海のない滋賀県に鯖を使った郷土料理が根付いているのはなぜ?【食卓から未来のうみを守り隊3 ~郷土料理でうみを考える~】を開催しました!
一般社団法人 海と日本プロジェクトin滋賀県は、6月11日、7月21・22日に県内の小学5年生20名を対象に、琵琶湖と海のつながりを郷土料理を通して調査し、今の琵琶湖や海の現状を学ぶことを目的として、【食卓から未来のうみを守り隊3 ~郷土料理でうみを考える~】を開催いたしました。
2023.08.04
一般社団法人 海と日本プロジェクトin滋賀県は、6月11日、7月21・22日に県内の小学5年生20名を対象に、琵琶湖と海のつながりを郷土料理を通して調査し、今の琵琶湖や海の現状を学ぶことを目的として、【食卓から未来のうみを守り隊3 ~郷土料理でうみを考える~】を開催いたしました。
このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。
開催概要
滋賀県の小学生を「食卓から未来のうみを守り隊」に任命。郷土料理を通して、琵琶湖と海のつながりを調査し、今の琵琶湖や海の現状を学ぶ。郷土料理をこれからも食べ続けるためには豊かな琵琶湖や海を守ることが必要だと学んだ子どもたちが、自分たちにできることを考える。
日程
2023年6月11日(日) 1日目
2023年7月21日(金)~22日(土) 2・3日目
開催場所
滋賀県 野洲市・東近江市 福井県 小浜市
参加人数
滋賀県内 小学5年生 20名
協力団体
滋賀県水産課、滋賀の食事文化研究会、栗見出在家町魚のゆりかご水田協議会、滋賀県立琵琶湖博物館、福井県立大学、小浜市里山里海課、福井県立若狭高校、ファイブスター
調査隊 1日目は、滋賀の郷土料理と「魚のゆりかご水田」を調査
海のない滋賀県に、「鯖ずし」「鯖そうめん」といった海の魚である「鯖」を使った郷土料理が根付いています。1日目の昼食では、湖魚料理をはじめ「鯖ずし」「鯖そうめん」などいろいろな郷土料理弁当を食べて、一体なぜなのかを調査しました。初めて食べる料理が多かった児童もいたようですが、美味しかったという声が多数。特にビワマスの煮付けやえび豆。やはり甘さのある食べ物が人気のよう。でも、中には鮒寿司が美味しかったという児童も。
メニューにまつわるエピソードを聞きながら、海なし県なのになぜ海の鯖を使った料理があるのか、鯖街道の歴史を学び、海との繋がりを学んでいきます。
「エリ漁」の見学では、郷土料理に使われている魚がどうやって獲られているのかを実際に見て学びました。「エリ漁」とは、湖岸から沖合に向かい矢印型に網を張り、水田やヨシ帯に向かってくる魚の習性をうまく利用して「つぼ」と呼ばれる部分に誘導し閉じこめる、必要な量だけを捕獲できる水産資源に優しい持続可能な伝統漁法です。
そして、稚魚の生存率を上げ、生態系の回復や環境にもやさしい「魚のゆりかご水田」で、生き物調査を行いました。滋賀の郷土料理「鮒ずし」の原料であるびわ湖の固有種ニゴロブナは、昭和40年ごろ500トン程度の漁獲量がありましたが、令和元年は、36トンの減少しています。水田や水路で、ニゴロブナやナマズなどの魚が獲れ児童たちは大興奮していました。
琵琶湖の漁獲量や漁師の人数が減り続けていることを学び、地元の漁業の課題を感じた児童たち。
2日目からは、滋賀県を飛び出し福井県で、かつて大量にとれていた鯖が獲れなくなり、減ってしまった鯖を復活させるための取り組みや、福井の郷土料理を調査します。
調査隊 2日目は、福井の海と郷土料理を調査
滋賀や福井の郷土料理に、それぞれ「鯖寿司・鯖そうめん(滋賀)」「へしこ(福井)」と鯖が使われているように、かつて大量に獲れた鯖。漁獲量が激減した鯖を復活させ鯖文化を守る取り組みを調査しました。
