「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群 祝!5周年 世界遺産 宗像から「海の道をつなぐハイブリッド・ミーティング」
九州大学大学院工学研究院附属環境工学研究教育センターは、宗像・沖ノ島世界遺産5周年のイベントとして「海の道をつなぐハイブリッド・ミーティング」を開催。自然の恵みや脅威、海洋問題についてディスカッションを行いました。
2022.09.14
九州大学大学院工学研究院附属環境工学研究教育センターは、「世界遺産と、美しい海を、未来へ」をテーマに、日本の海の日に、宗像・沖ノ島世界遺産5周年のイベントとして、海でつながってきた地域を結ぶことを目的として、祝!5周年 世界遺産 宗像から「海の道をつなぐハイブリッド・ミーティング」を開催いたしました。
世界遺産登録5周年を記念してのミニ講演と対馬暖流形でつながる地域が参加し、自然の恵みや脅威、海洋問題についてディスカッションを行いました。
このイベントは、次世代へ海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。
開催概要
世界遺産登録5周年を記念してのミニ講演と自然の恵みや脅威、海洋問題についてディスカッションを行いました。
日程
2022年7月18日
開催場所
福岡県宗像市大島「大島交流会館」
参加人数
延べ34名
共催
宗像国際環境会議実行委員会
海の道をつないでいる人たちの今 変わりゆく海とともに
宗像市大島は古くから海上交通の要として開かれていました。玄海灘の荒波の上を航海する際の安全を祈るために信仰が生まれました。また、宗像三女神への固有の信仰や祭祀が現代まで受け継がれていることが評価され、文化遺産として世界遺産リストに登録されてから今年で5周年になります。
2022年7月18日の海の日に記念催事を執り行い、宗像市副市長 河野克也様のご挨拶からはじまり、宗像国際環境会議会長 小林正勝様、日本水フォーラム代表理事 竹村公太郎様から、オンライン中継で祝辞のお言葉を頂きました。また、宗像市総務部秘書政策課秘書政策係長 赤田篤史様からは、宗像・沖ノ島と関連遺産群の構成資産である宗像大社の沖津宮、中津宮、辺津宮などの貴重なお話しを下さいました。
九州大学うみつなぎ主催のもと、対馬暖流でつながる各地域の団体や教育機関の皆様とのハイブリッド・ミーティングを実現することができ、遥か太古の文化と現代をつないだ素晴らしい一日となりました。
各地域の海の調査や活動の紹介
福岡県宗像の海を繋いでいる大きな海流、それが「対馬暖流」です。私たち九州大学海つなぎは、対馬暖流で繋がる地域を南から北までオンラインで繋いでいきました。
まず初めに、長崎県五島市崎山の「さゆりの会崎山児童クラブ」の皆さんからの発表でした。溶岩から成る覚仙海岸には漂着ごみが多く、問題となっています。そのため、「ペットボトル100本調査」という漂着したペットボトルはどこの国から漂着したかを調べる活動が定期的に行われています。この活動が今後の自然環境保護に繋がってほしいという先生と生徒さんの元気な声を聞くことができました。
次の、長崎県立五島南高等学校からの発表では「日本の海水浴場100選に選ばれている海の紹介と問題」といったテーマで、人口の増加に伴い生活排水が海に流されているという汚水処理の問題などが提示され、あらゆる地域の取り組みを参考に生態系保全活動について学んでいきたいという今後の意気込みも伝わってきました。
長崎県対馬市の「さとより」の佐々木達也様からは、対馬市と宗像市の関係についてのお話しをいただきました。対馬市からは宗像市の沖ノ島が見えるほど、2つの島は近距離に位置しています。さらに、対馬近海で独占的に許可されてきた海女さんによる漁においても、2つの島の海女さん同士で交流があったことなど対馬市と宗像市の繋がりの強さについて学びが深まりました。
対馬市立仁田小学校の畑島英氏様からは、仁田小学校の取り組みについて紹介をしていただきました。仁田小学校では、自然環境が豊かな地域であることを生かして、耕作放棄地で農園づくりをしたり、葛やマテバシイなどの自然素材を使ったリースづくりや、川遊びや天然アユの調査を行ったりしています。さらに、対馬海流に乗るカツオ類の漁協見学なども行われており、環境教育への熱意を感じ取ることができました。
海の道 対馬暖流つながりライブ
イベントでは、福岡県宗像市の洋上からの中継もありました。日本と韓国を結ぶ客船であるクイーンビートルズに乗船中の宗像市職員の合島様から、実際に沖ノ島を見せていただきました。船には宗像市大島の小学校5年生から中学校3年生の生徒合わせて23人が乗船しており、これから海の守り人として育ってほしいといった願いを述べられました。
中継の後には、福岡県福岡市壱岐の「壱岐島おこしチーム防人」の中山忠治様と、福岡県立壱岐高等学校からの活動報告。壱岐高等学校の生徒たちは、対馬暖流に乗っておびただしい漂着ごみが海岸に流れつくことを目の当たりにして、ボランティア活動への参加を始めました。ごみを拾う活動がごみの発生抑制にもなっているという考えのもと、壱岐の綺麗な海を未来に繋ぐために頑張る姿が印象的でした。
また、福岡県立城南高等学校の生徒による福岡県糸島市志摩の姫島への取材の中継も行われ、城南高等学校の生徒たちは、海と繋がる大人へのインタビューや生きものの環境保全活動といった現在取り組んでいる活動についての発表を行った後、姫島のタコ漁師を取材し、実際のタコを見せてもらっていました。
続いて、山口県下関市から、佐々木乾二様が瀬戸内海の風景を届けてくださいました。対馬暖流の水と瀬戸内海の水が入り交じり、外海と内海の魚が出会うという生態系における重要な場所の紹介でした。
島根県の隠岐島「NPO法人隠岐しぜんむら」の福田様からは、ビオパークや環境教育ツアーガイドの紹介をしていただき、漂着ごみで怪我をしたウミガメを助けた経験をもとに絵本を作成したことが環境教育への貢献に繋がったというお話しも伺うことができました。
青森県津軽海峡からの中継も行われました。津軽海峡にある消波堤は、土木学会デザイン賞、最優秀賞、グッドデザイン金賞など数々の賞を受賞しています。また、漂着ごみとイカ漁には不思議な相関についてのお話しもありました。漂着ごみの量によってイカ漁も変化することから、中国や韓国など南からの漂着ごみが北にある青森県津軽海峡の海岸に漂着していることから、イカも南から北上しているのではないかという仮説をたてられました。
最後は宮城県三陸・気仙沼の阿部正人様からの中継でした。阿部様は、毎月一回ごみ拾いをされています。東日本大震災により、陸地は200mほど後退し地盤は60cm沈下したことで環境が変わったことや、漂着ごみには中国や韓国、タイからのものがあったこと、アワビやナマコなどの交易があったと思われることなどのお話しをくださいました。
九州大学うみつなぎからは、宗像市大島の中津宮遥拝所、カンス海岸、中津宮から中継をさせていただきました。各地域では漂着ごみの問題や磯やけの問題、漁業の未来などの様々な共通課題があります。私たち九州大学うみつなぎは、海洋教育やフィールド調査など学びの場を通して出会った皆様と共に、海洋環境保全に関する情報や人々を繋いでいます。
イベントレポートは実施事業者からの報告に基づき掲載しています
参加人数:34人