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佐渡島で、多様な海藻食文化と海藻を育む海の環境を学ぶ「佐渡の海藻調査隊」を開催しました!

一般社団法人 海と日本プロジェクトin新潟実行委員会は、県内産の海藻の7割を産出し、多様な海藻食文化が根付く佐渡島を舞台に、海藻と海藻を育む海の環境を学ぶ「佐渡の海藻調査隊」を7月26日、27日の一泊二日で開催いたしました。

2023.08.09

一般社団法人 海と日本プロジェクトin新潟実行委員会は、県内産の海藻の7割を産出し、多様な海藻食文化が根付く佐渡島を舞台に、海藻と海藻を育む海の環境を学ぶ「佐渡の海藻調査隊」を7月26日、27日の一泊二日で開催いたしました。

このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。

開催概要
海に囲まれた佐渡島は南蛮エビやカニ、イカ、冬の寒ブリなど豊かな海の幸で知られ、海藻 では県産の7割は佐渡産です。ところがそんな佐渡でも近年、高水温など海の環境変化の影響で、ワカメや養殖コンブをはじめとする海藻の深刻な不漁が問題となっています。また、食生活の変化から海藻離れも起きています。海藻が育つ佐渡の海に何が起きているのか、そして佐渡で育まれた海藻食文化を学び、未来に残すための新メニューの考案を調査隊のミッションとしました。
日程
2023年7月26日(水)~27日(木)
開催場所
新潟県佐渡市
参加人数
県内在住の小学5・6年生 19名
※20名参加のところ発熱のため当日1名が欠席
協力団体
新潟県、佐渡市、新潟県水産海洋研究所、新潟県立佐渡総合高等学校、姫津漁業協同組合、内浦漁業協同組合、佐渡潜水株式会社、株式会社給材、NPO法人新潟海洋開発他

海洋深層水の蓄養施設でワカメ、コンブの生態を観察する

最初に訪れたのは、佐渡市が管理する佐渡海洋深層水蓄養施設です。漁師さんが獲った天然の魚などを出荷時期まで生かしておく施設で、水深200m以上の深さからくみ上げる海洋深層水で育てています。深層水は年間を通じて約1℃と水温が安定していて、栄養が豊富なことからコンブをはじめとする海藻類やエゾバフンウニなどを育てることができます。

講師の佐渡市農林水産部の伊藤誠さんによると、佐渡の海はコンブにとっては水温が高く、天然コンブは育ちませんが、この深層水施設があることで北海道産コンブから種を取ることが可能となりました。参加者は、コンブをちぎりウニに食べさせる体験やワカメの種糸をつくる水槽で海藻の生態に触れていました。

姫崎ビーチで素潜り体験と生き物観察

姫津漁港の近く、小さな湾の岩場のビーチに移動、素潜りを体験しました。佐渡には、こうした岩場の海岸も多く、それゆえに海藻の産地となっています。参加者はまずライフジャケット、マリンシューズ、軍手を着用し講師の佐渡潜水株式会社会長・正司正(しょうじただし)さんの安全講習を受けてから海へ。

ゴーグルで海中をのぞけば海藻の周りには、小さな魚たち。岩の隙間でアメフラシやウニを見つけた参加者もいました。海藻を拾うごとに、正司先生に名前を尋ねたり、食べられる海藻かどうかも気になるようです。

佐渡の海藻6種を試食、海藻の役割とは

佐渡では10数種類の海藻が食べられていて、地域ごとの調理方法もあります。素潜り体験に引き続き、

佐渡潜水株式会社会長・正司正さんを講師に、まずは海藻の役割を確認。ビーチで見たように海藻が多いと魚などの生物が多いこと、また、炭素を固定するブルーカーボンともなることが説明されました。正司さんによるとワカメを食用でなく、工業用プラスチックの原料とするべく大きく育てる取り組みも始まっています。

そして、お待ちかねの海藻試食会、参加者の前には「銀サケの昆布巻き」や「いごねりのゴマあえ」など6種類の試食メニューが並べられました。「ウミゾウメンのおひたし」という耳慣れない海藻料理もあります。一見、大人向けの料理に思われますが、参加者の口からは美味しいの声があがり、スタッフもうれしくなりました。

夜の海岸でナイトカヤック体験

夕食後、調査隊は夜の海岸に向かいました。姫津ビーチのすぐ隣り達者(たっしゃ)海水浴場ではナイトカヤックが人気。運営するShow by JAWS(ショーバイジョーズ)の代表、岡部健太郎さんが昨年、始めたアクティビティです。陸上講習でオールの使い方を学び、舟底に灯りを点けた2人乗りカヤックで海に漕ぎだすと海中にぼんやりと明かりが広がってとても幻想的です。

海底の海藻や海草の様子も良く分かり、それらに集まる魚の姿もはっきりと見えます。参加者は前進も後退方法もあっという間に習得、講師のリードで舟を走らせます。夏場のため、海草は少なくなっていましたが、昼間は光の反射で見えにくい海中の様子や海草が育つ場所を確認することができました。今日の体験はこれで全て終了、宿に戻って明日に備えます。

