日本財団・東京大学「海洋ごみ対策プロジェクト」共同記者発表会
海洋ごみ問題解決の基盤となる科学的知見の充実を図るため、東京大学との共同プロジェクトに調印
2019.05.16
左から、藤井輝夫理事・副学長(東京大学)、五神真総長(東京大学)、笹川陽平会長(日本財団)、海野光行常務理事(日本財団)
5月14日、東京大学本郷キャンパスにて、日本財団と東京大学による「海洋ごみ対策プロジェクト」共同記者発表会が開催されました。
海洋ごみ問題をオールジャパンで取り組む「CHANGE FOR THE BLUE」を推進するうえで、問題の解決基盤となる科学的知見を充実させ、正しい情報を広く発信し、解決のためのアクションに繋げていくことが宣言されました。
合意書の調印に先駆け、双方の代表より挨拶がありました。
●東京大学 五神 真 総長 ご挨拶
「今回、東京大学の未来社会協創基金(FSI)事業として、海洋プラスチックごみ研究を推進できることは、たいへん意義深いと思います。
国際社会でも緊急課題と認識され、注目されています。特に生体への影響などまだ不明な部分も多く、本学でも研究を推進すべきと考えていたところでした。この研究プロジェクトでは学外研究者、関係省庁や国際機関と連携して研究を進め、学術視点から貢献していきたいと考えています。
日本財団はすでに幅広く連携を進めておられますが、科学的知見の充実が、各取り組みの成果に寄与することを祈念しています」
●日本財団 笹川陽平 会長 ご挨拶
「東京大学とは、かつて約10年間にわたり海洋アライアンスとして研究活動を行なったご縁もあり、今回あらためて新たな問題についてご協力いただくことになりました。
すでに海は静かな悲鳴をあげています。このマイクロプラスチックごみ問題を科学的に捉えることは、海の環境保全のための喫緊の課題です。
我々は国内では昨年、約150万人参加のもと清掃活動などを進めてきましたが、今後はそれに加えて、科学的知見に基づいた様々な取り組みが行われることが重要だと考えています。このたび、東京大学で問題解決の根本を研究いただけるということは、力強い味方を得たと感じています」
代表挨拶の後、「海洋ごみ対策プロジェクト」合意書の調印式が行われ、五神総長、笹川会長の立会いのもと、東京大学の藤井輝夫 理事・副学長と、日本財団の海野光行 常務理事が署名しました。
調印式に続いて、プロジェクトを主導する東京大学未来社会協創(FSI)の紹介と、日本財団の取り組みの概要と意義、また研究内容の詳細説明が行われました。
●「Future Society Initiative(FSI)」と海洋ごみ対策プロジェクトについて
東京大学 藤井輝夫 理事・副学長
「東京大学が推進する未来社会協創(FSI)は、SDGsをひとつの指針としたよりよい未来社会、誰一人取り残さないインクルーシブな社会をつくっていこう、という取り組みです。集積した「知」を駆使し、学内外の研究を発展させ、世界をリードして諸問題の解決策を導き出すことで、よりよい未来社会の実現に向けて社会変革を主導することが東京大学の新しいビジョンです。海洋プラスチックごみ問題は科学的に不明な部分も多く、今回のプロジェクトで科学的なバックグラウンドを解明する研究チャンスをいただいたと思っています。」
●「CHANGE FOR THE BLUE」と東京大学との連携について
日本財団 海野光行 常務理事
「海洋ごみ問題の解決には、科学的知見を具体的なアクションにつなげる必要があり、その基盤となるデータをつかむことが、今回の共同プロジェクトの目的です。海洋ごみ対策は、日本財団「海と日本プロジェクト」の取り組みの3本柱のひとつであり、12のステークホルダーと連携のもと対策を進める考えですが、そのひとつが学術研究機関との連携です。
我々の強みは多様な連携ネットワークと実行力、東京大学は日本の最高学府であり、FSIによる分野横断的な研究力が強みだと思います。この両組織がタッグを組むことで、より効果的な取り組みが可能になると思います。科学的知見を充実させて、問題を正しく伝え、海洋ごみ問題の解決を目指していきたいと考えています。」
●「海ごみ対策プロジェクト」実施内容の詳細について
東京大学大気海洋研究所 道田 豊 教授
「このプロジェクトでは分野横断型の研究体制を作り、他大学や関係機関と連携して進めていきます。
研究テーマは3つです。微小化した海洋プラスチックごみがどこから来てどこへ行くのかという「実態把握」と、プラスチック関連有害化学物質の「生体への影響」、特に人体への影響の解明はチャレンジングな研究となります。並行してプラスチックごみの「発生フローの解明と削減策」を検討します。
また対策として、研究者たちの対話機会をつくる「研究プラットフォームの構築」や、「国際的ラウンドテーブルの設置」によって研究者とステークホルダーの意見交換を行い情報を発信。さらに「削減・管理方策の提案」まで行いたいと考えています。
3カ年でのアウトプットとしては、「科学的知見の国際社会への提供」、「政策オプション評価と削減管理方策の提示」、「研究の国際協調、ネットワークの形成」を計画しています。
学術面からの貢献で、オールジャパンで取り組む海洋ごみ問題の一翼を担っていきたいと思います」
プロジェクトの説明が行われたのち質疑応答が行われ、会場の記者たちからさまざまな質問が寄せられました。また発表会終了後も、会場では各登壇者に個別のインタビューが行われていました。
記者会見の模様はこちら(ソーシャル・イノベーション・ニュース掲載)
「CHANGE FOR THE BLUE」ウェブサイトはこちら