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ブリをテーマに日本の海の未来を考える 北アルプスから日本海へ調査「信州ブリ調査隊〜北アルプスと日本海〜」を開催しました!

海と日本プロジェクトin長野県実行委員会は、長野県松本エリアで大晦日に「年取り魚」として食べられる『ブリ』をテーマに、日本の海の問題を考える体験型学習プログラム『信州ブリ調査隊~北アルプスと日本海~』を7月25日(月)、28日(木)~29日(金)の3日間開催いたしました。

2022.08.15

海と日本プロジェクトin長野県実行委員会は、長野県松本エリアで大晦日に「年取り魚」として食べられる『ブリ』をテーマに、日本の海の問題を考える体験型学習プログラム『信州ブリ調査隊~北アルプスと日本海~』を7月25日(月)、28日(木)~29日(金)の3日間開催いたしました。

参加者は海が大好きな長野県在住の小学5~6年生の21人。天然のいけすと称される日本海・富山湾では、近年、ブリの漁獲量が不安定な時期が続いているという状況から、これからもブリやたくさんの魚が生きやすい豊かな海にしていくために海なし県長野から、できることは何かを考えようと様々な体験活動を実施。1日目は、海につながる信州の森・川を舞台にした調査をし、2~3日目は日本海・富山湾を訪れ、海の調査を行いました。

このイベントは、次世代へ海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。

 

開催概要
森の保水力調査、川の水生生物調査、ブリの生態調査、磯学習、定置網漁見学、
競り見学、漁師体験、学習発表会
日程
1日目 7月25日(月) 長野県大町市 国営アルプスあづみの公園大町・松川地区
            結団式、山と川の調査
2日目 7月28日(木) 富山県魚津市 魚津水族館見学
            富山県高岡市 磯学習、シュノーケリング体験
3日目 7月29日(金) 富山県氷見市 定置網漁・朝競り見学、漁港・市場調査、総合学習発表
開催場所
長野県大町市、富山県魚津市、高岡市、氷見市 各所
参加人数
長野県内の小学5,6年生 21名
後援
長野県、長野市
協力団体
国営アルプスあづみの公園、サントリーホールディングス株式会社、魚津水族館、氷見漁業協同組合、氷見市観光協会、富山県農林水産総合技術センター水産研究所

海につながる信州の森と川を調査

7月25日(月)、北アルプスのふもとに位置する国営アルプスあづみの公園に集合した信州ブリ調査隊のメンバーたち。結団式では、ひとりずつ自己紹介し、調査の意気込みを発表しました。「地球温暖化がブリに与える影響を知りたい。」「定置網漁はどのようにして魚を取っているのかを見てみたい。」「将来は遠洋漁業の仕事につきたいので漁師さんにいろんな話を聞きたい。」など前向きな言葉がたくさん出ました。
この日、視察に訪れた日本財団の海野光行常務は、「今、海は大きな変化が起きていてこのままだと海の機能が果たせなくなる。だから次世代に豊かな海をつなげるために様々な問題を自分ごと化することが大事。」とあいさつし、信州ブリ調査隊の今後の活動に期待をよせました。

信州ブリ調査隊の最初の活動は、森の学習です。今回は、水の循環について全国各地で次世代環境教育を行っている飲料メーカー、サントリーの協力を得て実施。活動のテーマは「森で水は育まれ、いずれその水は海へ。水が森でどのように育まれるかを探ろう!」です。信州ブリ調査隊は、まず森の中を散策。いろいろな動植物が住む豊かな森を体感。ミニ実験としてふかふかの腐葉土を器具を使って、圧縮させる実験をしました。ぎゅっと圧縮すると、土からは水滴が流れ出ました。これによって、森が水を貯水する力があるとともに浄化し、栄養を含んだ水を川に流れ出していることを知りました。

児童からは、「土から水がでてびっくりした」との声が上がりました。さらに特殊装置を使って、雨が振った水が森にたまり、海に流れていく様子も実験。ふかふかの腐葉土がある豊かな森があるからこそ、海に水や栄養が流れていることを理解しました。

