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ヨコハマ海洋市民大学2025年度講座第1回 「知ることから始まる海と人との共存社会2025Ver.」を開催しました!

ヨコハマ海洋市民大学実行委員会は、令和7年6月5日(木)に横浜の海が抱える社会課題の解決に挑戦する市民を養成する、ヨコハマ海洋市民大学2025年度第1回講座「海洋プラスチック問題から考える循環型社会」を開催いたしました。このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。

2025.07.29

ヨコハマ海洋市民大学2025年度講座第1回 「知ることから始まる海と人との共存社会2025Ver.」を開催しました!

イベント概要

・ヨコハマ海洋市民大学実行委員会は「横浜の海が抱える社会課題を自ら考え、解決できる市民(海族・うみぞく)」を育成するヨコハマ海洋市民大学2025年度講座の第1回目を開催した(年10回開催)。
・開催日時:令和7年6月5日(木)19:30~
・開催場所:象の鼻テラス(横浜市中区)
・参加人数:42名(会場受講生22、オンライン受講生11、講師1、ゲスト・スタッフ1、実行委員7)
・共  催:海と日本プロジェクト
・後  援:横浜市・海洋都市横浜うみ協議会

自己紹介と活動概要

講師の水井氏は、海洋生物学の博士としての専門的知見を背景に、海洋教育と海と持続可能な地域づくりの現場で活躍する実践者です。2011年には横浜国立大学発のソーシャルベンチャーとして特定非営利活動法人ディスカバーブルーを立ち上げ、以来「いつまでもこの海と暮らしていくために」をテーマに、海の自然や生態系と触れ合い海の価値を実感できるプログラムを展開しています。活動は神奈川県真鶴町などの沿岸地域を中心に、ビーチコーミング、磯の生物観察など、実際に海とふれあうプログラムが特徴です。水井氏は、日本の学校教育では学習指導要領に海に関する内容がほとんどなく、多くの子どもたちが「海を知らない」まま成長していると指摘します。そのため、海をただの遠い存在ではなく、自分の生活とつながる身近なものとして理解してもらうことが今後の社会にとって重要であると訴えています。水井氏は、こうした背景を踏まえ、「海の学び」の価値を社会や学校に伝える活動が急務であると考えています。
※特定非営利活動法人ディスカバーブルー ホームページ https://www.discoverblue.org/

海と海の生態系の基本

地球表面の約71%を覆う海は、生命の源とも言える存在です。なかでも日本は、黒潮と親潮という二つの大きな海流がぶつかる位置にあり、栄養豊富な寒流と温暖な海流が混ざり合うことで、豊かな生物層を育みます。海の生き物は生活スタイルによって大きく三つに分類され、自由に泳ぐ「遊泳生物」(魚、クジラなど)、海底に生息する「底生生物」(ヒトデ、カニ、ナマコなど)、そして水中を漂う「浮遊生物(プランクトン)」に分けられます。なかでも植物プランクトンは光合成を行って有機物を生産し、動物プランクトンがそれを食べ、それをまた小魚、さらに大型魚が捕食するというように、食物連鎖を支える存在です。なお、陸上の生態系では植物を生産者、それを食べる動物たちを消費者と呼びます。しかし、海の植物プランクトンは通常とても小さく硬いからに覆われているため、大型の動物はそれらを消化することができません。植物プランクトンを動物プランクトンが摂取し、それらが他の動物のエサとなるため、海の植物プランクトンは一次生産者、動物プランクトンは二次生産者と呼ばれています。動物プランクトンのカイアシ類は、体長1mm程度の微小生物でありながら、地球上でもっとも量が多い生物の一つとされ、海の栄養循環を担うキーストーン的存在です。また、アメフラシのように膨大な卵を産み、その多くが捕食されることで他の生物の命を支えるという、複雑に絡み合った生態系が構築されています。 こうした生態系は絶妙なバランスによって保たれており、一つの種が減少することで連鎖的に他の生物へも影響が及ぶことがあります。


