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灯台の新たな価値創造と地域の伝統文化を次世代へつなぐミッション型キャンプイベント『灯台デイキャンプ×のりづくり』開催

さど探究プロジェクトは、2024年2月24日(土)に佐渡島沢崎集落の沢崎鼻灯台において、キャンプを行いながら同地域の名産品である「岩のり」を使った板のりづくりを集落の方々と実施し、集落の食文化に触れることをテーマにした「灯台デイキャンプ×のりづくり」を初開催しました。

2024.03.21

さど探究プロジェクト

さど探究プロジェクト(主幹:アクトインディ株式会社)は、2024年2月24日(土)に佐渡島沢崎集落の沢崎鼻灯台において、キャンプを行いながら同地域の名産品である「岩のり」を使った板のりづくりを集落の方々と実施し、集落の食文化に触れることをテーマにした「灯台デイキャンプ×のりづくり」を初開催しました。

このイベントは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環として、灯台を中心に地域の海の記憶を掘り起こし、地域と地域、異分野と異業種、⽇本と世界をつなぎ、新たな海洋体験を創造していく「海と灯台プロジェクト」の助成を受けて実施したものです。

イベント概要

イベント名

「灯台デイキャンプ×のりづくり」

開催概要

沢崎鼻灯台において、絶景での灯台キャンプを堪能するとともに集落の名産品である「岩のり」を使った板のりづくりを集落の方々と実施し、集落の食文化に触れることをテーマにしたミッション型のキャンプイベントです。

日程

2024年2月24日(土)

開催場所

〒952-0621 新潟県佐渡市沢崎 沢崎鼻灯台

〒952-0621 新潟県佐渡市沢崎120 沢崎集落開発センター

参加人数

総勢10名(佐渡島内8名、佐渡島外2名)

主催・協力

主催:さど探究プロジェクト(主幹:アクトインディ株式会社)/沢崎集落

共催:日本財団 海と日本プロジェクト

協力:佐渡市役所 小木行政サービスセンター/サンフロンティア佐渡株式会社/地域おこし協力隊/新潟海上保安部

後援:(一社)佐渡観光交流機構

灯台を起点に沢崎集落の文化、地形に触れる

沢崎鼻灯台に集まり、いよいよイベントスタート
朝10:00、灯台下に総勢10名の参加者が集まり、いよいよミッション型灯台キャンプがスタート。
まずはテントやイスを設営し、今回のイベントを進行する集落の方との挨拶を行いました。
沢崎鼻灯台のある沢崎は、佐渡島の西端。佐渡で最も日の入りが美しいといわれる風光明媚な地です。

沢崎鼻灯台とは
佐渡市西端に位置し、海底火山の噴火で形成された枕状溶岩が広がる独特の地質・地形から成る絶景の地に立つ灯台。初点灯は1928(昭和3)年。24.2mと佐渡一の高さを誇る八角形の白い塔で、与謝野晶子が詠んだ歌にも残る歴史的建造物です。古くから成る直江津・小木航路において、小木へと向かう船が、第一目標として視認する標識として重要な役割を果たしていました。

ミッション1 沢崎集落の地形・文化について知る

まずは、沢崎集落の方々に集落内を案内してもらいます。
沢崎鼻灯台から少し歩くと、解説ポイント一つ目の海岸を一望できる展望台に到着します。灯台が立つエリア周辺は、波に削られてできた広くて平らな隆起波食台が広がっています。この地形が海岸にできた結果、沢崎海岸は岩のりが生える良い海苔場となりました。

集落ガイド(沢崎海岸)
集落ガイド(沢崎海岸)

海岸沿いから集落へ移動すると、解説ポイント二つ目の急勾配の坂が現れます。
沢崎集落は、日本海の荒波と繰り返す地震によって階段のような地形が作られたため、集落には急な坂と平らな大地が広がっています。山側の平らな土地は住宅や畑に利用され、海に近い平らな大地では岩のりが採れるそうです。

集落ガイド(集落の坂)
集落ガイド(集落の坂)

集落内に入ると、解説ポイント三つ目の薬師寺に到着。
薬師寺は集落の名産品である岩のりと大きく関係があります。沢崎では、時間を決めて集落全員で岩のり採りを行います。薬師寺には鐘があり、以前は当番の人が海の状況を確認し、岩のり採りを行うことを集落全体に知らせるために鳴らしていたそうです。
また、薬師寺の横には児玉裕蔵の像があります。大正3年、当時郡の水産技師であった児玉氏が沢崎を訪れ、岩のりに関する指導を集落の方々へ行ったところ、岩のりの生産量などが飛躍的に上がりました。
この功績をたたえ、児玉氏の子孫が背後に石碑を建てたそうです。

集落ガイド(薬師寺、児玉氏の像)
集落ガイド(薬師寺、児玉氏の像)

ミッション2 板のりづくりを体験

集落センターに集合した参加者は、まず集落の方から板のりづくりに使う道具や手順の説明と、岩のりと集落の関わりについて聞きました。岩のりは沢崎集落にとって大きな収入源であり、昔は子供も学校を遅刻したり休んだりして家族総出で岩のり採りを行っていたそうです。当時は板のり1枚60円ほどと沢崎の岩のりはブランド化していたそうです。

