海辺の教室 in 福岡・糸島姫島『姫島小学校(ハマユウ・ウニ・海洋ごみ調査研究)支援』を行いました
九州大学大学院工学研究院附属環境工学研究教育センターは、糸島市立姫島小学校より依頼を受けて授業支援を行いました。島に生息するハマユウと海洋ごみやウニについての調査研究の指導と支援を行い、郷土愛を育んで海の現状や課題、環境保全の大切さを考えるきっかけにしてもらいました。
2024.11.22
九州大学大学院工学研究院附属環境工学研究教育センターは、糸島市立姫島小学校の授業支援を行いました。地域のハマユウと海洋ごみ、ウニについて調査を行い、調べることでより専門的な角度から地域の海産物や植物の植生などを知ることができます。それにより郷土愛を育み、海の現状や課題、環境保全の大切さを考えるきっかけになることを目的に、2024年5月31日(金)から10月25日(金)までにかけて、授業の支援を行いました。
この支援活動は、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。
開催概要
福岡県糸島市立姫島小学校において、生活科の授業で、ハマユウの植生、海洋ごみやウニについて深く知り、郷土愛を育み将来の島の担い手として活躍できる気持ちにつながるよう授業支援を行いました。
日程
2024年5月31日(金)、6月21日(金)、9月9日(月)、9月27日(金)、10月25日(金)
開催場所
糸島市立姫島小学校、九州大学
参加人数
姫島小学校児童と教員、地域の住人 延べ40名
協力団体
糸島市立姫島小学校
研究内容と場所の確認
糸島市の離島の小学校、姫島小学校は全校児童が8名の小さな小学校です。
小学校より依頼を受け、姫島に生息するハマユウの植生調査と海洋ごみ、ウニについて調査研究を行っている児童の指導及び支援を行いました。5月31日(金)は、それぞれの研究課題をヒアリングし、実際の場所へ児童たちに案内してもらいました。ハマユウは島全体に分布していて、児童たちはその場所をよく知っていました。皆で島内を巡りました。その時に網の修繕などをしている漁師の方や、用件のため自転車で通りすぎる地域の方と出会うことがありましたが、元気よく挨拶ができ、児童たちは島の地域の方々皆から見守られ、育てられている温かさを感じました。また、魚などを捕まえる網が綺麗に整理されている場所を教えてくれ現在は金網ではなく、布製の物を使っていることも教えてくれました。島の子どもたちは島のことをよく知っています。水路に生息する生きものでとても大きなフナムシの仲間を捕まえて見せてくれましたが、潰れないようそっと捕まえ見たあとはそっと逃がしてあげる様子から、島の子どもたちは、島の人や生きものにも優しく思いやりの気持ちが育まれていることを感じました。
これから10月25日(金)の文化祭発表に向けて調査を行っていきます。九州大学から課題を出して調査研究内容の提案をしました。ハマユウはどんな場所に生えているのか、海洋ごみにはどんなごみがあったか、ウニの殻は肥料になるか、などです。
ウニ取りと九州大学訪問
6月21日(金)には、ウニ取りを行いました。姫島小学校では学校行事として、磯焼け問題の原因の一つであるムラサキウニの駆除を行っています。専用の器具を使い沢山のウニを採りました。ウニ採り作業終了後にウニを持ち帰り校内で地域住民や保護者の指導を受けながら加工体験を行いました。初めは慣れない手つきでしたがすぐにコツを覚えて次々にウニを割り、たくさんの身をとって持ち帰りました。保護者の方の「この体験を生かして、もっと海の環境に関心をもってほしいです」という言葉が印象的でした。
姫島で採取したウニを地域の住人は、そのまま畑に投入し肥料として使っていますが、ウニは本当に肥料になるのかを調べるために、9月9日(月)に九州大学を訪問し九州大学中央分析センターの低真空高度走査電子顕微鏡SEM(SU3500)で観察を行いました。成分分析では、よく聞く元素でO(酸素)やN(チッ素)、さらにCa(カルシウム)が含まれており、まさに肥料であることが分かりました。漁村の生活を支えてくれているウニ、しかし磯焼けの原因として駆除されてもいるウニの、生き物としての不思議さに改めて気づきました。ウニが肥料になるという可能性が確認ができたことで、今後島の物産品になり、地域まちづくりに繋がることを期待します。
調査まとめ
9月27日(金)これまでに、調査研究してきたことを発表しました。