午後は、川の調査を実施。信州大学理学部特任教授の藤山静雄さんを講師に招き、川での水生生物調査を行い、川のきれいさ及び、きれいであることの大切さを学びました。北アルプスの雪解け水が流れる乳川付近で調査開始。美しく清らかな川には、カワゲラやカゲロウの他、川魚のカジカやイワナの稚魚も発見。この川が美しく豊かな川であることが分かりました。
藤山教授は、「川上の環境が良くないと川下、そして、その先の海の環境はよくならない。海なし県であっても森や川を豊かにする活動をすることが海を守ることにつながる」と児童にメッセージを伝えました。信州ブリ調査隊メンバーは信州の豊かな自然の役割や大切さを学び、海の調査へと活動に向かっていきます。

海の調査 ブリの生態を学び、富山湾の豊かさを体感

森の調査の3日後、信州ブリ調査隊のメンバーは再び集結し、いよいよ海の調査に向かいます。行先は、日本海の富山湾。天然のいけすと称される魚の宝庫です。まず向かった先は、日本最古の歴史を持つ魚津水族館。ここでは、富山県の熱源人材の稲村修館長からブリの生態について学びます。「大きい。かっこいい。キレイな色をしている」と大水槽を泳ぐブリを見た児童たち。ブリは出世魚で、大きくなるにつれ、モジャコ、ツバイソ、フクラギ、ハマチ、ブリと名前がかわっていくことを知りました。

そして、稲村館長に「ブリは夜寝るの?」「どの部分がおいしいの?」「いつから食用としてとられてるの?」等々質問が相次ぎます。稲村館長からはブリの説明として、「大人になるのは3年、寿命は8年くらい。」「背中が青いのは海から外敵を守るために海の色に同化しているから。一方、腹が白いのは、下から見たときに外敵に気づかれないようにするため」といった説明があると児童は驚いた様子でメモをしっかりとっていました。

午後は、富山湾の雨晴海岸で磯学習。網を片手に海に潜りどんな生き物がいるか調べました。ウニ、ハゼ、ヤドカリ、エビなどを発見。指導にあたった魚津水族館飼育員の木村知晴さんは「海の行きものは、海水だけでなく、浜や岩や石など多くの環境があることで生息しやすくなる。この環境を守っていくことが大事」と児童に伝えました。

海の調査 定置網漁見学&漁師体験で海のお仕事を学ぶ

富山での海学習2日目。信州ブリ調査隊メンバーはまだ暗い午前3時半起床。早朝の定置網漁の見学に向かいました。遊覧船に15分ほど乗って定置網漁のポイントへ。仕掛けられた網を追い込んでいき、漁師さんが一気に救い上げます。富山のこの漁法は越中式定置網漁といい約400年以上受けつがれてきました。網に入った魚のうち、7割は再び海に戻る仕掛けとなっていて、取る魚は3割であることから持続可能な漁法として諸外国にも漁法が伝わっています。児童たちは、漁師さんの素早い連携のとれた動きに関心した様子。普段食べている魚を実際にとる場面を目の当たりにし、改めて海への想いをはせていました。

陸に戻り、今度は、朝競りの見学です。氷見漁港では朝6時から競りがスタート。活気のある現場で、専門用語があちらこちらから飛びかいます。魚はとるだけでなく、こうしたたくさんの人たちがいることで、魚が日本、そして世界各地に届けられることを学びました。また、漁港には、流通加工としての拠点や漁村の防災力を高める役割もあることを教えてもらいました。

漁協の後は、実際の漁師さんのお仕事体験です。薮田漁港で30年以上漁師をしている﨑田さん協力のもと、朝、定置網でとれた魚の選別作業を体験させてもらいました。フクラギ、アジ、サバ、イカ、タコなどが水揚げされ、それぞれの種類に分ける作業です。大漁の魚に大興奮の様子。その後、漁師さんの1日はどんな生活をしているかをインタビュー。朝は3時半に起きて4時前には出港し魚を取って、選別し、競りにかけて、翌日の船の準備をしてから朝食。午後は、網の修繕や兼業している宿や畑の仕事をしていることを教えてもらいました。児童の中には、「将来、漁師になりたい」と話す子もいてどうやったら漁師になれるかを熱心に聞く様子もありました。

