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田村淳さん・藤本美貴さんもご登壇!夏に“そなえ”て安全に海を楽しむ「海のそなえシンポジウム~水難事故対策の常識を疑う~」を開催

一般社団法人うみらい環境財団は、日本ライフセービング協会、日本水難救済会とともに日本財団が企画・統括する「海のそなえプロジェクト」の取り組みとして、田村淳さんや藤本美貴さんをはじめ、異分野・異業種の有識者の方をお迎えし、2024年6月19日(水)、東京ポートシティ竹芝にて「海のそなえシンポジウム~水難事故対策の常識を疑う~」を開催しました。

2024.06.20

一般社団法人うみらい環境財団は、日本ライフセービング協会、日本水難救済会とともに日本財団が企画・統括する「海のそなえプロジェクト」の取り組みとして、田村淳さんや藤本美貴さんをはじめ、異分野・異業種の有識者の方をお迎えし、2024年6月19日(水)、東京ポートシティ竹芝にて「海のそなえシンポジウム~水難事故対策の常識を疑う~」を開催しました。

1万人以上を対象とした水難事故対策に関する調査結果を会場にて初公開。実際に溺れたような体験ができるVR映像なども用い、水難事故対策の現状や課題、水難事故防止アイテム、対策の仕組み作りなど、海を安全に楽しむためのアプローチについてそれぞれの立場から意見を交わしました。

このイベントは次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。

海のそなえシンポジウム公式サイト:https://uminosonae.uminohi.jp/
水難事故対策に関する調査リリースhttps://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002670.000077920.html

ファシリテーターで田村淳さんご登壇
なぜ「今」なのか 日本財団 海野常務理事より

オープニングディスカッションでは、まず海野常務理事が「毎年同じような水難事故がなぜ繰り返されるのか。私たちもいろんな活動をしてきましたが、今まで常識と思っていたことが本当は常識じゃないのではないか。これをしっかり検証していかないといけないということで、海のそなえプロジェクトを始めました」とプロジェクト始動の背景を語りました。また、「(厚労省によると)交通事故による死者数は1995年比で1/4に減少、不慮の溺水事故は屋外だけ見ても横ばいです。(警察庁によると)水難者数は年間約1,600人、死者・行方不明者数は年間約800人で、発生場所の約8割が海と河川です」と溺水事故の実態とともに日本の海にも危険があることについて述べ、「安全な海を作るためには『自分の身は自分で守る』という利用者の意識変化と知識、そしてスキルを身につけることがまずは大事」と話しました。

2児の父親で、よく海に遊びに行くという田村さんは「娘から目を一時も離せないし、万が一事故にあったとき自分が助けられる水泳能力もないので常に車には浮力を積んでいます。溺れた経験はないけど、島育ちで小さい頃から『楽しい反面、怖い』というのは言われてきたのでそなえています」とご自身の“そなえ”について語りました。

今回の11,829人を対象に実施した水難事故に関する調査によると、溺れの経験は12歳(小学生以下)までが多く、溺れの多くは幼少期の体験であることがわかり、海野常務理事は「子どもの頃の水難事故防止の教育というのが特に大事」と話す一方、学校における水難教育体制は未だに確立しきれていないことを問題提起しました。他にも、浮き具を使用している人が要救助になりやすい、海で危険と感じるものを「サメ」と回答する人が多いにもかかわらずサメは水難事故の主要因ではない、など意外な調査結果も明らかになりました。また、毎年夏になると海や川などで溺れて亡くなる事故が各地で報道されますが、水難事故のニュースを観て、水域訪問予定者の2割は「安全対策を調べる」、半数以上は「延期」「行かない」などのリスク回避行動をとるという結果も。海野常務理事は「何が原因だったのか、その水域ではどういうところに気をつければいいのか、などの具体的な対策に繋がる情報がない」と言及しました。

水辺の危険が増える時期を迎える前に「安全に楽しく海を楽しむためにどうすればいいのか」という前向きな議論になれば、ということで海野常務理事から田村さんへ「率直に思ったこと、疑問などをツッコミなど入れてシンポジウムを盛り上げていただけると嬉しいです!」と楽しい雰囲気でスタートしました。

