信州の郷土料理「ブリの雑煮」を調理、アジをさばいて海の課題を学ぶ『日本さばける塾 in 長野』を開催
一般社団法人 海のごちそう推進機構と海と一般社団法人 日本プロジェクトin長野は、魚を実際にさばくこと、地域の海洋変化や魚種の変遷を学ぶこと、さらに「海を味わう十の技法」による調理体験など、日本の豊かな海の食文化を継承し、輪を広げる取組み「日本さばける塾 in 長野」を12月15日(日)に開催し、7組21名の親子が参加しました。
2024.12.23
一般社団法人 海のごちそう推進機構と海と一般社団法人 日本プロジェクトin長野は、魚を実際にさばくこと、地域の海洋変化や魚種の変遷を学ぶこと、さらに「海を味わう十の技法」による調理体験など、日本の豊かな海の食文化を継承し、輪を広げる取組み「日本さばける塾 in 長野」を12月15日(日)に開催し、7組21名の親子が参加しました。
このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。
開催概要
魚を実際にさばくこと、地域の海洋変化や魚種の変遷を学ぶこと、さらに「海を味わう十の技法」による調理体験など、日本の豊かな海の食文化を継承し、輪を広げるイベントとして、以下の取り組みを実施しました。
<海を味わう十の技法について>
2013年にユネスコの無形文化遺産となった「和食」。その調理法として定義されるのが、「切る」「煮る」「焼く」「揚げる」「蒸す」という「和食五法」。
これに海の恵みと向き合うために培ってきた、「締める」「醸す」「干す」「燻す」「漬ける」の調理技法を加えたもの。それが「海の味わう十の技法」です。
開催内容 |
①海にまつわる講義 |
日程 |
2024年12月15日(日)10:00~14:30 |
開催場所 |
清泉女学院大学上野キャンパス調理実習室(長野県長野市上野2-120-8) |
参加人数 |
7組20名(小中学生と保護者) |
講師 |
海にまつわる講義:惟村和志さん(株式会社マルイチ産商 鮮魚課) |
主催 |
一般社団法人 海と日本プロジェクトin長野、一般社団法人 海のごちそう推進機構 |
共催 |
⽇本財団 海と⽇本プロジェクト |
協力団体 |
株式会社マルイチ産商 |
海の学びで広がる子どもたちの好奇心
「日本近海には3700種類もの魚がいるんです」。マルイチ産商の惟村和志さんの言葉に、子どもたちは目を丸くしました。しかし、市場に出回るのはわずか600種類。「未利用魚」と呼ばれる魚たちの存在を知り、参加者たちは海の多様性に驚きの声を上げます。「アイゴ」「ゲンゲ」「オジサン」など、ユニークな名前の魚の写真が次々と映し出されると、「こんな魚、見たことない!」「オジサンって、魚の名前なの?」と、子どもたちの興味は尽きません。しかし、世界規模で35%もの魚がロスされているという事実に、子どもたちは真剣な表情で耳を傾けました。「もったいない」「どうしたら食べられるようになるの?」と、海の環境問題への関心が高まっていきます。惟村さんは、「魚には多様な種類があり、おいしく食べるための伝統的な技術も存在するんです」と説明します。「魚って、面白い!」という惟村さんの言葉に、子どもたちは大きくうなずきます。海の豊かさを守ることの大切さを、頭だけでなく心で理解し始めた瞬間でした。
包丁を握る緊張と喜び、魚さばき体験に挑戦!
「さあ、みんなで魚をさばいてみましょう!」。マルイチ産商と業務提携し長野県内に魚食ファンを増やす活動をしているクッキングコーディネーターの浜このみ先生の元気な声で、いよいよ魚さばき体験の開始です。子どもたちは割烹着の衣装を着て準備万端。気分は板前さんです。初めて包丁を握る子どもたちの手は少し緊張気味でしたが、保護者と一緒に慎重にアジをさばいていきます。「まずは、アジを綺麗に洗って、ペーパーで水気を取りましょう」という浜先生の指示に、真剣な表情で取り組む参加者たち。「うわ、内臓が出てきた!」「ぬるぬるする〜」と驚きの声が上がる中、次第に真剣な表情に変わっていきます。骨を取り除く作業に苦戦する子もいましたが、浜先生の「コツは、包丁を立てて骨に沿って動かすこと」というアドバイスで、みるみるうちに上手にさばけるようになっていきました。魚をさばく過程で、子どもたちは魚の構造や、命をいただくことの意味も学んでいきます。魚の命を無駄にしないためにも、きちんとさばいて、おいしく食べることが大切です。「自分でさばいた魚、絶対おいしいはず!」と、子どもたちの目は期待で輝いていました。魚をさばくという体験が、食への興味と感謝の気持ちを育んでいく様子が、会場のあちこちで見られました。
郷土の味と海の恵みが出会う感動の調理体験
さばいたアジとブリを使って、「アジのトマトソース煮」と「ブリの雑煮」を作ります。「お雑煮にブリ?」と驚く声も聞こえましたが、これが長野県の郷土料理だと知ると、みんな興味津々。江戸時代、『ブリ街道』と呼ばれる流通ルートがあり、日本海から運ばれてきました。山国信州では、魚はとても貴重なごちそうでした。その名残から松本地方ではブリが市民熱愛の魚として今でも愛されています。参加者がさばいたアジは、オリーブオイルで炒めてトマトソースで煮込みます。そしてたっぷりのチーズとブロッコリーを入れて完成。今回は、ハンバーガー用のパンにはさんでいただきます。完成した料理を口にした瞬間、「うわ、おいしい!」という歓声が調理室中に響き渡りました。「自分でさばいた魚って、こんなに美味しいんだ」「お店で食べるより全然おいしい!」と、感動の声が次々と上がります。ある父親は、「普段は魚を避けがちだった息子が、こんなに美味しそうに食べているなんて驚きです」と喜びを語りました。自分でさばいた魚の味は格別だったようで、食への興味と自信を深めた様子が伺えました。浜先生は最後に、「今日学んだことを活かして、ぜひおうちでも魚料理に挑戦してみてください。魚を食べることは、海の環境を考えることにもつながるんですよ」と締めくくりました。参加者たちは、海の恵みを実感しながら、環境保護の大切さも心に刻んだようでした。
参加した子ども・保護者からの声
<参加児童>
・はじめは魚をさばくのが怖かったけど、だんだん楽しくなってきました。次はおうちでもやってみたい!
・未利用魚のことを知って、もったいないなと思いました。これからは色々な魚を食べてみようと思います。
<保護者>
・魚嫌いだった子どもが、自分でさばいて料理したことで興味を持ち始めました。家でも挑戦してみたいです。
・郷土料理のブリのお雑煮を初めて知りました。食を通じて地域の歴史や文化を学べるのは素晴らしいですね。
イベントレポートは実施事業者からの報告に基づき掲載しています
参加人数:20人