シーカヤックや海洋実習船の操縦にも挑戦!北陸新幹線で行く福井・若狭の海「サワラのヒミツ探検隊!」を開催しました!
一般社団法人 石川海洋環境研究所は、2024年7月29日(月)から2泊3日で、石川県在住の小学校5・6年生を対象とした海の学びイベント「サワラのヒミツ探検隊!」を開催。金沢港いきいき魚市でのサワラ観察や学びを皮切りに、今年3月に延伸されたJR北陸新幹線を利用して、サワラ漁獲量が全国1位の福井県に遠征。サワラ増加の背景を調査しました。
2024.08.09
一般社団法人 石川海洋環境研究所は、2024年7月29日(月)から2泊3日で、石川県在住の小学校5・6年生を対象とした海の学びイベント「サワラのヒミツ探検隊!」を開催しました。
石川県沖で過去にはほとんど獲れなかったサワラが2000年頃から水揚げが急増、今や全国トップクラスの漁獲量となっています。その要因として考えられているのが地球温暖化に伴う海水温上昇。本来は南方系の魚であるサワラが温かくなった潮流に乗って北上していると考えられています。
本イベントでは金沢港いきいき魚市でのサワラ観察や学びを皮切りに、今年3月に延伸されたJR北陸新幹線を利用して、サワラ漁獲量が全国1位の福井県に遠征。サワラ増加の背景を調査しました。
このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。
開催概要
金沢港を起点に福井県小浜市へと遠征。石川・福井の共通課題である「サワラの漁獲量増加と地元での消費」について調査する2泊3日のイベント
日程
2024年7月29日(月)~7月31日(水)
開催場所
石川県金沢市・福井県小浜市
参加人数
19人(石川県在住の小学校5・6年生)
今回のテーマとなる魚「サワラ」を知る
最初に訪れたのは金沢港にある「かなざわ総合市場」。JFいしかわのおさかなマイスター・高岩信弘さんは子どもたちに問いかけました。
「昨日の夜ごはんに魚を食べた人は?」
手を挙げたのは18人中3人。この結果を予想通りとした高岩さんは
「この3日間が終わるころには魚好きになって欲しいです。そして漁師さんが獲った魚がどうやって皆さんの食卓に並ぶのか、どんな仕事があるのか。そんなこともイメージできるようになって欲しいです」
まずは金沢港に停泊する漁船の説明。見学した7月下旬からは底引き網漁が資源保護のために休漁。代わりに、現在石川に多く集まっているスルメイカを求めて全国からイカ釣り漁船が集まって来ているそうです。その後、水揚げされたイカをはじめ、様々な魚を新鮮に運ぶために設置された巨大な冷蔵庫を見学。タオルを一瞬で凍らせる冷気に、子どもたちは目を見張っていました。
続いて港に隣接する「金沢港いきいき魚市」へ。今回のテーマ魚である「サワラ」を探しました。この日は海が荒れていたため水揚げは少なかったものの、市場の鮮魚店に並ぶサワラの若魚サゴシを発見しました。
石川の漁業・海の変化とサワラの関係とは
サワラの姿を初めて見た子どもたち。続いては石川県水産総合センターの奥野充一さんが、石川の海洋環境の変化とサワラの生態などを解説しました。もともと石川の海でほとんど獲れなかったサワラは、2000年頃から突如として漁獲が急増。1995年が全国32位だったのに対して、2020年の漁獲量は全国2位へと大きく躍進しました。今やサワラは石川の漁師の重要な収入源であり、地元で消費するのが大切だと奥野さんは言います。
「これまでサワラが多く獲れていた西日本では、お祝いの席を飾る郷土料理などにサワラが使われてきました。皆さんも、美味しいサワラを食べて石川の食文化を育てましょう」
サワラの生態を学んだ子どもたちは、石川同様サワラの漁獲が激増した福井県へ。JR金沢駅から北陸新幹線に乗り込んで敦賀に向かいました。
若狭湾の漁業と環境、温暖化で増えた魚種とは
JR敦賀駅から観光バスに乗り換えて、最初に訪れたのは三方五湖と若狭の海を一望するレインボーライン山頂公園。異なる水深と塩分濃度の「五色の湖」を見学し、その特殊な地形を知りました。
続いて三方五湖と若狭の海を詳しく学べる福井県海浜自然センターへ。三方五湖には海水魚から淡水魚まで様々な魚が生息していること、日本海側としては珍しいリアス式海岸である若狭湾では定置網漁が行われていることなどを学びました。
また、福井の海にすむ魚貝に触れる「タッチプール」では、魚やマダコ、カニなどに触って、その動きや、警戒したときに起きる体色変化などを観察しました。
福井県海浜自然センター・柘植卓実主事
「僕たちは毎日水温を測り、魚を観察しています。その結果、計測を始めた2014年から今までで、水温が2.2度上がり、これまでは居なかった南方系の魚を多く見るようになりました。この状況が何を意味しているのか、結論を出すには多くのデータが必要です。僕たちはこれからも計測を続けていきます。皆さんもこの事に是非関心を持ってください」
<子どもたちの反応>
「(施設内のタッチプールにて)泳いでいる魚に初めて触った。普段触れないから嬉しかった!」
「(福井県と関西をつなぐサバ街道の)サバを運ぶ体験をしてみたらとても重くてびっくりした。昔の人が大変な思いをして魚を運んでいたことがわかった」
「定置網漁が昔からある漁だとわかった」
小浜の海でシーカヤック体験