水難事故は、ひょっとしたら「コピペ事故」かもしれない?
繰り返される水難事故の実態

テーマ①では、まず「コピペ事故」(=似たような事故)がなぜ毎年のように繰り返されるのかについて伺いました。NHK報道局社会番組部チーフ・プロデューサーの近江さんは「専門家によると、子どもの事故に新しいものはなく全部どこかで起きた事故の繰り返しで、日本では2005年以降1,600人以上の子どもが学校管理下で亡くなっています。同じような事故が多く毎年のデータもほとんど同じ結果でびっくりしました。調査や分析、共有がされていないことが日本では大きい要因だと思います」と水難教育における問題点について話しました。「今回のプロジェクトは事故が発生する前に調査し防いでいこうという点が画期的だと思い、メディアも連携して報道していければいい」と話す近江さんに、「海野さん旗振りでいいんじゃないですか?」と田村さん。登壇者のみなさんはそれに賛成するような形で会場は盛り上がりました。

今回調査を担当した、日本ライフセービング協会(以下、JLA)救助救命本部長の石川さんは「水難事故は7歳と14歳にピークがあり時間帯は昼過ぎが多く、離岸流による事故が多い」と水難事故のパターンについて触れ「約200の主要海水浴場で毎シーズン2,000〜3,000件の救助が発生しており、自然要因で一番多いのは『離岸流』で、個人要因では泳力不足や疲労、パニックがあげられます」と海水浴場における救助のデータについて話しました。離岸流とは、海岸の波打ち際から沖に向かってできる強い流れのことですが、「焦らないことが重要」と石川さん。会場でも離岸流とは何かがわかる映像を流し、参加者の理解を深めました。

「泳げることと、溺れないことは、違う」
“学校現場”の水難教育における問題点とは

「溺れたときどうやって対応すると習ったか」という質問に対し「受けたことないです、皆さんはどうですか?」と会場に問いかけた田村さん。参加者の多くが「受けていない」と反応しました。日本水難救済会(以下、MRJ)の遠山理事長は「これまで、“大の字背浮きをして待つ”と言われてきましたが、波がある海で浮き具も身につけず、大の字背浮きで浮いているのは難しい」と、波のある・なしで行った検証映像も用いながら、“イカ泳ぎなど、状況に応じて有効な浮けるための術を身につける必要がある”ことを示唆しました。また、学校教育においては「溺れるような事態に陥らないため、海に行く際に事前に備えておくべきことについて教えることが大事」と話しました。

また、「泳げることと、溺れないことは、違うんです」と石川さん。「溺れの経験のある人の当時のプールでの泳力は25m以上泳げる人が約半数」「小学校の水難事故防止教育において『小学校の教員が教えるのが難しい』と6割以上の教員が回答」というデータをもとに日本の水難教育の難しさについて説明しました。「水難教育の重要度についての認識が低いため、国の意識を変える必要があります。大きな事故が起こってから対策をとるのではなく、広く水難防止のための情報を共有して国民の意識と知識を高めること、そして、学校だけに押しつけるのではなく、我々のような関係団体や地域社会と連携することも必要」と遠山理事長。近江さんは「アメリカでは、長期休み明けに熱中症で倒れる選手が多いことをデータで分析しガイドラインができているので、先生たちもそのデータに基づいて対策ができます」と海外の事例を紹介しました。

田村さん、溺れる体験VRにて「全然息できない!苦しい!」と没入体験も

「溺れの経験がある人は溺れの経験のない人に比べて、①安全教育を学んでいる、②水面で浮く能力が高く、自然水域での準備運動も行っている、③助けてサインを知っており、ライフジャケットを着用・購入率も高い」というデータから、溺れの経験が「海のそなえ」の意識強化につながっていることがわかり、会場の皆さんにも「VR+クロスモーダル効果」で“溺れ”の疑似体験ができる装置とその映像を披露しました。

実際にゴーグルを装着しVR体験をした田村さんは「平常心を保つことができない、最初は浮力があるけどだんだんと沈んでいくんですね」と実際に溺水に直面した際の苦しさを語りました。

VR体験装置の開発を進めているのはJLA。石川さんは「ICT教材やVRなどの先端技術をうまく活用しながら、子どもたちに興味を持って学んでいただくというのは一つの方法です」と学校での水難教育の展望について語りました。

