有人離島専門メディア「リトケイ」の読者と考える小さな島の海洋ごみ問題「小規模離島の海ごみ問題を考える勉強会」を開催しました!
特定非営利活動法人離島経済新聞社は、海洋ごみ問題や小規模離島の地域づくりに関心のある方を対象に「小規模離島の海ごみ問題を考える勉強会」を開催。島外から支えるサポーターとなり継続支援を行うためのオンラインコミュニティを立ち上げました。
2023.01.16
特定非営利活動法人離島経済新聞社は、海洋ごみ問題や小規模離島の地域づくりに興味関心のある個人・企業・団体の皆さまなどを対象に、2022年11月25日(金)13:00~15:00「小規模離島の海ごみ問題を考える勉強会」を開催。有人離島専門メディア『ritokei(リトケイ)』読者や、地域課題の解決に関心のある方々と共に、小規模離島の海洋ごみ問題を島外から支える「サポーター」となり、継続支援を行うためのオンラインコミュニティを立ち上げました。
このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。
開催概要
2022年度に離島経済新聞社が実施した小規模離島地域(魚島・人口約120人/浮島・人口約180人/地島・人口約130人)の実態調査より、課題を抱える3地域の実情を共有。海洋ごみ清掃に関する先進事例の紹介や意見交換を実施
日時
2022年11月25日(金)13:00~15:00
開催場所
Zoom MTGによるオンラインイベント
参加人数
170人(リアルタイム70人/アーカイブ動画視聴100人)
出演者
ゲスト・金城由希乃(プロジェクト マナティ)、松本友哉(合同会社とびしま)、宮坂大智(村おこしNPO法人ECOFF)、司会・鯨本あつこ、調査報告・松本一希(離島経済新聞社)
人口概ね500人未満の島の海洋ごみ問題を考える
離島経済新聞社では日本財団「海と日本PROJECT」と共同で、小規模離島地域における海洋ごみ問題の実態調査を実施。人口概ね500人未満の島々のうち有効回答のあった101島の結果から、人手不足や資金不足、島内で処理できないごみの搬出費用の問題等、多様な問題が浮き上がってきました。
<参考記事>
「人手が足りない!資金が足りない!キリがない! 人口500人以下小規模離島の「海ごみ」問題を考える」(有人離島専門メディア『ritokei』)
https://ritokei.com/shizen/26972
2022年11月25日(金)に開催されたオンラインイベントでは、離島経済新聞社代表・統括編集長の鯨本あつこが司会を務め、小規模離島地域101島のアンケート調査結果と10島での現地調査に携わったリトケイ編集部の松本一希が調査結果について報告。海洋ごみの課題を抱える小規模離島3地域(地島・人口約130人/魚島・人口約120人/浮島・人口約180人)より地域の実情について語っていただきました。また、海洋ごみ対策の先進事例として、離島地域の海洋ごみ問題に取り組む3名のゲストに日頃の活動を発表していただきました。
当日の参加者は、離島地域にお住まいの方や離島地域の水産業新興に携わる方など、島々の海洋ごみ問題に関心を持つ男女70人。参加者への事前アンケートで関心の高い分野を伺い、「自治体と民間企業が連携して取り組めることは」「海洋ごみの処分方法やアップサイクル」など参加者の関心が高いテーマについて、ゲストとリトケイの意見交換を実施。参加者からもチャット欄でのコメントで意見や質問を募り、話題を掘り下げました。
イベントの様子
