ヨコハマ海洋市民大学2025年度講座第6回「知られざる港インフラの舞台裏~消波ブロックの役割と進化を学ぼう」を開催しました!
ヨコハマ海洋市民大学実行委員会は、令和7年11月6日(木)に横浜の海が抱える社会課題の解決に挑戦する市民を養成する、ヨコハマ海洋市民大学2025年度第6回講座「知られざる港インフラの舞台裏~消波ブロックの役割と進化を学ぼう」を開催いたしました。このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。
2025.11.28

イベント概要
・ヨコハマ海洋市民大学実行委員会は「横浜の海が抱える社会課題を自ら考え、解決できる市民(海族・うみぞく)」を育成するヨコハマ海洋市民大学2025年度講座の第6回目を開催した(年10回開催)。
・開催日時:令和7年11月6日(木)19:30~
・開催場所:象の鼻テラス(横浜市中区)
・参加人数:41名(会場受講生19、オンライン受講生9、講師1、ゲスト・スタッフ5、実行委員7)
・共 催:海と日本プロジェクト
・後 援:横浜市・海洋都市横浜うみ協議会
講師紹介と活動概要
今回の講師は株式会社不動テトラブロック環境事業本部技術部長の竹内聖一さんにお越しいただきました。テトラポッドという名称はこの不動テトラさんの登録商標です。陸上土木・地質改良の「旧不動建設」と海洋土木・テトラポッド事業の「旧テトラ」がひとつとなり現在の「不動テトラ」になっています。講師はとても多趣味な方でした。テニス、趣味と実益を兼ねたダイビング、ゴーカートやバイク(自動二輪)、そしてヨコハマつながりで中国拳法の詠春拳(横浜中華街にお住まいだった祖父に師事していたとか!)をされていたり、そして音楽はヨコハマ出身の柳ジョージさんがお好きだとのことでした。
株式会社不動テトラHPはこちらから https://www.fudotetra.co.jp
はじめに
自己紹介・会社紹介の流れから会社が取り組まれている土木・地質改良・ブロックという3つの事業とそれを支える研究所の紹介、そして消波ブロック(テトラポッド)がどのようなところで必要とされているのか、と言う紹介がありました。消波ブロックと言うと海の波だけを想像してしまいますが、実際には河川でも使われており、波の力を弱めると言うよりも幅広く水の力を弱め、護岸や堤防などを守るものだと理解できました。またテトラポッドの形以外に様々な消波ブロック関連の製品がありました。そしてその消波ブロックの基礎として必要とされる袋詰めの捨て石なども紹介されました。

講師 竹内さん

講座の様子
この後youtubeチャンネルの動画が紹介され、テトラポッドの基礎知識が分かりやすく解説されました。
動画リンク https://youtu.be/p2MYWJ5zlyY?si=VIep3xL5Ii30U0zi
・そもそも消波ブロックはなんのためにある?(目的や作り方)
・消波ブロックを設置すると見事に波が弱められる実験
※波を弱めるのに大切なのは、積まれた消波ブロックの隙間にあり!
・テトラポッドの名前の由来ほか
・フランスで開発された、ギリシャ語で4つの脚と言う意味
・消波ブロック初期の形状から現在への進化
・テトラポッドは18種類、ほかに様々な形状や名称
・消波ブロックの作り方(型枠紹介など)
・消波ブロックの値段や製造場所はどこ?
・防災以外の機能について(講座後半で触れています)
消波ブロックの歴史
テトラポッドは1949年にフランスのグルノーブルにあるネールピック社で発明され、1950年にはモロッコのカサブランカで初めて使用されました。また日本では1955年に岩手県の八木港で独自のデザイン消波ブロックがはじめて使用されました。その後ネールピック社の論文をもとに日本国内でも同様の製品が製造されたのですが、双方の見解の相違から国際的な特許問題になりました。その後の交渉の結果、日本テトラポッドと言う会社が設立され解決したことも紹介されました。
さらにテトラポッドが登録商標であり、一般名称化を防ぐために消波ブロックと言ってもらうようにしているというお話もありました※。この登録商標の発展形として現在は立体商標を取得しているとの事でした。
※あまりにも有名で一般的な名前になってしまうと登録商標としての権利を失ってしまうそうです!