また、MRJは水難教育プログラム構築を担当。遠山理事長は「基本溺れてしまったら、自力で助かるのは難しいので、溺れないための知識と技能を身につけておくことがまずは大事。自分の得意な泳ぎ方があればそれでも良いです」とイカ泳ぎや立ち泳ぎ、平泳ぎなどの映像を用いて溺れないための知識と技能について説明し、救助側の視点として「助けてサインが重要」と話しました。「目の前で子どもが溺れた際にすごく静かに溺れていて、そういうことも事前に知っておくと気づきやすいんだなと感じました」と近江さん。ライフセーバーである石川さんは「目視には限界があるので、AIを活用して離岸流や助けてサインを検知するなど、ライフセーバーだけでなくみんなで安全に海を楽しむ環境を作っていく」と発展的な取り組みについても話しました。最後に、遠山理事長は「本シンポジウムをキックオフとして、本プロジェクトで検証した水難事故を防ぐための正しい知識・技能を関係者が一致団結し、日本全体に普及させていきます。そのために、我々自身が力強い推進エンジンとなっていきます」と述べました。

「浮くアイテムの開発が楽しみ!」と藤本美貴さん、
命を守るアイテムの考え方に変化も

テーマ②では「命を守るフローティングアイテムはどうすれば定着するのか」について議論が繰り広げられました。「プールでパニックになったことがあり水は怖いという印象は小さい頃からありました。その際ライフジャケットは着ておらず、聞いたこともなかったです」と3児の母でもある藤本さん。実際に「ライフジャケットの着用経験がないのは、約半数以上。海や川など遊泳時のライフジャケットの着用経験は15%以下」という調査結果も会場で明らかになりました。「親も持っておかないと、いざというときに助けられないので僕自身も常に浮力を意識しています」と田村さん。「キャンプに行くのでライフジャケットは一応持っています。親の分は忘れがちなので、小さいのは持っておくといいですね」と藤本さんも浮力の大切さに共感しました。

また、「なぜ海水浴のときにライフジャケットを着用しないのか」という問いに対し、株式会社SIGNING クリエイティブディレクターの亀山さんは「そもそもそなえが難しい。どれだけ身近なところにあるかが重要」と話しました。マリンプロダクツ開発を行うmuta JAPAN株式会社 クリエイティブディレクターの内海さんによると「国交省が安全基準の適合を確認した桜マークつきのライフジャケットは救命胴衣なので、そもそも海辺で遊ぶことを目的に作られておらず用途と噛み合っていない」とのことで、同社開発のアイテムも紹介し補足しました。

田村さんも藤本さんも「子どもには何かあったときのためにライフジャケットを着せている」とのことですが、一方で「大人はずっと着ているのは難しい」とも話しました。亀山さんは「ライフジャケット以外の選択肢を選んで浮力を準備するというやり方もある」と提案し、「海での体験ごとにマッチした浮力のあるアイテムやより楽しくなるようなアイテムがあったらいいな」と想像を膨らませ、これまでの「命を守るためのアイテム:決まったライフジャケット」という認識から「海を楽しむためのアイテム:選べるフローティングアイテム」へと考え方の変化についても触れました。

会場には、浮力のある水泳パンツやウエストポーチ型、ブレスレット型膨張式浮力体、イカポンチョなどさまざまなフローティングアイテムが用意され、実際に手に取った藤本さんは「これめちゃめちゃいい!」と感動の様子。実際浮いている映像も上映し、田村さんも「これがいい!」とアイテムに興味津々でした。

登壇者の皆さんはそれぞれ新しいアイテムのアイデアを出し、藤本さんは「可愛くて、遠くからも見やすく、音が鳴るといい」と子ども目線での提案をしました。「エアバッグの技術を使うなど他分野との連携でいろんな実現が可能」と亀山さん。田村さんも「可愛いアイテムを娘に買って使っているところを見たい」と商品開発への期待を膨らませ、会場は盛り上がりました。

※本シンポジウムでは、muta JAPAN株式会社をはじめ、複数社のアイテムを紹介しています。

「社会全体で子どもの命を守る仕組みや環境を作ることが大事」と吉川優子さん

毎年“子ども”が溺れて亡くなってしまうニュースが後を絶たない中、テーマ③では「子どもが海を安全に楽しむ権利を守る」について、12年前、実際に息子さんを水難事故で亡くされた、NPO法人Safe Kids Japanの吉川さんと、同団体理事の大野さんからもお話を伺いました。

