小学生たちが“持続可能”な豊かな海について学ぶ3日間「おかやま里海づくり調査団~豊かな海をつくるとは~」を開催しました!
一般社団法人海と日本プロジェクトin岡山は、8月1日(木)・5日(月)・6日(火)の3日間、岡山の小学生を対象とした海洋学習イベント「おかやま里海づくり調査団~豊かな海をつくるとは~」を開催。県内の小学生たちが夏休みの3日間で、岡山の海・瀬戸内海の抱える問題や、その解決のための取り組みなどを学び、「自分たちにできること」を子どもたちひとりひとりに考えてもらうイベントです。
2024.08.15
一般社団法人海と日本プロジェクトin岡山は、8月1日(木)・5日(月)・6日(火)の3日間、岡山の小学生を対象とした海洋学習イベント「おかやま里海づくり調査団~豊かな海をつくるとは~」を開催いたしました。
このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。
開催概要
県内の小学生たちが夏休みの3日間で、岡山の海・瀬戸内海の抱える問題や、その解決のための取り組みなどを学び、「自分たちにできること」を子どもたちひとりひとりに考えてもらうイベントです。1日目は、笠岡市大島美の浜漁協で瀬戸内の魚を探すワークショップや、豊かな海にとって大切な場所「干潟」の観察を通して、瀬戸内海の魅力と、目指すべき“豊かな海”とはどんな海なのかを学びます。2~3日目は1泊2日で白石島へ。フィールドワークを通して実際に見て体験し、豊かな海を「つくる」とはどういうことなのか、自分たちにできることは何かを考えていきます。
日程
2024年8月1日(木)、8月5日(月)~8月6日(火)
開催場所
笠岡市(大島美の浜漁協、カブトガニ博物館周辺干潟、白石島 等)
参加人数
小学5~6年生 24名
1日目の活動 ~豊かな海ってどんな海?岡山の海が抱える現状を学ぼう~
晴れ渡る青空の下、県内から集まった24名の小学生たちが会場である笠岡市の「大島美の浜漁協」に集合しました。主催者からイベントの概要について説明をうけたあと、これから3日間の学習をともにする仲間たちと「おかやま里海づくり調査団」を結成しました。
最初に隊員である子どもたち配布されたのは、「調査団学習ノート」です。このノートは、イベントの3日間で講師の方に教えてもらったことや体験を通して学んだことをまとめられるだけでなく、自分たちが調べたこと、「面白い!」「伝えたい!」と思ったことなども自由に書き込んでいけるノートです。学びをサポートすると同時に、イベント後には、子どもたちの学びが詰まった自分だけのオリジナルの学習ノートになります。
最初の活動は、「瀬戸内海産の魚を探せ」をテーマに、大島美の浜漁協の競りと朝市を見学しました。大島美の浜漁協の秋田組合長と、おかととの森下会長を講師に、その日に水揚げされた様々な種類の魚について名前や特徴を教えてもらいました。子どもたちが初めて見る魚もたくさんあり、子どもたちからは、「この魚の名前は?」「いくらぐらいするの?」など、質問の声であふれました。獲れたての海の幸のおいしさを知るために、魚の刺身を食べた子どもたちからは、「いつも食べているものと味が違う」「はじめて刺身を食べたけど、こんなにおいしいの?」など感動の声が上がっていました。
体験を通して、瀬戸内海には、大きな魚から小さな生き物まで様々な魚が暮らしていることを知り、瀬戸内海の特徴である「生物多様性」や「豊かさ」を実感しているようでした。
瀬戸内海の魚を実際に観察した後は、漁協近くの「海のみえる家」へ移動し、岡山の海の特徴や、近年の変化について学ぶ講義を受けました。講師として里海づくり研究会議の田中丈裕さんが登壇し、立地的に恵まれた瀬戸内海の豊かさとともに、昔と比べると少しずつ魚にとって住みにくい環境になっていることを子どもたちに伝えました。
「豊かな海」とは、人間にとって都合のいい海ではなく、「生き物の種類も量も多い海」です。そのために大切なことは、植物プランクトンからはじまる海の生態系ピラミッドがバランスよく大きいこと。そして、海の生き物にとって大切な場所である「えさ場」と「かくれ場」があることだと教えてもらいました。
子どもたちは講義を受けて、「豊かな海」とはどんなものかを知るとともに、このままだと自分たちの身近な海が豊かさを失ってしまう可能性があることを学びました。
1日目の最後の活動は、「えさ場」「かくれ場」の代表的な場所、「干潟」についての学習です。笠岡市内の「カブトガニ博物館」に移動し、学芸員の東川さんから、干潟にいる生き物についての解説や、潮の満ち引きで環境が変わる干潟が生き物にとってどれだけ特別な場所かを教えてもらいました。講義の後は、実際に「干潟」での観察学習をしました。干潟には、海を住みかとする小さな生き物が多く生息しており、子どもたちは暑さも忘れ、夢中で生き物を観察しました。体験を通して、「豊かな海」の基盤となる小さな生き物がたくさん生息する干潟の大切さを実感していたようでした。
2日目の活動 ~豊かな海を「つくる」とは?里海づくりの取り組みを学ぼう~
1日目の活動で、瀬戸内海の海の豊かさと知ると同時に、豊かな海を守るためには「干潟」や「藻場」などが重要な役割を果たしていることを学んだ子どもたち。2日目と3日目の活動では、豊かな海をどのように「つくる」のかをテーマに、一泊二日の行程で、ワークショップを通して学びを深めました。
