郷土の名産・ますずしから海を学ぼう!小学生が学ぶ体験型学習イベント「富山ますずし学校」を開催しました!
一般社団法人とやまミライラボは、富山の名産「ますずし」をテーマにした体験型学習イベント「富山ますずし学校」を、2023年8月17日(木)・18日(金)・21日(月)の3日間で開催いたしました。
2023.08.30
一般社団法人とやまミライラボは、富山の名産「ますずし」をテーマにした体験型学習イベント「富山ますずし学校」を、2023年8月17日(木)・18日(金)・21日(月)の3日間で開催いたしました。参加したのは、富山県内在住の小学5・6年生20名。ますずしの原料である「サクラマス」を起点に、海・川に起きている変化や課題について学びました。
このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。
開催概要
ますずしの原料である「サクラマス」を起点に、体験学習や座学を通して海・川に起きている変化を学び、それらを次世代へ残すためにできることを考えるイベント
日程
2023年8月17日(木)・18日(金)・21日(月)
開催場所
富山県内各所(富山市、滑川市、魚津市、黒部市、入善町、高岡市)
参加人数
富山県内在住の小学5・6年生 20名
協力団体
富山県農林水産総合技術センター 水産研究所、滑川高校、富山中部高校、北日本新聞社、魚津水族館、株式会社源、入善町商工観光課、入善漁業協同組合、JWETADVENTURE、県ライフセービング協会、富山漁業協同組合、富山河川国道事務所、道の駅雨晴、吉本興業 ほか
ますずしのルーツを学び、作り方を知ろう
1日目にまず向かった先は「ますのすしミュージアム」。ますずしの歴史や作り方について、スタッフの陶山さんに解説していただきました。ますずしは自然の恵みに感謝する神事が始まりと言われていること、8代将軍・徳川吉宗に献上したことがきっかけで富山に広まったと言われていることなど、子どもたちはこれまで知らなかったますずしのルーツに興味津々。3日間の学びへの意欲が高まったようでした。
工場を見学したあと、実際にますずしづくりを体験しました。笹を敷いて、ご飯を詰めて、魚を並べて…。苦戦しながらも、先生にコツを聞いたり、互いに教え合ったりして頑張っていました。完成したますずしを前に「早く食べたい」と待ちきれない様子だった子どもたち。「1日に何千個も手作りしている職人さんはすごい」という声もあり、富山が全国に誇る名産・ますずしへの愛着が湧いた時間でした。
高校生が考えたますずしの折り紙に挑戦!
「ますのすしミュージアム」で昼食を食べたあと、富山中部高校生が考えたますずしの折り紙に挑戦しました。富山中部高校の皆さんは、数学の研究の過程で「正八角形が笹を広げたますずしに似ている」と気付いたことがきっかけで、この折り紙を考案したそうです。折り紙という手軽なものを使って、地元の名産を広めたいという想いも話していました。
さっそく高校生から手ほどきを受けながらチャレンジ。簡単な折り方の部品を組み合わせて立体構造を作る技「ねじり折り」という難しい折り方もありましたが、真剣な面持ちで黙々と進めていき、なかには高校生より早く完成させた子も。みんな最後まで粘り強く取り組むと同時に、多様なますずし文化の残し方を学びました。
ますずしの原料・サクラマスについて学ぼう
