瀬戸内海に浮かぶ離島で子どもたちが海について学ぶミッションに挑戦 「かがわ離島レンジャー ミッション:未来の海を守れ!」を開催しました
一般社団法人 海と日本プロジェクトinかがわは、2024年7月29日(月)・30日(火)・31日(水)の3日間、香川県の小学5・6年生を対象に、丸亀市本島を舞台に瀬戸内海の環境改善の大切さや離島の漁師が実践している資源を守る取り組みを学ぶ体験学習イベント「かがわ離島レンジャー ミッション:未来の海を守れ!」を開催いたしました。
2024.08.23
一般社団法人 海と日本プロジェクトinかがわは、2024年7月29日(月)・30日(火)・31日(水)の3日間、香川県の小学5・6年生を対象に、丸亀市本島を舞台に瀬戸内海の環境改善の大切さや離島の漁師が実践している資源を守る取り組みを学ぶ体験学習イベント「かがわ離島レンジャー ミッション:未来の海を守れ!」を開催。選ばれた20名の子どもたちが離島の生活や海の環境、魚の問題などを自分たちの問題として捉え、立派な離島レンジャーを目指してミッションに挑戦しました。
このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。
開催概要
有人離島数が全国3位と多い香川県。離島の基幹産業である水産業が抱える問題や、瀬戸内海の環境変化、海のゆりかご藻場について学び、価値が低く流通されづらい未利用魚を使ったメニューの企画などを通じて、海と島、私たちの暮らしが繋がっていることを再認識してもらうために実施しました。
日程
2024年7月29日(月)・30日(火)・31日(水)
開催場所
丸亀市本島など(香川県丸亀市)
参加人数
小学5・6年生 20名
1日目 ミッション① 島の暮らしと私たちの関わりを調査せよ!
離島レンジャーを目指して集まった20名は、イベントの舞台となる本島へ向かって船に乗って移動。天候にも恵まれ凪のような海を進みます。瀬戸大橋を臨む本島泊港へ到着し、瀬戸内海に浮かぶ本島に上陸。学びの拠点となるのは築150年の建物をリノベーションした施設「本島湊圓」で、島の歴史や生活を感じることができます。3日間ともに学ぶ仲間と結団式を終え、かがわ離島レンジャーの「学びの書」が配布されます。この「学びの書」は子どもたちが学びやすいように構成されています。ミッションをクリアする毎にスタンプを押し、全てのミッションをクリアすることで離島レンジャー認定証になる仕組みで、3日間大切に活用することをお願いしました。
最初の活動は丸亀市本島について学びました。塩飽諸島の中心で海上交通の要として栄えた本島ですが、例にもれず島民人口は激減しており、また基幹産業である漁業従事者も減っています。実際に本島で生活をする若手漁師さんからの言葉を聞き、子どもたちは「こんなに短期間で減るのはどうして?」「魚が減っていて島では漁業などの仕事が少ないから住めなくなるの?」などの声があがり、同じ香川県でも少し海を隔てた離島の現状を知りショックを受けつつ、自分たちに何ができるのかを意識し始めました。
続いては、瀬戸内海の環境変化と生活が海に与える影響を学びました。講師は瀬戸内海の海水やプランクトンを研究している香川大学農学部 多田邦尚教授です。海洋の生態ピラミッドの図解を中心に、瀬戸内海で魚の漁獲量が減った背景として、度々赤潮が発生していた瀬戸内海も、生活排水の処理などによって海がきれいになって肥料成分が減り、食物連鎖を支える植物プランクトンが減ったことが一つの理由と説明がありました。ただ、海はそんなに単純ではなく、藻場や干潟の減少、海水温の上昇、魚の獲りすぎなどの影響も考えられ、これからも研究が必要と教えてもらいました。豊かな海を取り戻すのはそんなに簡単なことではないと知り「自分が研究者になって解明する!」「どうすればいいか日々考えて生活したい」など子どもたちは積極的に発言しました。
また、瀬戸内海を豊かにするために必要な藻場についても学びました。講師は藻場の人口造成に取り組む香川大学創造工学部 末永慶寛教授です。生き物の住処であり海洋生物にとって一番大切な藻場は、海底の砂の取りすぎなどの影響で激減しています。藻場の減少と同じような推移で漁獲高も減少しているため、豊かな海を取り戻すには藻場の再生が重要であることを教えてもらいました。教授が研究開発している人口構造物に海藻が生い茂り稚魚が泳いだりアオリイカが卵を産み付けたりしている動画を見て「すごい!」「藻場の大切さを実感した」と驚いていました。
午後からは海中で藻場や生き物観察です。水着に着替えてライフジャケットを身につけてアマモが生えている海中へ向かいます。海中では生き物の卵や貝が付着しているアマモを観察したり、網ですくって生き物を探して観察したりしました。午前中に学んだことを実際に見られたことで子どもたちに海の環境改善・藻場の大切さについて意識付けができました。
2日目 ミッション② 海の資源を守る取り組みを調査せよ!
