海のレシピプロジェクト×クラブヒルサイド『海の読書会―Listen to the Voice of the Sea―第1回「抽斗のなかの海」 ゲスト:朝吹真理子(作家)』を開催しました!
「食」と「ものがたり」を通して海を伝えるウェブメディア「海のレシピプロジェクト」を運営する海のレシピプロジェクト実行委員会は、6月10日(金)に東京・代官山のクラブヒルサイドサロンにて、作家の朝吹真理子さんをお迎えし、シリーズイベント第1回『海の読書会―Listen to the Voice of the Sea』開催しました。
2022.06.24
「食」と「ものがたり」を通して海を伝えるウェブメディア「海のレシピプロジェクト」を運営する海のレシピプロジェクト実行委員会は、多様なバックグラウンドをもつゲストをお迎えし、海にまつわる本、映画、音楽、アートなどをご紹介いただきながら、ご自身の海に関わる思いや活動をお話しいただくシリーズイベント『海の読書会―Listen to the Voice of the Sea』をスタート。第1回は、6月10日(金)に東京・代官山のクラブヒルサイドサロンにて、作家の朝吹真理子さんをお迎えし開催しました。
今回の企画は、地域・世代・ジャンルを越えた人々をつなぐ「アーバンヴィレッジ代官山」のプラットフォームであるクラブヒルサイドとコラボレーションしたイベントです。
また本イベントは、次世代へ海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。
日時 | 2022年6月10日(金) 19:00 ~ 20:30 |
開催場所 | クラブヒルサイドサロン+オンライン 渋谷区猿楽町30-2 ヒルサイドテラスアネックスB棟 2F |
概要 | 主催:クラブヒルサイド、海のレシピプロジェクト実行委員会 参加者:会場22名 オンライン44名 |
プログラム | [ゲスト] 朝吹真理子(作家) [取り上げた本] 『海をあげる』上間陽子著 (筑摩書房) 『西脇順三郎詩集』 那珂太郎編 (岩波文庫) [プログラム] ■ 主催者挨拶(クラブヒルサイド 前田礼氏)、登壇者ご紹介 ■ 海のレシピについてご紹介 ■ 朝吹さんの海に纏わるお話 ・著書『抽斗のなかの海』について ・参加者の皆さんの海の思い出について ■ 『海をあげる』について ■ 『西脇順三郎詩集』について ・朝吹さんによる朗読 ■質疑応答 ■記念撮影 |
「なにかを書くときは、果てしない海にむかって、壜(びん)を投げるような気持ちでいる」とエッセイ集『抽斗のなかの海』に書いた朝吹さん。本を読むことは、作者が海にそっと投げ入れた壜を静かに受け取ることかもしれません。今回の読書会では、朝吹さんに上間陽子著『海をあげる』・那珂太郎編 『西脇順三郎詩集』を取り上げていただき、朝吹さんが語る言葉を介して、さまざまな海の声に耳を澄ます場を作っていただきました。
登壇者
作家 朝吹真理子さん
海のレシピプロジェクト ディレクター 青木佑子
司会・クラブヒルサイド 前田礼
朝吹さんの海に纏わるお話・著書『抽斗のなかの海』について
冒頭は、朝吹さんにとっての「海」について、また朝吹さんの著書『抽斗のなかの海』についてお話いただきました。
幼少期から毎年1度は沖縄を訪れていたという朝吹さんですが、海の沖に泳ぎに出た際に戻れなかった記憶から「海はとっても好き、だけど同時に畏怖の思いもある」と冒頭で語りました。「海はコックリとして中にたくさんの生き物がいると思うとスープのよう」との表現を交えながら、海の生物タコの神秘性について話が及ぶと著書で書かれたたこ焼きの紹介に展開し、さらに、美しい装丁デザインやタイトルなどの意味、背景について話しました。「抽斗の中に広い海が広がって、思いを描き投げておくと、いつかどこかについてしまうのではないかという気持ちをもっている。信号機を掲げて、偶然見つかることを信じている」との言葉に海のレシピ・ディレクターの青木は「海を通じて見えない誰かとつながっている感覚が広がった」と話しました。
次に、海に関しての音楽や町との記憶に触れ、幼少期から現在に至るまで日本各地の海で感じとった海との思い出をあげ、「自分が泥になったような感覚」「体がどんどん湿って塩漬けになるような感覚」「プチプチという、生き物が生きているような安心感ある賑やかな音」など、朝吹さんの言葉で語られる海への敬意と鮮やかな記憶の数々が印象的でした。
その後、会場の皆さんから寄せられた「海の思い出」が紹介され、各々の記憶を共有しました。
青い糸を受け取ったような気持ちになった、大事な一冊。上間陽子著『海をあげる』
後半は、朝吹さんが取り上げた2冊の本をご紹介。
1冊目は、海に纏わる本として選定された上間陽子著『海をあげる』。「なんとも、なんともなんとも美しい文章が素晴らしい」と語り、水質汚染に関する社会的な出来事はいずれ必ず日常に巡ってくることを感じた、大切なものを受け取ったような感覚になった本だったと紹介しました。
朝吹さんがインスタグラムで投稿した「青い糸を受け取った気持ちです。」という感想を受け、筑摩書房では「青い糸」付きの栞を書店で展開し、新しい読者へとつなげていく取り組みが始動していることに触れ、「投壜通信性を感じて嬉しい」とのコメントもありました。
人には伝える言葉を探しにいく海がある。
1つ1つの言葉が美しい『西脇順三郎詩集』
2冊目は、西脇順三郎の詩が好きという理由から選ばれた『西脇順三郎詩集』。
「人に誰かに伝えたいことを伝えるときに、ざぶんと海に潜って、あっているものを探って伝えていく感覚があるのでは」それぞれの体に言葉の海があるような感覚があると思っていて、詩は1つ1つの言葉や1行1行が屹立していて結晶になっているようなものだと考えている、と、本詩集の魅力について語りました。
最後は「失われた時」の一部を朝吹さんが朗読。文章を書くときも音読しながら、音のリズムを大切にしながら文章を書いているという朝吹さんの声に、新たな景色が広がったような会場の様子でした。
朝吹さんの海に纏わる思い出やエピソードと2冊の本の紹介を通じ、美しい言葉と表現に、各々の中に新たな海のイメージが広がるような時間となりました。
参加者からの声(終了後アンケートより)
・人はみんな身体の中に海とつながっていると仰られていたのが印象的で、朝吹さんの言葉はまさに朝吹さんの世界観を纏っているように思った。
・すてきな機会をありがとうございました。好きな食べ物が「湯気」すてきです。
・執筆されている時も音読しながら、というお話に納得しました。朝吹さんの本からも音が聞こえます。それから匂いも。
・朗読がすてきでした。
・エピソード一つ一つが感覚的に体でイメージできてとてもうれしかったです。実際の海だけではなくて頭の中で広がっていき、つくられていく海があるなあと思って聴いていました。(恐怖感や肌の気持ち悪い感覚なども)
・朝吹さんの「きことわ」、上間さんの作品を今回初めて拝読しました。やわらかいけれども鋭く研ぎ澄まされた言葉選びで直接語りかけてくるような文が似ているな、という印象を抱いたのですが、その朝吹さんが上間さんの文について「なんとも、なん とも、なんとも」と3度繰り返して「美しい文章」と形容されていたのが印象的でした。
・いろんな海のイメージを体感できて体がほぐれたように思います。予想外の展開でした。とても楽しかったです。ありがとうございました。
・興味のなかった海に対する解像度が強まった。
・海の多様性を思い出した。
イベントレポートは実施事業者からの報告に基づき掲載しています