくこと、そして観光事業者が商品として売りたいと思う質の高い作品を生み出すことだと講師は考えます。二つ目として高齢化する地域に周辺の若い世代が訪れたり、今回のような事業に参画することでこの地域が楽しくなるような仕掛けが必要だということです。

「ここでしか見られない舞台」を作るためには、湖岸の利点を最大限に活用する演出を施しました。湖面の反射を計算した照明、屋内では使えない炎、LEDを用いた衣装や舞台セット、小道具なども屋外・湖上という環境を最大限に利用します。観客が会場に足を運ぶ際に楽しめる夕景も物語の助走としています。空に浮かんだ月や舞台照明が照らした雲など想定外の美しさにも出会えたそうです。視覚効果以外にも音響装置でサラウンド効果を持たせる設計をし、舘山寺の僧侶による読経が観客を取り囲むような錯覚をさせるなど、テーマパークのような疑似体験のできる作品としました。そしてこの作品にはとてもたくさんのスタッフ(150人超!)が関わり、約10か月の制作期間を要しました。講師のこれまでの人脈からそれぞれの業界第一線で活躍する方たちへ依頼をしています。音楽ひとつとっても、グラミー賞受賞アーティストに依頼する曲、人気アニメ「鬼滅の刃」を担当された作曲家へ依頼する曲、地元浜松出身の若手作曲家を抜擢して依頼する曲など場面によって多彩な顔ぶれを揃えました。衣装デザインはダンス界での人気デザイナーに依頼する一方、衣装の野良着は地元遠州織物を使うなど地元との協働があちらこちらで図られています。前述の音響や照明のデザインも周辺施設への配慮をしつつも高品質なものを実現しています。

このような地域特性を活かした高品質な作品の上演が実現できたことの一番大きな要因は、地元の現状を「自分事として変えたい」と強く思って動く人たちに出会えたことだと講師は語ります。その熱意が周りを巻き込んでゆきます。これは私たちヨコハマ海洋市民大学が設立当初から口にしていることとまったく同じことでした。また、ダンスで描く物語や湖上の舞台といった、これまでになかった作品作りという挑戦を面白いと積極的に取り組んでくれる制作スタッフの存在も大きかったと語ります。


左)講師スライドより   右)さらなる水辺の活用を目指して

湖上舞台のその後とその他水辺活用

注目を集めた湖上舞台ですが、ピンチを迎えます。それはステージとして使用していた台船に穴が開き傾いてしまったことです。舞台として使用できなくなってしまいました。しかしそれに負けるようなチームではありません。次の湖上舞台が可能となるまで、浜松市内の小中学校へのアウトリーチ(出張公演)へと転換します。こちらも「素晴らしい芸術を生徒に見せたい」と動いてくれた意欲的な校長先生たちの存在が欠かせなかったとのことです。
浜松では少子高齢化とともに地域文化活動に若者の顔が見えない、若者が市外へ流失してしまう、プロダンサーが活躍できる本格的な公演や芸術的な質の高い舞台に接するような機会が少ないなどと文化の面でも課題がありました。講師はこのアウトリーチに取り組みながら「若者がプロとして輝き、評価されるプラットフォームを作りたい」と考えているようです。若者が自分たちの「かっこいい」を表現、実現できる町を作ること。そしてアウトリーチを通して、芸術舞台に接する機会のあまりない子どもたちに舞台の楽しさを知ってもらうこと。地元のプロダンサーを含む大人の本気を子どもたちにロールモデルとして示したいと語っていました。
筆者が講座を受けて特に心に残ったのは「熱意を持った個人との出会い(自分ごととして動く人)」という言葉と「周囲を巻き込む力は大義、施策の質の高さ、そして反響が後押しをしてくれる」という言葉でした。まさしくヨコハマ海洋市民大学が目指す人そのものを講師の菱沼さんは体現してくれているのだと思いました。

参加者の声

・具体的な事例紹介があり参考になった
・数々の経験を未来に活かすことができて素晴らしいと思った
・地元の人との良好な関係性の築き方に興味を持った

 

イベントレポートは実施事業者からの報告に基づき掲載しています

参加人数:28人