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海を照らして船を導く存在から、地域を照らして人を導く存在へ【海と灯台のまち会議】を開催しました!

一般社団法人 海洋文化創造フォーラムは2023年6月7日(水)、時事通信ホール(東京都)にて、灯台を観光振興や教育、地域活性化に利活用したい自治体・企業・団体とともに「海と灯台のまち会議」を開催いたしました。

2023.06.12

一般社団法人 海洋文化創造フォーラムは2023年6月7日(水)、時事通信ホール(東京都)にて、灯台を観光振興や教育、地域活性化に利活用したい自治体・企業・団体とともに「海と灯台のまち会議」を開催いたしました。
本会議は、灯台を中心に地域の海の記憶を掘り起こし、地域と地域、異分野と異業種、日本と世界をつなぎ、新たな海洋体験を創造していく日本財団「海と灯台プロジェクト」の一環です。

開催概要
灯台の利活用に関心を持つ地方自治体、企業などの担当者約100名が集まり、灯台に関する調査研究や実証実験の取り組み事例やアイディアに関する情報共有と、「灯台と共にある地域の未来」に関する意見交換を行いました。
日程
2023年6月7日(水)13:00~16:15
開催場所
時事通信ホール(東京都中央区銀座5丁目15-8)

灯台の個性を活かし、「地域における資産」として前向きな活用を

会議の冒頭、長年にわたって灯台の利活用に携わってきた日本財団の海野光行常務理事が登壇し、「海と灯台プロジェクト」発足の経緯を説明しました。「仕事で海外を訪ねると、ほぼ100%の確率で現地の人々が『まず見せたいものがある』とその土地の灯台へ連れていってくれる」とのエピソードを明かし、海外の人々が地域の灯台を大切にし、誇りに思っていることを紹介。自然景観と歴史を体感できるエリアやホテルとして活用している海外の事例にも触れ、「日本の灯台の魅力とその活用にも大きな可能性がある」と提言しました。

また、日本財団がこれまで全国に16基ある「のぼれる灯台」を支援してきたほか、2022年度からは灯台を「地域における資産」へ昇華させるための取り組みを資金面とアドバイスで援助する助成制度「新たな灯台利活用モデル事業」を始めたことも紹介。「ぜひご一緒に灯台の良さを引き出し、灯台とともにある地域の未来を創造していきましょう」と呼び掛けました。

灯台利活用に取り組む全国5地域の事例発表と、2つのアイディアを発表

続いて、灯台の利活用に取り組む全国5地域の関係者が登壇し、その地域ならではの取り組みについて事例発表を行いました。北海道函館市の大泉潤市長は、「灯台を生かした観光の魅力づくり」をテーマに、昨年度、恵山岬灯台活用協議会が行った調査研究事業について紹介しました。

【要約】
恵山岬灯台はこれまで知る人ぞ知る存在でしたが、官民で構成する恵山岬灯台活用協議会が昨年夏から調査研究に取り組み、灯台を軸に、​函館東部エリアの自然・歴史を語る​新たなストーリー​を発掘しました。恵山岬灯台は、「世界と日本、北海道と本州をつなぐ海の守り神」です。同協議会はこの調査結果をふまえて昨年度、ガイドツアーの実施やドライブコースの開発、フォトコンテスト、灯台の下でサウナを楽しみ、灯台のテラスでととのうイベント「灯台サウナ」などの取り組みを行い、テレビや新聞で大きな話題になりました。特に「灯台サウナ」は、海を通じて外国から人・物・技術がもたらされ、それによって街が発展した歴史や、海の難所で船を見守る灯台の役割について語れる良いイベントです。さらに、ここでしかできない非日常体験であることが売りになります。

一般社団法人美浜まちラボの林達之さんは、「灯台×地域振興」をテーマに、愛知県美浜町の野間埼灯台の活用について紹介しました。

【要約】
美浜まちラボは、野間埼灯台を登れる灯台にしようと、2015年から「野間灯台登れる化プロジェクト」を推進してきました。体験イベント、グッズづくり、クラウドファンディングなどさまざまな取り組みを行い、そのかいあって2022年2月に​海上保安庁から「航路標識協力団体」に指定され​、同年4月から美浜まちラボに​よる灯台の一般公開を始めました。現在は毎月2回ほどのペースで一般公開をしています。2022年度の「新たな灯台利活用モデル事業」の募集開始にあたり、名古屋海上保安部や美浜町役場、その他企業から声を掛けてもらい、コンソーシアムを組んで助成を受けることができました。その後もいろんな人を巻き込み、会議を重ね、アイディアを出し合って課題を探り、野間埼灯台を紹介する漫画の制作、サイクルツーリズム企画、ウエディングフォト撮影などさまざまな取り組みを実施しました。それらを通じて、「灯台は船だけでなく、人を導く機能を持ちはじめている」と感じています。「人を導き、地元の未来を照らす」。灯台をそんなシンボルにしていけたらと思っています。​