福井県水産試験場で、鯖の養殖見学とデリケートな鯖の管理方法を学んでいきます。鯖が激減した理由は、海水温の上昇や潮流の変化、漁師の減少等など、地球環境や海を取り巻く環境の変化が大きな要因となっており、午後の学習にむけて環境問題についても学びました。
昼食は、福井の郷土料理「へしこ」のおにぎり。初めて食べる児童も多かったようですが、おいしいという声が多く好評でした。へしこの歴史や作り方を学ぶ中で、同じ発酵食品でも「鮒ずし」は「米」を「へしこ」は「米ぬか」を使う事を知り、地域による違いを学びました。
午後からは、宿泊先の若狭湾青少年自然の家で、磯辺で生き物調査や漂着してきたごみを拾い、海の課題を身近に感じました。ここまで学んだことを踏まえて、海や琵琶湖を守っていくために、「ごみを減らす」「ごみを分別して捨てる」など海洋ごみ問題に目を向けた意見が多く出ました。
調査隊 3日目は、福井の海を満喫し鯖街道の歴史を調査
最終日の3日目は、なかなか体験できないカッターに乗船。30人乗りの船を20人の子どもと班長で力を合わせて漕ぎ、最後まで漕ぎ切ることができました。
午後からは、若狭おばま御食国大使である若狭高校の生徒3人に、「御食国(みけつくに)」について教えてもらいました。「御食国」とは、朝廷に海水物産などを貢ぐために選ばれた国で、若狭、志摩、淡路などがあります。鯖は、御食国・若狭から鯖街道を通って天皇に献上されていたんですね。「鯖を読む」の語源は焼き鯖から由来することや、鮒ずしやへしこは日本の郷土料理100選に選ばれていることなど、楽しいクイズ形式で教えてくれたので、子どもたちからたくさん手が挙がり、声が飛び交っていました。
鯖を使ったお寿司のオリジナルメニューを考案
最後のプログラムは、3日間で学んだことを基に、鯖を使ったオリジナルメニューの考案と発表。各班で2つずつ商品を考案しました。
浅じめ・深じめの食べ比べや、それを混ぜた軍艦巻き、小さな子どもにも食べられるように味付けを甘くしたり、あぶったり、揚げたり、見た目も、皮の色からお城風にしたりと様々なアイデアが。滋賀6店舗+福井1店舗で展開している寿司チェーン店「海座」で採用された案を商品化し、9月下旬より発売予定です。児童たちのアイディアはどんな商品になるのでしょうか。期待が高まります。
児童たちが考えた「海や琵琶湖を守っていくために、自分たちにできること」のメッセージボードを、オリジナルメニューの裏面にプリントし、多くの人にメッセージを伝えます。
また帰路のバス車中では、大津市の神社に祀られている、海の神様の娘の民話「琵琶の名手と水の姫」を上映。琵琶湖と海は繋がっていることを知り、豊かな海を守るために、豊かな琵琶湖を守ることが必要だと学びました。
参加児童の声
・郷土料理には、長期保存するために発酵させたり工夫があり、ゆりかご水田は、魚にも他の生き物にも優しい、よく考えられた最高の米づくりだということを知りました。また、魚を食べる時はありがたく思って食べようと思います。
・地球の海全体が地球温暖化などで温かくなっていて、自分には何ができるのか考えさせられました。
・福井県の海が豊かなのは、まわりの山が豊かだからで、山を守ることは海を守ることにつながることです。
・鯖の養殖についての工夫や、今海で起こっている環境問題について知ることができた。
・海のない滋賀県に鯖を使った郷土料理がある理由が、鯖街道を通じて滋賀にひろまったということがわかりました。
イベントレポートは実施事業者からの報告に基づき掲載しています
参加人数:20人