2日目の朝、調査団の子どもたちは笠岡諸島の白石島に向け、海上タクシーで出発しました。船に初めて乗る子も多く、波や風、船の上から見る瀬戸内海の多島美を楽しんでいました。
2日目最初の活動は、「里海づくり」について学ぶ講義です。講師は1日目に続き、里海づくり研究会議の田中さん。田中さんの講義では、豊かな海をつくるための活動、「里海づくり」について学びました。さらに、瀬戸内海でもいち早く人の手で環境を整えた里海である白石島の「海洋牧場」について教わりました。海洋牧場は、海の中の地形や波の影響を考えたうえで人工漁礁などを設置して、藻場と同じ環境をつくったものです。食物連鎖を大切にするためにエサを増やすことからスタートし、動物プランクトンとその上の生き物を増やす工夫がなされていることや、魚の発育段階に合わせて住みやすい環境を整えられていることを学びました。
講義を終えた子どもたちは、実際に「海洋牧場」を視察しました。「海洋牧場」を外から視察するだけではなく、水中ドローンを入れて実際の海洋牧場の中のリアル映像を観察しました。この日は、あいにくの猛暑のため、水温が高く、水中ドローンで撮影可能な魚礁には魚の姿があまり見えませんでした。残念ではありましたが、どのように海中に魚礁が設置されるかだけでなく、「海水温の上昇」が海に多大な影響を与えていることを肌で感じることができた貴重な体験となりました。
2日目の最後の活動では、海から引き揚げた実際の人工魚礁の解体にも挑戦しました。中にどのような生き物がいるか、魚礁にどんな植物が繁殖しているかなどを観察しました。稚魚や小さな生き物、イカの卵などを発見した子どもたちからは、「人の手でつくった魚の住み家にちゃんと魚が住み着いてた」「住み家やかくれ家をつくることができるんだね」などの声が聞かれました。
解体後は、自分たちで組み直して、魚礁内に入れる貝に一人一人が海のメッセージを加えて、再び海に返しました。子どもたちは楽しみながら取り組みつつも、豊かな海をつくるために人間も貢献できることを学びました。また、自分自身も海を豊かにする活動へ貢献していることを実感して嬉しそうな様子でした。
3日目の活動 ~豊かな海を未来に繋ぐために「人」に何ができるのかを考えよう~
最終日となる3日目は、「地曳網漁体験」からスタートです。白石島の浜辺で、全員で力を合わせて海から網を曳くと、そこにはタイ、キジハタ、タケノコメバル、フグなど、沢山の魚が。子どもたちからは、「目の前の海でこんなに魚が獲れると思わなかった」「自分たちの力で引き揚げた魚を触りたい」「この海は豊かだね」などの声が上がりました。また、昔から笠岡で漁業をする漁師から、海洋牧場による里海づくりをする前とした後ではどのような変化があったかを教えていただきました。たくさん網に掛かる魚を目の前に、里海づくりが積極的に取り入れられている笠岡の海の豊かさを改めて実感しているようでした。
いよいよ、最後の活動です。大島美の浜漁協の海の見える家に会場を移し、この3日間で学んだことについて振り返り授業を行いました。グループに分かれて、意見交換をしながらレポートをまとめて発表しました。「今回学んだことを友だちや家族に伝えたい」「人間が魚をとる変わりに、魚たちが豊かに暮らせる海をつくっていきたい」「魚の種類に合わせて住みやすい場所を作ることが大切」…。子どもたちは仲間たちの意見を聞き、体験を通して自分自身が感じたこと学んだことを発表することで、更に学びを深めていた様子でした。
その後、3日間の集大成として、イベントオリジナル商品「前浜もんおにぎり」の開発に向けたワークショップに挑戦。商品の販売元である長谷井商店の協力のもと、おにぎりの具材に入れる食材を子どもたち自身が試食して決めました。その後、パッケージに印刷する海の生き物のイラストを作成。イベントで観察した魚を思い出しながら一生懸命に描き、24匹の個性豊かな魚のイラストが完成しました。商品は、今年10月に岡山県内の長谷井商店店頭等での発売を予定しています。
この3日間での様々な体験学習を通して、豊かな海とは何なのかを知り、豊かな海を守るためには正しく人の手を加えて海の生き物たちが住みやすい環境を整える「里海づくり」が大切だということを学んだ子どもたち。今回のイベントが、美しい海を未来にも残していくために、自分たち「人」に何ができるのかを自ら考え、今後の行動に繋がるきっかけとなることを期待しています。
参加した子ども・保護者からの声
<参加した子ども>
・初めて刺身を食べたけど、とれたての岡山の魚はこんなにおいしいんだと知りました。おいしい魚を守っていきたい。
・今回学んだ海のことを伝えたい。僕らは特に小中学生に伝える方法を考えていきたい。
・海の生態系ピラミッドをバランスよく大きくするために、植物プランクトンを増やしていくことが大事だとわかった。
・豊かな海はきれいなだけでなく、いろいろな海の生き物や植物がさみしくない海だということが分かった。
・人ができることをしっかりして、魚と人が協力できる海を目指していきたい。
<保護者>
・家に帰って子どもから海の話が止まらなくて、貴重な体験だったんだな、とうれしかったです。
<講師>
・人間だけでなく、海の生き物のことも考えることができるようになってうれしい。
・班ごとに違った視点でまとめができていた。どの班も「伝えたい」と言ってくれていたので、これからが楽しみです。
イベントレポートは実施事業者からの報告に基づき掲載しています
参加人数:24人