海辺の教室 in 佐賀・唐津 ~始めよう!海辺の探究テーマさがし~ を行いました!
九州大学大学院工学研究院附属環境工学研究教育センターは、海や海洋問題に関心を持つ高校生とフィールドワークを実施し、彼らの次年度の探究活動のテーマを探すため「海辺の教室 in 佐賀・唐津 ~始めよう!海辺の探究テーマさがし~ 」を開催しました。
2025.02.25
九州大学大学院工学研究院附属環境工学研究教育センターは、海や海洋問題に関心を持つ佐賀県立唐津西高等学校の1年生を対象に、九州大学の清野聡子准教授と一緒にフィールドワークを行い、次年度から取り組みを始める探究活動のテーマ探しを行うことを目的に、2025年1月26日(日)に、『海辺の教室 in 佐賀・唐津 ~始めよう!海辺の探究テーマさがし~ 』を開催いたしました。
佐賀県では、唐津市鎮西町にある波戸岬を拠点に、令和8年度を目標に『世界海洋プラスチックセンター(仮称)』の開設計画(https://www.pref.saga.lg.jp/kiji003108571/index.html)が進められており、海洋プラスチック問題を地域から世界につながる解決を目指しています。
そんな機運が高まる中、佐賀県環境部様より地域に根ざした探究的な教育活動に取り組む佐賀県立唐津西高等学校をご紹介をいただき、今回のイベントを開催する運びとなりました。
イベントの当日は、唐津市市民環境部環境課カーボンニュートラル推進係からも職員が駆けつけて下さり、高校生が自ら問題点や疑問点に気がつき関心を高められるような温かいサポートをしていただきました。
このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。
開催概要
海や海洋問題に関心を持つ佐賀県立唐津西高等学校の1年生を対象に、九州大学の清野聡子准教授と一緒にフィールドワークを行い、次年度から始める探究活動のテーマ探しを行う。
日程
2025年1月26日(日)9:30~12:30
開催場所
浜崎海岸(フィールドワーク)
西区公民館(座学)
参加者
21名
協力
佐賀県立唐津西高等学校(https://www.education.saga.jp/hp/karatsunishikoukou)
唐津市 市民環境部 環境課 カーボンニュートラル推進係(https://www.city.karatsu.lg.jp/top.html)
【フィールドワーク】豊かな海と残していきたい砂浜の未来
佐賀県立唐津西高等学校は令和6年度入学生より新しいコース制を導入し、2年次から「地域探究進学コース」と「学際探究進学コース」を設置し、探究学習を軸に据えた『地域社会の未来を担う志のある生徒』の育成に取り組んでいます。
今回のイベントは、翌年度から本格的に探究活動に取り組んでいく1年生を対象に、唐津が誇る海や海辺で探究テーマを探し、検討していくことを目的に開催いたしました。
フィールドワークの舞台となった浜崎海岸に面する唐津湾の環境は、松浦川や玉島川からの土砂や栄養分が供給される一方で、湾口が適度に開けているため潮通しが良く絶妙な生物群系を形成しています。
浜崎海岸は、海岸管理でも重要な海岸となっています。散歩や観光など利用者が多い海岸の侵食に対して、砂浜を維持するため、砂の岸沿いの移動を止める突堤が造られています。また、玉島川の川底の掘削土砂を侵食した海岸に入れてるなどの対策がなされています。景観や海浜植物でも有名な虹ノ松原の砂浜全体には侵食が進んでおり、海岸管理により一層の工夫が必要とされています。
浜崎海岸の波打ち際では、貝殻などのたくさんの生き物の生痕を観察することができますが、軟体動物の貝類とは異なる腕足動物のタテスジホウズキガイの殻も見ることができます。タテスジホウズキガイは限られた地域でしか生息していない珍しい生き物であると教えると、殻を手に取った生徒は目を輝かせて驚いていました。唐津湾の豊かさを感じる一方で、虹の松原を背にした海岸の東側は海岸の浸食が著しく、砂浜の危機を目の当たりにした生徒たちが、息を飲んでその光景を見つめる場面もありました。
生徒たちは限られた時間の中で思い思いに海岸ごみやシーグラス、貝殻などのサンプルを拾い集めながら、気になったものを見つけては宝物を見つけたかのように嬉しそうに質問してくる姿がとても印象的でした。
【座学】地域に根ざした探究への第一歩へ
フィールドワークの後は、海岸からすぐ近くにある公民館の一室をお借りして振り返りを兼ねた座学の時間を設けました。
座学の最初には、公民館長であり浜玉町西区長の武内様から長年見つめ続けてきた浜崎海岸の変容を語っていただきました。九州大学の清野准教授からは、1940年代の航空写真やリモートセンシングのデータを用いて唐津湾の特徴や移り変わり、豊かな漁場である一方で赤潮が発生しかねないメカニズムなど、探究の基礎となる知識を解説し、うみつなぎスタッフの木下からは海洋ごみや海岸ごみに関する基礎知識と連携してきた他校の課題研究の成果事例を紹介しました。
90分間の長丁場でしたが、高校生たちは最後まで集中力が切れることなく真剣な眼差しで先生方の話に耳を傾けつつ時折メモを取る様子からも主体的に課題に取り組もうとする熱意がひしひしと伝わってきました。これからも九州大学うみつなぎは、佐賀県立唐津西高等学校との連携を深めていき、高校生たちがより高度な探究に挑戦していけるように支援を続けていきたいと考えています。
生徒からの感想
・普段生活している唐津の海で今何が起きているか初めて知ることができた。
・唐津の海はごみが溜まりやすいという新しい発見があり興味が湧いた。
・今まで知らなかった海や砂浜の問題を知れて勉強になった。
・自分たちの身の回りのことでも知らないことがたくさんあってびっくりした。
・新しい観点から唐津の海、環境について考えることができた。知らないことをたくさん知れた。
・初めて聞いたことや言葉がたくさんあって勉強になった。
・釣りやサーフィンをするうえで離岸流を見つけるのが重要だとわかった。
・海岸に打ち上がる貝殻や生物などから海の中の環境を読み取ることができるとわかった。
・海岸浸食という言葉や現象を初めて知った。まだ知らないことがたくさんあると感じた。
・今まで海や砂浜のきれいなところしか見ていなかったが、ごみがたくさん落ちていることに気がつけた。
・海岸ごみにもいろいろな種類があることがわかった。
・海岸に流れ着くごみは海洋ごみの5%程度でしかないと知って驚いた。
・海洋ごみは海の環境問題かと思っていたが、社会問題や陸域の環境とも関係があることがわかった。
・探究の進め方に迷っていたが、方向性が見えたので良かった。
・普段見ていなかったところに目を向けることができて新しい発見がたくさんあった。
・これから私たちが海にどうアプローチしていくか考えながら探究活動を行っていきたい。
・唐津の海にはたくさんの可能性がある一方で問題もあり、それを解決して唐津の魅力を高めていきたい。
イベントレポートは実施事業者からの報告に基づき掲載しています
参加人数:21人