続いて訪れたのは、滑川市の「富山県農林水産総合技術センター 水産研究所」(以下、水産研究所)。まずは水産研究所の北川さんから、サクラマスの生態と増やす取り組みについて教えていただきました。神通川のサクラマス漁獲量は、明治時代に160トン以上だったのが、昭和50年代には7〜30トンになり、近年は1トンを切っているそうです。大幅に減ってしまった主な要因として、河川環境の変化が挙げられました。「ダムの建設などによって、サクラマスの産卵場所や、稚魚の生育場所の多くが失われてしまった」と北川さん。水産研究所ではサクラマスを増やすために、飼育や放流などの取り組みを行っているとご紹介いただき、実際にサクラマスの飼育棟も見学。水産研究所の古川さんからは、サクラマスの成長に応じて海水と真水(深層水)を入れ替えるなど、なるべく自然に近い環境で飼育を行っていることを教えていただきました。「海のサクラマスと川のサクラマス、見た目が違うのはどうして?」「水槽のサクラマスについているタグにはどんな意味があるの?」など、子どもたちから次々と質問が飛び交っていました。
高校生が取り組むサクラマスの研究について
続いて「滑川高校」へ。この3日間、子どもたちのサポートをしてくれている海洋科の高校生たちに、学校で取り組んでいるサクラマスの研究についてお話していただきました。サクラマスの授業を行なっているのは、全国でも同校だけだそうです。サクラマスの飼育や放流などの活動をしているほか、飼育時に残ったエサやふんを肥料に活用してバジルを育て、「サクラマスのバジルオイル缶詰」として商品化していることなどをご紹介いただきました。
さらにサクラマスは絶滅が危惧されていることや、ほかにも産地があることに触れた上で、「絶対に富山県が(飼育や放流に)取り組まないとダメだと思わない?」と投げかけた高校生たち。子どもたちも年の近い高校生の話を聞いて、川や海の環境に対する危機感や、「自分にも何かできることがないか」という使命感駆られた様子でした。
サクラマスとプラスチックごみについて理解を深めよう
2日目の朝は「魚津水族館」からスタートです。前館長で現在はアドバイザーとして活動している稲村修さんに、「サクラマス(ヤマメ)」の生態についてじっくりと解説していただきました。「海水と真水の両方で生きられるってすごいことだよね」「サクラマスは人間の生活と川・海の関係を考えさせてくれる生き物だよね」という稲村さんのお話に、子どもたちはメモをとりながら深くうなずいていました。
また、プラスチックごみに関する展示も案内していただきました。魚の胃から実際に出てきたビニールなどのごみを見た子どもたち。美しい海と生き物を守るために、プラスチックごみを減らすことの大切さを感じたようでした。その後は、普段お寿司として食べている魚を探す「お寿司BINGO」をして、水族館内を自由に見学。写真を撮ったり、エサやりをしたりと、海の生き物への関心を深めました。
通年出荷を目指すサクラマスの養殖事業
水族館から海沿いをバスで走って、「入善海洋深層水パーク」に移動。入善町キラキラ商工観光課の舟本さんに同施設の役割を説明していただいたあと、入善漁業協同組合の熊谷さんに、通年出荷を目指すサクラマスの養殖事業について教えていただきました。ここでは特殊な技術によって大型サクラマスの養殖に成功し、通年出荷を目指しているそうです。前日に訪れた水産研究所は主にサクラマスを増やすことを目的としている一方で、熊谷さんは「サクラマスを出荷できる状態まで大きく育てて、サクラマスのおいしさを皆さんに知ってもらうことが私たちの目的」と、その役割の違いを話しました。
サクラマスの養殖施設を見学した子どもたちは、水産研究所で見たサクラマスとの大きさの違いを実感。前日までの学びをふまえた上で「どんなエサを食べているの?」といった質問もあがりました。最後に養殖サクラマスのお刺身を試食。「あっさりしていて食べやすい」「醤油をつけなくてもおいしい」と、サクラマスのおいしさを噛み締めていました。
サクラマスの気持ちになってラフティングに挑戦!