水井講師

よく知っている魚などは海洋生物のほんの一部です

海の環境問題

今日の海は、かつてない規模で人間活動の影響を受けています。近年大きく取り上げられているのが海洋プラスチック問題です。陸上で暮らす私たちの生活からきちんと処理されずに出てしまったプラスチックは川を伝って海に流れ出てしまいます。プラスチックには様々な化学物質が添加されており、全海洋に溶け出してしまっていて、深海生物の体内からも検出されることがあります。また、海に流れ出してしまったプラスチックは紫外線による劣化や波などの物理的な衝撃で小さく砕けていきます。5mmより小さくなったものをマイクロプラスチックと言いますが、これらを動物プランクトンと間違えて様々な生物が食べてしまいます。食べてしまった生物はきちんと成長できなくなったり、死んでしまったりします。するとそれらをエサとする生物も数を減らし、海洋生態系全体で生物の減少が危惧されています。一方、地球温暖化の影響で海水温が上昇し、サンゴの白化現象が進行しています。高水温が続くとサンゴのなかに共生している植物プランクトンの一種である褐虫藻が抜けてしまい、真っ白になってしまいます。この状態になってしまうと、一部は復活することもあると考えられていますが、多くが死滅してしまいます。さらに、日本近海では「磯焼け」と呼ばれる海藻の消失現象も顕在化しており、ウニやアイゴといった草食性生物の過剰増加、温暖化、そして沿岸の貧栄養化が複合的に絡んでいます。特に高度な下水処理によって川から海への栄養供給が減ったことは皮肉にも生態系に負荷をかけている側面があり、「きれいすぎる水」が自然には必ずしも最善ではないことを示しています。 さらに、海洋酸性化の問題も見逃せません。大気中の二酸化炭素が海水に溶け込むことで、海のpHが低下し、貝やサンゴなど炭酸カルシウムで殻を作る生物、特にプランクトン幼生期など小さな時期に悪影響を与えています。養殖業などへの影響も危惧されています。


目の前の海で採集したプランクトン

海洋プラスチックごみ

生物多様性とネイチャーポジティブ

生物多様性とは単に多くの生物が存在するという意味ではなく、「生態系の多様性」「種の多様性」「遺伝子の多様性」の3つがあります。生態系の多様性はサンゴ礁や磯など異なる環境を持つ生息場所が多くあること、種の多様性は文字通りたくさんの種類がいることです。遺伝子の多様性というのは、例えば同じ種類の魚であっても、暑さに強い個体、弱い個体がいないと、通常よりも大きな温度変化が起こった時に全滅してしまい、種の存続ができません。この生物多様性の現象が大きな課題となっていますが、近年国際的に取り組まれているのが「ネイチャーポジティブ」という概念です。2030年までに生物多様性の減少に歯止めをかけ、回復基調に乗せていこうという取組です。水井氏は、「海にはたくさんの生物が暮らす豊かな生態系がある」、「海の生態系は陸上の生態系に支えられている」、「人の暮らしが海の生態系に大きな影響をあたえている」ということを社会全体が理解することが海の生物多様性保全に必要である、陸上よりも多くの生物が暮らす海の保全はネイチャーポジティブを達成するためには非常に重要な場所と訴えました。


生物多様性を説明できますか?

ネイチャーポジティブ(自然再興)について

私たちができること

海の問題は決して遠い世界の話ではなく、私たち一人ひとりの暮らしと直結しています。日常の中で排水に含まれる洗剤や薬品の使用量を見直したり、プラスチック製品を減らす工夫をすることは、海への負担を軽減する第一歩となります。ごみの分別やポイ捨てを防ぐ行動も、結果としてマイクロプラスチックの発生抑制につながります。講座では、「リッジ・トゥ・リーフ(山から海へ)」という概念が紹介されました。これは山・川・海が一体の環境システムであるという考えで、上流の行動が下流の海に影響を与えることを示しています。実際に、沖縄県東村では赤土の流出によって海が濁り、サンゴが死滅し、多くの生き物が姿を消すという事例が報告されています。一方で、フィリピン・ドンソールでは、地域住民がジンベエザメ観光を通じて持続可能な環境保全に取り組み、観光収入と自然保護を両立させています。水井氏は、こうした国内外の事例から学ぶべき点として「まず気づくこと、知ること、そして行動すること」が重要だと語ります。小さな行動の積み重ねが、未来の豊かな海を守る力になるのです。水井氏は、科学技術の発展でより海を理解することも大切ですが、「どうすればいいか」を尋ねたり、誰かに指示されるのを待つのではなく、「何をすべきか」「何ができるか」をひとりひとりが考え、周りの人や地域、そして社会全体で議論して、アクションをとっていくことが必要だと呼びかけています。


生き物が姿を消してしまった海底

持続的な観光を実現するフィリピン・ドンソール

参加者の声

・科学は手段で、海を変えてゆくのは個人個人の想いだ!という言葉が印象に残った
・まだまだ日本国内にも浸透式の排水があることに驚いた
・多岐にわたる内容を楽しい語り口で学ぶことができて良かった

<団体概要>

団体名称 :ヨコハマ海洋市民大学実行委員会
URL :https://yokohamakaiyouniv.wixsite.com/kaiyo/
活動内容 :横浜市民が横浜の海が抱える社会課題を自ら考え解決に向けて行動できる海族(うみぞく)になるための養成講座を年10回(コロナ禍以前は年20回)開催している。座学だけではなく実際に海や海を学べる野外講座も開催している。

日本財団「海と日本プロジェクト」
さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。
https://uminohi.jp/

参加人数:42人