消波ブロックの歴史(1)

消波ブロックの歴史(2)
消波ブロックの役割や特性・効果
ここでは消波ブロックが波のエネルギーを減衰させる機能をもっていること、波の反射も吸収し港内の波も鎮めること、さらには海岸の侵食を防ぐこと、そして生物の生息場所を提供していることなどが説明されました。講師は「フランスでデザインされたからか、とても形が美しいです」とテトラポッドにベタ惚れのようすです。またこの形状は重心が低く、設置した時の安定性にすぐれ、頑丈であることも特性として挙げられています。そして設置したときの隙間がきちんと作られると水流(波)の方向をその隙間でバラバラにし勢いを弱める機能が高いと説明します。この隙間については「空隙率(くうげきりつ)」と言う言葉で説明されていました。
また海や川に面した場所での施設を守る役目や港や漁港、養殖場を守る役目、海岸の侵食を防ぐだけではなく砂を貯める役割もあり砂浜回復の役割もあるそうです。
消波ブロックの設計と製造
講師は、テトラポッドの設計方法についてハドソン式という計算式を用いて波高や勾配からブロックの必要重量を算出すると語りました。「そんなに難しくない式ですが」と仰っていましたが、筆者には???でした。テトラポッドの標準勾配は1対1.333で、空隙率は50%であるとのことなのですが、なかなかピンと来ず、とりあえずは積み上げたときにその表面の半分が隙間で構成されており、水の勢いを弱めると言うことなのだろうと言う理解をしました。また設置面積や設置断面図から消波ブロックの設置個数も事前に計算できるようです。

設計のための計算式(ハドソン式)

数量算出のための計算式
またその製造方法については、型枠を組み立て、コンクリートを流し込み、バイブレーターで締め固めた後、養生して脱型するプロセスが紹介されました。据え付けは陸上クレーンや海上クレーンで行われ、最近ではICT技術を活用して3Dモデリングやリアルタイム水中可視化、AR技術などが使われていることも説明されました。

海上からのクレーンによる設置

ICT・AR技術を活用した据え付け法
消波ブロックの実際の使用例
続いて2019年の台風15号で被害を受けた横浜市金沢区の福浦・幸浦での復旧工事の例が紹介されました。4トン型の消波ブロックを1万個以上設置し、護岸のかさ上げと波の軽減を図ったそうです。また消波ブロックの意外な使われ方として、陸上でのモニュメントとしての利用や、海外での戦車避けとしての防衛施設における利用例も紹介されました。
さらに、南アフリカのトーゴやマダガスカルなど海外でのODA事業での消波ブロック活用事例も紹介されました。

横浜での事例(1)

横浜での事例(2)
環境への貢献とブルーカーボン
「ここからが今回強くお伝えしたいところです。」と講師が強調されお話を始められたのが消波ブロック事業による環境保全への貢献事例でした。海洋生態系に取り込まれた炭素を指すブルーカーボンの概念が2009年に国連環境計画の報告書で初めて言及され、海藻、海草、干潟、マングローブなどがCO2を固定する役割を果たしていることが紹介されました。地球温暖化による海水温上昇が海藻の生育に悪影響を与える中、消波ブロックの形状を工夫して海藻が付きやすくしたり、イオンカルチャーという栄養素を供給する素材を取り付けたりする取り組みが行われていることが説明されました。この海藻がつきやすくなる消波ブロックの形状を「稜線」と表現されていました。その稜線を発展させた形がテトラネオというカクカクしたフォルムの消波ブロックです。さらにはCO2削減のための環境配慮型コンクリートの開発についても紹介され、知られざる港インフラの舞台裏を支える消波ブロックとその他関連製品や研究のお話で講座が締めくくられました。

グレーインフラが生み出すブルーカーボン

炭素固定のための調査研究

本牧ふ頭での環境貢献取組

低炭素なコンクリート製造の研究
参加者の声
・知らなかったことが沢山あり勉強になった
・はやくも設置方法にICT・AR技術が取り入れられていることに驚いた
・消波ブロック関連事業で環境貢献を進めるという強い意志を感じた
<団体概要>
団体名称:ヨコハマ海洋市民大学実行委員会
URL:https://yokohamakaiyouniv.wixsite.com/kaiyo/
活動内容:横浜市民が横浜の海が抱える社会課題を自ら考え解決に向けて行動できる海族(うみぞく)になるための養成講座を年10回(コロナ禍以前は年20回)開催している。座学だけではなく実際に海や海を学べる野外講座も開催している。

日本財団「海と日本プロジェクト」
さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。
https://uminohi.jp/
参加人数:41人