ハマユウの植生について、ハマユウは種から大きくなるために3年かかることが分かりました。どのような環境で発芽するのかを調べるために、ビーカーに3書類の環境を作りました。水なしの環境、水たっぷりの環境、脱脂綿に水を含ませた環境。それぞれにハマユウの種を置き比べました。その結果脱脂綿に水を含ませた環境で発芽を確認できました。ハマユウにとってちょうどいいのは適度な水が必要だということが分かりました。島にどのくらいハマユウが分布するのか、ハマユウはどこからやってきたのかを調べていきます。
次にウニについての調査研究報告ですが、ネットに入れて海に沈め、キャベツを与えてみることでウニは何を食べるのかを調べようとしましたが、ネットが流されていき研究が途中で出来なくなってしまったことも正直に話していて誠実さを感じました。研究は事実を伝えることが大切です。ウニの殻が肥料になるのかどうかという研究は、植木鉢にウニの殻を入れたものと入れないもので植物の種を植えてみようと考えていることを発表しました。海洋ごみについては、海流に関係があることを九州大学の清野聡子准教授がスライドを見せヒントを与えました。文化祭ではいよいよ地域の皆さんの前での発表になります。研究発表の成果を楽しみに島をあとにしました。
姫島小学校文化祭
10月25日(金)令和6年度姫島大文化祭が学校体育館で行われました。本土からも多くの観客が訪れこの日を楽しみにしていました。合奏や演奏に続き、いよいよ小学校の学習発表です。発表は討論式で行われました。ステージの大きなスクリーンにスライドを映して見てもらいながら、机につき椅子に腰掛け発表が始まりました。まずはウニの研究発表です。9月9日(月)に九州大学を訪問し低真空高度走査電子顕微鏡で見たウニの画像が映し出され、ウニのトゲの一本一本の先端がどのようになっているか説明しました。成分分析の結果では、ウニの殻には窒素やリンが含まれていることが分かったことを伝え、畑の肥料になるという証拠として現在ウニの殻入りの土と殻なしの土を二つ用意し、そこにインゲン豆とハマユウの種を植えて成長の違いがでるか観察を行いました。次は海洋ごみの調査の発表です。まず、3年生と5、6年生がごみ拾いをし、8袋以上のごみを拾ったあとの写真が映し出されました。この中で気になるごみがあり、それはシンガポールの物と思われるペットボトルでした。韓国や中国のごみは海流で来ることは調べて分かっていましたが、シンガポールはもっと遠いです。そこで、そのペットボトルが発見された原因は、福岡市には航路があり、たくさんの国際船が来ていてその船から落ちてしまったと考え、一人ひとりが海洋ごみの意識を変えることが大切だと、発表しました。また、姫島にはたくさんの猫たちが暮らしていますが、猫にえさを与えたと思われる袋のごみなどを見ることがあります。姫島に観光に来る方に向け、渡船内に「ごみ袋は持って帰ってください」と書いたポスターを貼ろうと考えており、大きなことはできないかもしれませんが、小さいことを積み重ねていきたいと思っていることを伝えました。
最後はハマユウの調査研究発表です。スライドには写真が映し出されました。島の施設名に使われていたりマンホールのふたや給食の茶碗にもハマユウの花が描かれています。その理由は、糸島市が合併する前の志摩町ではハマユウが町の花だったからだということが分かりました。ハマユウの花は町のいたるところにありますが、調査の結果400本以上確認することができました。なぜ海沿いにハマユウが多いかというと、ハマユウの種は水に浮くことが分かり、種が浮いて波に乗って海岸沿いに多く咲くのではないかと考えました。ハマユウの花言葉は「どこかとおくへ」です。ロマンチックですね。地域の方にもインタビューをしました。下道に20mごとにハマユウの花壇があり45年前に作られたことが分かりました。児童たちは現在の予定として、昔、大切にされていたことを復活させたいと思い、学校の敷地内にハマユウロードを作ろうと思っていることを話しました。「大きくなるまでに3~4年かかるので、私たちが中学校を卒業するころには、ハマユウロードが満開になっているのではないでしょうか」と、夢と希望に溢れた言葉で、小学生の発表が締めくくられました。
このように、小さな島の小学校の研究発表を通して、海洋ごみの発生啓発活動に繋がり、ウニの磯焼け問題だけではなく有効な活用法、そして島に住む地域の皆の大切な思いの継承がしっかりとできたことに、研究支援は意義のあることとなり心にも有益な島の今後の発展に繋がる一助となり幸いに思います。
イベントレポートは実施事業者からの報告に基づき掲載しています
参加人数:40人