はじめにリトケイ編集部の鯨本と松本が、小規模離島への実態調査によって明らかになった海洋ごみ対策の事例を報告しました。その一部をご紹介します。近隣の地域への周知や協力の輪が広がる千振島(香川県土庄町)では、海洋ごみの回収箱が置かれ、住民によるごみ拾いが行われています。阿多田島(広島県大竹市)は、人の手が届かないエリアの対策として島外と連携を行っています。また、海洋ごみの課題を抱える小規模離島3地域より、宗像市元気な島づくり課・内野由太さん(地島)、愛媛県上島町地域おこし協力隊・佐藤滉治さん(魚島)、周防大島町生活衛生課・大谷快さん、屋代島さとうみネットワーク・田中貞徳さん(浮島)が登壇。「漁場を守るため海岸清掃を行っているが、人口減少による担い手不足が課題。島外企業や大学と連携した大規模清掃や海洋ごみ調査を行っている(地島・内野さん)」「ごみは島外に運んで処理する必要があるが、大きな流木などの処理が困難。少子高齢化と人口減少により海洋ごみに対応しきれなくなってきている。人口減対策として小・中学生の離島留学を推進している(魚島・佐藤さん)」「底引網にかかる大量の海底ごみが魚を傷つけ商品価値が損なわれるため、補助金によるごみ処理を実施しているが、ロープや金属などさまざまな素材が混じり合う海底ごみの分別に手間がかかり、担い手も不足。テトラポットに入り込むごみは収集が困難(浮島・大谷さん田中さん)」など、それぞれの地域における課題や取り組みが共有されました。
続いて、海洋ごみ対策の先進事例を、金城由希乃さん(プロジェクト マナティ)、宮坂大智さん(村おこしNPO法人ECOFF)、松本友哉さん(合同会社とびしま)の3名にご紹介いただきました。金城さんは、阿嘉島(沖縄県座間味村)など沖縄県内100カ所でビジターがワンコインで気軽にできるごみ拾いの仕組みの導入を進めています。現在台湾の島に拠点を置く宮坂さんは、学生を対象に国内外の離島や農山漁村で海岸清掃を含む「住み込み型ボランティア」ツアーを主催。2018年のタンカー沈没事故による重油が流れ着いた宝島(鹿児島県十島村)で重油回収作業を実施しました。松本さんは、平均年齢71歳と高齢化の進む飛島(山形県酒田市)で島外ボランティアと海岸清掃を行う「飛島クリーンアップ大作戦」や山形県内の親子を対象に海洋ごみ問題を学ぶ体験を提供する学習プログラム「とびしまクリーンツーリズム」を実施しています。参加者からも「マナティプロジェクトに参画するのは個人でも可能なのか」などコメントがありました。海洋ごみ問題は一朝一夕に解決するものではなく、たくさんの人手や資金、アイデアが必要となるため、離島経済新聞社では、小規模離島の海洋ごみ問題を考えるSNSコミュニティの運用を開始。オンラインイベントのしめくくりに、島々の課題を解決するために継続的に情報交換を行うSNSコミュニティへの参加を呼びかけました。
(左)風とネットを利用した台湾での海洋ごみ回収事例紹介(村おこしNPO法人ECOFF)
(右)飛島では教育機関や企業と連携し自動走行する海洋ごみ回収ロボットも開発中(合同会社とびしま)
参加者からの声
参加者の声をアンケートより抜粋してご紹介します。
・ただ、ごみを拾えばいいというだけでなく、島々での問題がたくさんあり、全体を通じてごみ問題を解決していく必要があると強く感じました。
・全てを解決するにはとても難しいことがわかりましたが、1人の力でも役に立てることも知りました。沖縄に観光に行くときにマナティを行ったり、村おこしボランティアに参加したいと思いました。
・関係人口をつくる、維持するのは、いくら工夫をしたところで、やはり労力がいるものです。延々と押し寄せるごみを目の前にして、普通の人間がそれをやり続けるのは非常にしんどいだろうと思います。
・人手不足・高齢化・資金不足・処理施設の不在など共通の問題が多いことが分かった。
・写真や言葉から、課題感・島を愛する気持ち・これからについての気持ちが伝わってきました。私も解決の一端を担えるようになりたいです。
・離島ではない場所で海洋ごみ問題に取り組んでいます。情報交換することでお互いにヒントになることがあると感じました。
イベントレポートは実施事業者からの報告に基づき掲載しています
参加人数:170人