一般社団法人北海道江差観光みらい機構の宮崎拓馬さんは、北海道江差町の鴎島(かもめじま)灯台の活用について紹介しました。

【要約】
江差町は人口7000人に満たない港町ですが、歴史・文化・伝統・芸能に恵まれ、道内で初めて日本遺産に認定された、人口ではカバーしきれないほどコンテンツが豊富な町です。当法人は2021年度から、灯台横に設置したグランピングテント等での宿泊と海洋体験を組み合わせたイベント「かもめ島マリンピング」を実施しています。自然公園内の野営場なのでハード面で限界があり、お湯は出ないしシャワーもありません。島への交通手段は徒歩のみで、約200段の階段を登らなければなりません。しかし私たちは、「デメリットは体験コンテンツに昇華できる」「アナログサービス・ホスピタリティで補完できる」と、考え方を180度変えることにしました。観光のあり方が変わり、自分でしか、今この場所でしか体験できないことをしたい、と考える人が増えているからです。お客さんは200段の階段を笑顔で上り、スタッフに「あなたたちと出会えたことが旅の一番の成果になりました」と言ってくれます。多数派に受け入れてもらおうと考えずとも、自分たちが打ち出したいことがしっかり定まっていれば、お客さんは理解してくれます。

宮崎さんは結びに、「かもめ島マリンピング」の取り組みが「若年層の海洋環境への理解増進と地域の魅力発信に大きく寄与した」として、日本港湾協会から5月24日付で表彰を受けたことを発表。会場から大きな拍手が送られました。

このほか、鳥取県立青谷高等学校卒業生の井口日翔さんが高校の授業で灯台を通じて地域を学び、その内容を発信するマンガ作りに取り組んだ経験を語ったほか、OUTDOOR TRIP株式会社の南畑義明さんが、潮岬灯台(和歌山県串本町)の旧官舎のホテル化計画について、その意義や調査研究内容について述べました。さらに、異業種・異分野からの灯台利活用に関するアイディアとして、津軽海峡フェリー株式会社の船橋由美さんが「フェリーを使った夜の灯台体験プラン」を、株式会社ストーリーノートの山田秀人さんが「灯台のご当地カード化」に関して発表しました。

事例発表後、海野常務から「バラエティに富んだ発表で、皆さんに灯台利活用の幅の広さを実感いただけたのでは。灯台の個性や環境、まちの状況ををきちんと把握し、仲間を作りながら灯台とまちの未来を創ることが大切。今後も、さらに一歩踏み込んだ灯台利活用の検討・推進への取り組みをお願いできれば」と総評と激励がありました。

※事例発表のさらに詳しい内容は、「海と灯台プロジェクト」サイトに後日掲載予定です。

灯台を「地域遺産」として考えると、新たな可能性が見えてくる

第二部では、都市・地域計画・まちづくりを専門とする北海商科大学商学部観光産業学科の池ノ上真一教授が「灯台とヘリテージツーリズム」をテーマに講演。「灯台はかつては船のため(だけ)のものだったが、今は人が集まる施設になりつつある」と話し、灯台を地域遺産として見つめ直すことで新たな可能性が広がることを示唆しました。

※講演のさらに詳しい内容は、「海と灯台プロジェクト」サイトに後日掲載予定です。

続いて事務局の松田から、今年度の「海と灯台プロジェクト 新たな灯台利活用モデル事業」の公募について参加者にご案内しました。この事業は、灯台の調査や施設整備などに取り組む団体に対し、資金および企画運営の助言等のサポートを行うものです。灯台の利活用に関する取り組みにより、灯台の存在価値を高め、灯台を起点とする海洋文化を次世代へと継承していくことを目的にしています。

公募に関する詳しい情報は、下記リンク先をご覧ください。

新たな灯台利活用モデル事業 公募情報 https://toudai.uminohi.jp/notification/post-6730/

 

イベントレポートは実施事業者からの報告に基づき掲載しています