手順を学んだら、いざ実践!板のりをつくることを、沢崎ではのりを「つける」といいます。
まずは、岩のりを包丁でよく刻み、のりを細かくします。
包丁で強くたたいても壊れないように、「のりたたき台」と呼ばれるまな板には丈夫なケヤキの木を使用しています。また、その日使う岩のりの状態によって刻む細かさを変えているそうです。

さらに不純物を取り除くため、専用の箱に水と岩のりを流します。
すると、岩のりより重い砂利などは箱の下に沈むため岩のりと砂利を分けることができるそうです。

次に水を張った桶に「のり枠」で挟んだ「のりず」を沈め、砂利を取り除いた岩のりを入れます。
「のりず」はカヤを乾燥させたもので、昔は各家庭で手作りしていたそうです。現在は、作られておらず昔から使っていたものを大切に使っているそうです!
「のりず」に乗せた岩のりを均等な厚さになるように手でならします。
今回は1枚に対する岩のりの量をカップに入れていましたが、集落の方は感覚で岩のりの量が分かるそうです!参加者も目分量で岩のりの量を計ることに挑戦していました。

岩のりが均等に広がったら、水から引き上げて「のり枠」をそっと外します。
「のりず」を斜めに立てかけて水を切ったら、のりをつける作業は完成です!
その後、つけたのりは3日間かけて乾燥させます。
ちなみに今回、参加者がつけたのりは後日、参加者の元へ届けられました!

今回は、特別に乾燥したのりを板のりとして完成させる作業まで体験します。
まず、乾いたのりを「のりず」からはがします。一気に剥がしてしまうとのりが破れてしまうので参加者たちは真剣な様子で丁寧にのりを剝がしていました!
剝がしたのりは、めんぼうのような道具でゴロゴロします。とても小さな砂やごみを潰してのりの食感が悪くならないようにするために行うそうです。

最後に小さなほうきを使い、のりの表面についている小さなごみや砂を落としたら、板のりが完成!
出来上がったばかりの板のりをストーブで炙って試食しました。
参加者は「のりの良い香りがする!」「いつも食べているのりより美味しい」など実際に自分でのりづくりを体験したからこそ感じる美味しさに感動している様子でした。

昼食には、岩のりをふんだんに使用したおにぎりランチを集落の方と参加者でいただきました!
板のりとしてだけではなく、様々な料理で岩のりを楽しむことができました。

ミッション3 沢崎集落で行っている漁について知る

板のりづくり体験が終わったら、集落の港へ移動!
沢崎集落で行われている「磯ねぎ漁」について集落の方から教えていただきました。
「磯ねぎ漁」は、たらい舟の上からガラスの箱で磯まわりを覗き、ヤスなどの道具で刺したり、突いたりして海藻や魚介などを採取する漁法です。
たらい舟は「はんぎり」とも呼ばれ、水によく浮き、細かい操作が櫂(かい)一本でできます。
大切に使用すれば10~15年は使用でき、昭和30年代頃までは、嫁入り道具だったそうです。
今回は、実際にたらい舟での漁の様子を見学させていただきました。
不安定なたらい舟の上で長い銛(もり)を扱う姿に参加者も驚いた様子でした!
漁に使う長い銛もサザエ・魚・ワカメなど獲るものによって使い分けているそうです。

ミッション4 集落のシンボル沢崎鼻灯台を知る

集落で行われている漁について学んだ後は、沢崎鼻灯台へ移動。
灯台前では、集落の方から沢崎鼻灯台は佐渡島内で一番高いことや、江戸時代以前から北前船をはじめ日本海沖を通る多くの船の目印として重要な地であったからこそ建てられたのではないか、など灯台の建設理由や意義などの説明がされました。
また、今回は令和6年能登半島地震による影響で灯台に登って見学することができなかったのですが、参加者からは「また集落を訪れて灯台に登りたい」と再来に期待する声が多くあがりました。

「灯台デイキャンプ×のりづくり」を終えて

ミッション型灯台キャンプイベントの第二弾となった「灯台デイキャンプ×のりづくり」を終え、集落の貴重な文化や灯台、自然の魅力を再発見し、地域住民と参加者の間で有意義な交流が生まれました。
これを一過性ではなく継続的な取組みとして発展していくことを目指し、今後も「たらい舟漁」や「沢崎まつり」、「カンゾウの花」、「サザエ漁」など集落の文化・自然を活かした季節ごとに異なるテーマの体験プログラムを開発し、参加者が地域の魅力をさらに深く理解し集落の人々との交流を深め、第二のふるさとになる場所を提供します。さらに、集落住民と自治体や地域の事業者との連携を強化し、共同で実現していくことで地域コミュニティの結束を強め、持続可能な集落づくりに寄与します。
このような取組みが同様の課題をもつ地域の良き先例となることが、灯台・地域文化の灯を次世代につなぐ価値あるチャレンジになるのではないかと考えます。

 

イベントレポートは実施事業者からの報告に基づき掲載しています

参加人数:10人