吉川さんは、実体験から「まず第一に重要なのは、現場検証をし事実としっかり向き合う、正しく知る、ということだと感じています。当時、幼稚園側の安全対策が十分になされず遊ばせていて、刑事裁判ではライフジャケットを着けさせるべきだった、と有罪判決が出ました。この判決で示されたのが、子どもの命を守るためには仕組みが必要であることです。責任問題だけで事故を終わらせてしまってはいけないと痛感しました。2017年からは事故が起きた(愛媛県)西条市では保育・教育活動で水辺での体験学習を行う際にはライフジャケットを着用することが決まりました。市内にライフジャケットのレンタルステーションが設置され学校などで活用されており、少しずつ全国に広がり始めています。いろんな人が連携し、社会全体で子どもの命を守る仕組みを作ることが大事です」とご自身の活動の成果を話しました。

また、大野さんは「水難教育の見直しや、着用したくなるフローティングアイテムのアイデアなど、どれも素晴らしいものだと思いました。何が本当にできるのかを考え、具体的に実施していくことが大事だと思いました」とシンポジウムの感想とともに「交通事故が減ってきたのは、警察官が必ず現場検証し、どうして事故が起こったのかを専門機関で対策を立てているからです。しっかりとデータの分析をし、PDCAサイクルを上手く機能させることを子どもの事故すべてに対して実施することが大切です」と安全教育の実践や人の行動変容に関する開発研究の視点から話しました。そして「社会全体で子どもの安全を守っていくというときにどうやって責任を分散していくかも重要なテーマです」と語りました。

最後に、吉川さんは「本当に絶望的な状況を救ってくれたのは子どもたちです。今日のシンポジウムのように、立場を超えていろんな方が事故を繰り返さないようにしよう、いい社会を作っていこうと、皆さんからも教わりました」と気持ちを明かし、大野さんも「一つの組織では実現は難しいので、連携が広がっていけばいいです」と話しました。

「常に“海の怖さ”を忘れないことが安全に海を楽しむこと」
水難事故削減に向けて

エンディングトークでは、海野常務理事が本日議論された3つのテーマについて振り返り、「個別のデータがたくさんあっても、それらが集約・分析・共有されないと事故は繰り返されます。社会的な仕組みとしての対策に繋がっていかないと感じました。これを担う機能を将来的に我々が提言していきたい、官民共同で作っていきたいということも視野に入れております。海のそなえプロジェクトでは、この水難事故発生を減少させることを目標に取り組んでいきます」と今後の展望について話しました。そして最後に、「海からコントロールできないので『怖さ』を排除するのは難しく、完全に安全な海を作ることはできません。私たちが、常に“海の怖さ”を忘れないことこそが安全に海を楽しむことだと思います。我々が旗振り役となって皆さんと考えていきたいと思います」と総括しました。

 

海のそなえシンポジウム~水難事故対策の常識を疑う~ 開催概要
<主催・共催>
主催:うみらい環境財団
共催:日本財団 日本ライフセービング協会 日本水難救済会
協力:海上保安庁 河川財団
<プログラム>
1.オープニングディスカッション
2.テーマディスカッション
①なぜ、水難事故は毎年繰り返されるのか
②命を守るフローティングアイテムはどうすれば定着するのか
③子どもが海を安全に楽しむ権利を守る
3. エンディングトーク
<登壇者>
田村淳(タレント・司会者)
藤本美貴(タレント)
日本ライフセービング協会 救助救命本部長 石川仁憲
日本水難救済会 理事長 遠山純司
NHK 報道局社会番組部 チーフ・プロデューサー 近江真子
株式会社SIGNING 経営補佐 / Social Creative Director 亀山淳史郎
muta JAPAN株式会社 クリエイティブディレクター 内海将吾
NPO法人Safe Kids Japan 事業推進マネージャー 吉川優子
NPO法人Safe Kids Japan 理事 大野美喜子
日本財団 海洋事業部 常務理事 海野光行
<参加人数>
232名(関係者・メディアのみ)

 

イベントレポートは実施事業者からの報告に基づき掲載しています

参加人数:232人