【2日目】佐渡の郷土料理「いごねり」が育つ海とは

調査は2日目。「いごねり」は原料の「エゴグサ」と水を煮詰めて冷やし固めたもので、佐渡を代表する郷土料理です。株式会社早助屋(はやすけや)は、佐渡で一軒だけの「いごねり」を専業で製造する企業です。四代目見習いの山内三信(やまうちみつのぶ)さんによると、冠婚葬祭に欠かせない料理で、かつては各家庭でも作っていたそうです。エプロン、三角巾を身に着けた参加者は、冷えたいごねりの袋詰めを体験、山内さんの案内で乾燥させた原料エゴグサの倉庫を見学すると、天井まで積まれた在庫に驚いた様子でした。

エゴグサは自生せず、ホンダワラなどの大型海藻に絡みついて育つ生態のため、海洋環境の変化で、海藻類の減少が起きるとその影響を受けてしまいます。素材の味がそのまま製品となることから、山内さんの環境への熱い想いを聞き、参加者たちも同じ想いをもってくれたようです。

佐渡では定番ナガモ(アカモク)養殖とブルーカーボンの可能性

佐渡ではナガモを使った料理が定番で、ナガモうどんやナガモそば、宿の夕食でもナガモの味噌汁が出ました。ところがこの春、佐渡ではナガモの深刻な不漁が起きてしまいました。地球の温暖化による海水温の上昇も影響のひとつと考えられていますが、ナガモ安定供給のため新潟県も養殖技術開発を後押ししています。

内浦漁業集落にある白瀬種苗(しろせしゅびょう)生産施設では、新潟県水産海洋研究所増殖環境課の主任研究員濱岡秀樹(はまおかひでき)さんを講師に、海藻種苗生産現場を見学、さらに冷凍保存していた成長したナガモを実際に触り、ねばねばを確かめました。濱岡先生によると、このねばねばが炭素を固定します。海藻養殖もブルーカーボンにつながることが説明され、養殖された海藻を食べることも地球環境の助けになります。

ナガモの卵焼き、昼食は特製海藻弁当

バスは、次の体験会場、黒姫漁港に停車。参加者は徒歩で昼食会場の黒姫公民館へ向かいます。昨日から人生で初めての海藻食も経験した参加者たちですが、まだまだランチの海藻メニューにも興味深々。中にはモズクの酢の物を味噌汁に投入して、新メニューに挑戦する強者も現れました。ナガモ入り卵焼き、昆布の煮物に加えて、ワカメとジャガイモの味噌汁もおいしくいただきました。

漁船に乗って沖合のワカメ養殖ポイントへ

参加者は二手に分かれ、漁船で300m沖合へ。海上では、ビニール袋に包まれたワカメ種糸がロープに結びつけられ海中で養殖されています。講師の佐渡潜水正司会長によるとワカメの生育には、水温低下によって成長スイッチが入ることが必要で、これらのワカメは冬を前にさらに沖へ移動させるそうです。

海水は表面から冷えていくことから、従来よりも浅い水位で育てるなど漁業者間では、高水温に対抗した養殖技術の共有も盛んになっているそうです。

一方、陸上では、波が強い場所、穏やかな場所、また十分に生育しなかったなど異なる環境で育ったワカメ標本を教材に、海藻が海洋環境に大きく影響を受けることが県水産海洋研究所の濱岡先生から説明されました。参加者はこの漁船体験で全ての体験を終えたことになります。

調査のまとめ~海藻レポートの作成と発表

調査の締めくくり会場は両津港にほど近い佐渡島総合開発センターの大集会室です。2日間の学びを元に海藻の大事な役割や新しい食べ方のアイデアを各グループごとレポートにまとめ、発表します。はじめに佐渡地域振興局農林水産振興課副参事の唐木沢秀之(からきさわひでゆき)さんと一緒に学びをおさらいです。

話の中では海藻の分類方法として、緑藻(りょくそう)、褐藻(かっそう)、紅藻(こうそう)と色別に3種に分ける方法も説明され、参加者は食べたり、触った海藻を分類しながら記憶をさかのぼっていました。また、佐渡総合高等学校が関わる「海藻の新しい活用を考えるプロジェクト」の紹介があり、3年生6名が学びのサポーターとして各グループに加わってくれました。

6人はプロジェクト活動の一環で、海藻を使った調理実習なども行ってきたそうで、調査隊にとっては強い援軍です。グループごとに気づいたこと、アイデア出しを行い、いよいよ新メニューの発表。2つのメニューを考案したグループもあって、発表のスタイルも様々です。使う海藻もそれぞれで、給食らしく献立一式を考案したグループ、海藻スイーツを推すグループ、また歯ごたえがある「アラメ」も人気でした。発表された海藻新メニューは、新潟市を中心に小学校の学校給食メニューとして提案します。

参加した子ども・保護者からの声

(参加者)
・ブルーカーボンという言葉は聞いていたが、少し分かった。もっと良く知りたい。
・佐渡には岩場があるから海藻が生えるのだと知った。
・素潜りは疲れたけど一番楽しかった。来年も参加したい。

(保護者)
・2日間だけどたくましくなって帰ってきた。よいイベントだと思います。
・1人で参加させたが、他の子どもと積極的に交流してくれたようで良い機会だった。

 

イベントレポートは実施事業者からの報告に基づき掲載しています

参加人数:19人