今回の宿泊地である小浜市阿納は、波穏やかな内湾。2日目最初のプログラムは、この海でのシーカヤック体験です。インストラクターは阿納パドラーズクラブの河原正和さん。まずは海での安全な活動に必要な「海のそなえ」として、ライフジャケットの重要性と装着方法を教えます。パドルの使い方とシーカヤックの扱い方を学んだら、いざ海へ!初めてとは思えないほど、子どもたちはスムーズに海を進みました。
体験後、河原さんからはこんなメッセージが。
「日本海側にはきれいな海があります。皆さんの地元、石川にもきれいな海がありますよね。こういったことをきっかけに、海を好きになって欲しいです」
<子どもたちの反応>
「海の上で、他のカヤックと連結したのが上手くいったので良かった!」
「(シーカヤックの中継地点)ビーチで魚を見ました。いつもはあまり海に行かないので、今日久しぶりに来たけれど楽しかったです」
「小さな魚をたくさん見ることができました。また海に潜ってみたいです」
若狭高校の実習船・雲龍丸で海を体験
午後からは小浜港へ。福井県立若狭高校・海洋科学科が保有する実習船「雲龍丸」に乗船しました。
子どもたちにいろんなことを教えてくれたのは若狭高校海洋科学科の高校生。風が強く荒れ気味の海でしたが、風裏の波が小さな海域に移動して停泊。子どもたちは3班に分かれて、海中プランクトン観察や水中ドローン操作を体験し、若狭湾の海に関する高校生のレクチャーも受けました。
小浜港への帰路、子どもたちは順番に実習船・雲龍丸の操舵を体験。荒波に怯えていた子どももいましたが、高校生や先生たちの「海を好きになって帰って欲しい!」という温かい気持ちに励まされて、全員が全てのプログラムを体験することができました。
雲龍丸を降りた子どもたちは若狭高校の海洋キャンパスへ。毛利誠教諭が地球温暖化が福井の海洋環境と漁業に与える影響についてレクチャーします。
「福井県でも2000年からサワラの漁獲量が増えました。でも以前は多く獲れていた山口県では1980年から獲れなくなっているんです。これは何故だと思いますか?周りの人と相談して下さい」
「先生が子どもの頃はサワラが無かったので、福井にはサワラの食習慣がありません。このままではサワラの消費がゼロになってしまいます。この解決方法は?周りの人と相談して下さい」
教室内では即座に活発な会話が始まりました。この日は午前中からシーカヤックに実習船での体験と大忙しだったこともあり、授業前には「部屋を暗くすると皆寝てしまうかな」と心配していた毛利先生も、その様子を頷きながら見守ります。
子どもたちからは「地球の温暖化で海水の温度が上昇して、福井の海の温度が丁度良くなったから」。そして「獲れなくなった山口県へ持っていく。郷土料理になったり、食習慣があるから」など、これまでのプログラムでの学びをもとに様々な意見が出ました。
毛利先生が勤務している若狭高校でもこの問題の解決方法を考え、その一つとして昨年「サワラの缶詰」が生まれました。
若狭高校は、前身の小浜水産高校から続く伝統の缶詰生産で、宇宙食製造の食品管理基準であるHACCPを取得しています。2020年には実際に若狭高校の「サバの缶詰」が宇宙食として国際宇宙ステーションに運ばれて行きました。そして現在起きている「サワラの漁獲量増加」の解決策として県内消費を増やすことと、もともと多くとれていた土地などへ移送することを目的に「サワラの缶詰」作りを企画したそうです。
夕食で子どもたちは若狭高生が開発した「サワラの缶詰」と、サゴシの塩焼きも食べました。急に獲れ始めたため食文化がないサワラは、石川のスーパーの鮮魚売り場にもほとんど並びません。どんな味の魚なのか、子どもたちはサワラの味を確かめました。
<子どもたちの反応>
「缶詰の味が濃い。食べたことのない味です。毛利先生が宇宙では味が薄くなると言っていたけれど、この味でちょうど良いのかと思うとびっくり」
「お魚は普段はフライが多いので、塩焼きも美味しいと思いました」
「サワラは白身だけど、お肉のような感触でおいしかったです!」
サワラを使ったファストフードメニューを考える
3日目は金沢に戻ってのプログラム。石川で食習慣の無いサワラ消費を目指したファストフードメニューの開発です。まずはぶつ切りにしたサワラの三枚おろしに挑戦しました。講師はフードコーディネーターの佐冨上あつ緒さん。子どもたちは悪戦苦闘しながら自分たちでさばいたサワラ(サゴシ)を、フライとムニエルに調理した後、野菜や調味料をアレンジしてそれぞれのハンバーガーとサンドイッチを作りました。
<子どもたちの反応>
「カレーとサワラが合う!」
「自分で作ったほうがおいしい気がする」
「手間取ったけど美味しいので、終わりよければ全てよし」
食後には、今回のサワラ調理を踏まえて美味しいと思えるファストフードレシピを考えました。子どもたちのアイディアを元に新たなサワラパンを開発し、今秋には県内のパン屋で発売することを目指します。
海のクイズ王
最後のプログラムは、3日間の海の学びを本格的な早押しボタンで振り返る「こども海のクイズ王」です。「鰆」の書き方や講師の名前など様々な問題を次々に出題。子どもたちは初めての早押しボタンに、ドキドキワクワクしなが楽しく解答し、クイズ王は盛り上がりました!
閉会式での感想から、今回印象に残ったこと
「船に乗ったこと。海の怖さを知れたし、高校生の皆さんと沢山話せたのも良かった」
「シーカヤックで友達と2人で息を合わせてやって、もっと仲良くなれた」
「性別が変わったり、脱皮や触ると色が変わるなど、様々な海の生き物を知れて良かった」
「サワラのことを知ることができた。ブリと同じ出世魚だと分かった」
イベントレポートは実施事業者からの報告に基づき掲載しています
参加人数:19人