2日目は減っている魚を守り、美味しく魚を食べるための取り組みについてです。
まずは本島の若手漁師が実践している海の資源を守る取り組みを学びました。講師は本島で漁師と水産業を営む大石一仁さんです。大石さんが実践している「海を休ませる養殖業」、「海を休ませるレストラン」、「海を休ませる鮮魚店」について教えてもらいました。乱獲で減ってしまったかもしれない天然魚を獲りすぎないために養殖を始めたという話を受けて、子どもたちは「魚の獲りすぎで魚が減ってしまっているのは悲しい」「漁師さんもこのような活動をしているのは驚いた」などの意見が出ました。海を休ませるレストランでは未利用魚を活用していて、初めて聞く未利用魚という言葉に子どもたちは興味津々でした。
次の学びは、魚食文化衰退の原因や魚が食卓に届くまでの流れです。卸値は安くても多くの中間企業が介入することで私たち一般消費者の手元に届くときには高い値段になってしまっていること、スーパーなどで扱う魚種は限られており、調理の面倒さなどが合わさって魚食文化の衰退につながっていることなど悲しい現実を知りました。参加していた子どもたちの多くは、釣り好きや魚好きが多く普段から魚を食することが多いようで、「魚の美味しさをもっと広めたい」「簡単な調理方法をSNSで発信したい」と熱い意見がでました。
続いて、市場価値の低い未利用魚について学びました。15種類の中から5種類の未利用魚を探すクイズを実施したり、実際に漁師が獲った未利用魚を見たりと楽しみながら未利用魚について認識を深めました。少し傷がついている、サイズが小さい、美味しいけれど処理が大変などの理由で未利用魚として流通しづらい魚があることを目の当たりにし「美味しいのにもったいない」「価値は十分にあるはず」「食べれば地産地消にもつながるのでは」など様々な意見が出ました。
そして、2日目最後は未利用魚を使った“海を休ませる”メニューづくりで、使用する未利用魚はチヌ(クロダイ)です。瀬戸内海で年間を通して獲れる魚ですが、特に香川では市場価値がほとんどなく出回らない魚です。子どもたちの感性でメニューを考え、販売価格やアピールポイントも合わせて発表します。讃岐うどんにチヌの身を練り込んだチヌうどん、チヌのから揚げ、チヌカツを使ったダブルチーヌバーガー、韓国料理からインスパイアされたチヌジャンケジャンなど色々なメニューが提案されました。果たしてどのメニューが採用されるのでしょうか。11月頃に丸亀市本島の海を休ませるレストラン等でお披露目予定です。
3日目 ミッション③ 海を守る仲間づくりに挑戦せよ!
最終日は子どもたちが2日間かけて調査した学び内容を知ってもらい、活動の輪を広げるための仲間づくりとして、海を休ませるメニューのPOPやリーフレット、新聞記事を作成しました。
POPには未利用魚のイラストや宿題としてご家族と一緒に考えてきたキャッチコピーを掲載します。「魚たちも困っているよ」「未利用魚私たちへのおくりもの」「すごいぞチヌ!鯛の仲間だ」「未利用魚の可能性を知らないだけ」「ストップ!フィッシュロス」など未利用魚についてのキャッチコピーが並びました。完成したPOPについて各々発表して意見交換し、未利用魚を通じて豊かな海の大切さ資源管理の難しさなどを再認識しました。
新聞記事づくりでは、新聞記者を講師に5W1Hを意識した文章づくりに挑戦しました。子どもたちが考えた新聞タイトルは「ギョギョっと新聞」、各々が原稿用紙にまとめた文章を新聞記者が取りまとめて、後日四国新聞に掲載されます。
3日間のミッションを全てクリアし、離島レンジャーに認定された子どもたち。学びの書に記載した離島レンジャー宣言を胸に、今後も豊かな未来の海を守るために学びを深めて活躍してくれることを願います。
参加した子ども・保護者からの声
(子どもの声)
・藻場の数が減っていることによる影響など、海に迫る危機を知ることができました。自分たちの手で海の未来を守っていくため、もっと海の今について知りたいと思いました。
・色んな人が、離島の抱える問題を解決しようと頑張っていることを知りました。
・未利用魚を実際に見てそれを使ったメニューを考えたり、藻場を実際に見て大切さを知ることができた
・本島のことも未利用魚のことも知らなかったので、たくさんのことを知れて勉強になりました。
・海に潜ったり、藻場について学んだり、未利用魚についても勉強できて楽しかった。
(保護者からの声)
・今回のイベントで、藻場や未利用魚といった聞き馴染みのない内容を子どもを通じて知ることができました。そこから、海の抱える問題の一部を垣間見ることができ、同時に、まだ自分自身が知らない海の問題点にも興味がわきました。
・海の近くを通ったり、TVで海が映ると子どもから参加した際の話題がで出るので、こちらも知識が深まったり、それに対してまた調べてみたりと興味を抱くきっかけとなりました。
・子どもと海や魚、海の生き物や環境について話すことが増えたため、意識して過ごしていくと思います。
イベントレポートは実施事業者からの報告に基づき掲載しています
参加人数:20人