川で生まれ、海へ行き、生まれた川に戻って来る…。そんなサクラマスの生態について理解を深めてきた子どもたち。2日目の午後はサクラマスの気持ちになって、黒部川から海に向かうラフティングに挑戦しました。まずは海や川で遊ぶ際の注意点やライフジャケットの着用方法を、富山県ライフセービング協会の宮田さんにレクチャーしていただきました。気を引き締めて乗り場へ移動し、いざ出発。みんなで力を合わせて漕ぎ進めました。途中に川遊びを挟みながら、約1時間で無事ゴールの海へたどり着きました。
ラフティングの興奮冷めやらぬまま、網を片手に川へ移動。魚津水族館学芸員の木村さんによる指導のもと、川の生き物を調査しました。最初はなかなか見つけられず苦戦していた子どもたちですが、石の裏などを探ると次々に生き物を発見。お互いに見せ合ったりして喜んでいました。発見した魚、エビ、カニの名前や特徴は木村さんが解説。最後に木村さんは「川と海は繋がっているので、海だけでなく川も大切にしてくださいね」と呼びかけました。
繋がる海と川〜富山の河川・海を守る取り組み
最終日となる3日目は、「自然ふれあい学習館」で座学からスタート。まずは富山漁業協同組合の西村さんに、サクラマスについて物語風に紹介していただきました。「サクラマスはどれ?」というクイズでは、姿も形も違う8つの魚が示されましたが、実はその全部がサクラマス。子どもたちはまだ知らなかったサクラマスの一面に驚いている様子でした。また、サクラマスを幻の魚としないために、漁ができる期間や区間、方法などの大切なルールがあることを教えていただきました。
続いて富山河川国道事務所流水治水課の山崎さんに、サクラマスが暮らしやすい環境づくりについてお話していただきました。一生で川の上流から下流までを泳ぐサクラマスは、神通川における自然再生の取り組みのなかで、河川の健全度を測るいい指標となっていること。また、サクラマスが暮らす環境を向上させることは、海の環境の改善にもつながってることを教えていただきました。子どもたちは終始真剣な眼差しでノートに学んだことを書き込んでいました。
サクラマスの稚魚を放流してみよう
ここまで、サクラマスを守り育てるさまざまな取り組みを学んできました。命を繋いでいく大切さを身をもって体感するために、自分たちの手でサクラマスの稚魚を放流します。神通川に移動して、稚魚を直接手で触らないなどの注意点を聞きました。そして「大きく育ってね」「元気で帰ってきてね」と思い思いの言葉をかけながら、1人1匹ずつ大切に放流しました。実際にサクラマスが暮らす環境を見て、その周辺にある木々を守ることの大切さも実感しました。
放流したサクラマスの稚魚は、昨年10月に生まれたもの。来春までここで暮らしながら育ち、海に下りていきますが、なんと1000匹のうち1〜3匹ほどしか帰ってこないと言われているそうです。子どもたちからは「1匹でも多くのサクラマスが帰ってきてほしい」「自分たちは気軽にサクラマスを食べていたけど、1匹の重みを感じた」「このような(河川の環境整備などの)仕事に就いている方が素晴らしいと思った」などといった感想が聞かれました。
ますずしの魅力を伝えるオリジナルパッケージを開発
高岡市の「道の駅雨晴」に移動し、イベントの最後に挑戦したのは、ますずしの魅力を伝えるオリジナルパッケージの開発です。クリエイティブディレクター・コピーライターの居場梓さん、デザイナーの高森崇史さんを講師にお招きしました。商品の魅力を伝えるためにどんな要素が必要かをみんなで考えたあと、文章を書くグループ、絵を描くグループに分かれて、それぞれ制作に取り組みました。
文章を書くグループには、ますずしの歴史や作り方、サクラマスの特徴など、5つのテーマが与えられ、3日間で学んだことを思い出したり、メモを見返したりしながら、2人1組で文章を作成。県外の方にもますずしの魅力が伝わるよう工夫したり、多くの人の目につくようキャッチコピーを考えた組もありました。
一方絵を描くグループは、パッケージに入れる商品名と、サクラマス・ますずしのイラストを筆で描きました。同じサクラマスでも力強いもの、かわいらしいもの、リアルなものなど、子どもたちの個性があふれていました。子どもたちの文章や絵をもとに作られるパッケージの商品は、富山ますずし協同組合と連携し、富山市内の7店舗(青山総本舗、元祖関野屋、ますのすし千歳、吉田屋鱒寿し本舗、川上鱒寿し店、高芳、味の笹義)にて販売される予定です。
まとめ発表会&卒業式
最後は保護者の方をお招きして、パッケージ用に作成した文章とイラストの発表会&卒業式を行いました。グループごとの発表では、「いつかまた、天然のサクラマスでますずしが作れたらいいなと思った」という想いも聞かれました。保護者の皆さんも、3日間で学んだことや自分の想いを堂々と発表する子どもたちに深く感心している様子でした。
卒業式では、参加した20名全員に「富山ますずし学校」の卒業証書を贈りりました。今回参加してくれた子どもたちが、これからも海や川、そして魚に積極的に親しみ、海を守る次世代のリーダーとなってくれることを期待しています。
イベントレポートは実施事業者からの報告に基づき掲載しています
参加人数:20人