今海で起きている変化&総合学習発表会

たくさんの場所で海の調査を実施した児童たち。活動も大詰め。今、海で起きている変化~富山のブリを守るために~をテーマにした講義を富山県農林水産総合技術センター水産研究所の研究員、阿部隼也さんから指導してもらいます。ブリの回遊の特性から富山湾は、脂ののったブリ、いわゆる寒ブリの産地です。しかし、富山県におけるブリの漁獲量は、1990年から好漁で、1997年に1031トンでピークとなり、これ以降、2000年ごろからは各年の漁獲量が不安定で、2021年の漁獲量はわずか141トン。

富山県では、ブリに電子タグを用いた放流調査を実施したところ、ブリは冷たい水(14℃以下)を避けて南下していることがわかりました。海水温の変化が漁獲量に影響していたのです。日本近海では、2021年までのおよそ100年間で海面水温が1.19℃上昇したことが分かっており、この上昇率は世界全体の海面水温の上昇率(100年間で0.56℃上昇)よりもとても大きいのです。富山でブリがとれなくなった一方で、北海道におけるブリの漁獲量は2000年代から増加傾向にあり、つまり、日本海におけるブリの分布海域が北方に変化しているのです。海水温の上昇の原因のひとつとして、地球温暖化による気温の上昇があげられ、地球全体で蓄積された熱エネルギーの9割以上は海洋に吸収されていることも説明がありました。

阿部さんの講義を受け、信州ブリ調査隊として、豊かな海を守るためにできることは何かをグループに分かれ考え、発表しました。児童たちからは「海洋ごみや海水温上昇による魚の分布の変化、また、魚の取り過ぎなど海に起きている問題を家族や友達に積極的に伝えたい。」「海の温度をあげないためにCO2削減に取り組みたい」「漁師さんにこれからも魚をとり続けて、食卓に届けてほしいので、魚をたくさん食べたい」「海を大切にするためには森や川を守ることも大事だから、長野県の自然環境もよくしていきたい」と言った意見がでました。

発表の後は3日間の活動のまとめの作文とブリの絵を描きました。今回学んだことをたくさんの人に伝えるために富山県の企業と連携し、ブリのふりかけを商品化して売り出すことも予定しています。ブリの絵は商品ポスターに使われます。

森、川、海のつながりを学び、その道のプロ専門家から指導を受け、普段できないスペシャルなたくさんの体験をした信州ブリ調査隊のメンバーたち。海の未来を守り続けていくことをあらためて感じた充実した学びの場となりました。

参加した子ども・保護者からの声

▽児童
・海の環境についてたくさんの人たちに伝えたい。そのために海の研究者になる。
・定置網漁見学で海にはたくさんの魚がいることを知った。もっともっと知りたいと思った。
・長野県に海は無いけれど、森と川でつながっていることに気づけた。
・漁師さんの仕事を体験して、とても苦労して魚を届けていることに感謝したい。将来は、漁業に関する仕事についてみたい。
・海を守るにはひとりひとりの行動が大事。海に行って楽しむのも、魚を食べるのも大事。

▽保護者
・この度は、普段出来ない経験をさせて頂けた事、本当に感謝しています。海と魚が大好きな本人にとって、忘れない体験となった様です!ますます、海への情熱を燃やしております。
・今回の経験から、魚の知識だけでなく、海洋資源や環境も気になった様です。海や魚に携わる経験をこれからもしていきたいと本人が強く望んでいます。
・3日間の多くの友人、講師のおかげで、参加前より、たくましくなった気がします。今後も海と日本プロジェクトの活動に参加していきたいです。

 

イベントレポートは実施事業者からの報告に基づき掲載しています

参加人数:21人