ヨコハマ海洋市民大学2025年度講座第2回 「海水と淡水の狭間で ヨコハマの海でわくわくしよう」 を開催しました!
ヨコハマ海洋市民大学実行委員会は、令和7年7月3日(木)に横浜の海が抱える社会課題の解決に挑戦する市民を養成する、ヨコハマ海洋市民大学2025年度第1回講座「海洋プラスチック問題から考える循環型社会」を開催いたしました。このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。
2025.07.29

イベント概要
・ヨコハマ海洋市民大学実行委員会は「横浜の海が抱える社会課題を自ら考え、解決できる市民(海族・うみぞく)」を育成するヨコハマ海洋市民大学2025年度講座の第1回目を開催した(年10回開催)。
・開催日時:令和7年7月3日(木)19:30~
・開催場所:象の鼻テラス(横浜市中区)
・参加人数:42名(会場受講生20、オンライン受講生9、講師2、ゲスト・スタッフ3、実行委員8)
・共 催:海と日本プロジェクト
・後 援:横浜市・海洋都市横浜うみ協議会
紹介と活動概要
講師の石井彰(いしい あきら)さんは現在 水中工房 IKURI 代表、スキューバダイビングインストラクターを務められています。横浜市役所へお勤めの頃は「海への排出抑制」と「海の直接浄化」を担当されていました。最初に配属されたのは下水道局(のちの環境創造局)、途中資源循環局へ、そして再び環境創造局に戻り、最終的に環境科学研究所に勤務し約40年間の公務員生活を終えました。定年後は最終職場であった環境科学研究所に再任用職員として勤務。その後10年間は民間のコンサルタント会社に勤務し、現在は「ヨコハマ海洋市民大学」の実行員としてまた金沢区の「富岡並木ふなだまりgionbune愛護会」の一員として水質測定など環境調査をしながら、横浜市立大学の共同研究員として活躍されています。
また今回は、富岡並木ふなだまりgionbune 公園愛護会の会長である高島 哲さんからもお話を伺いました。
富岡並木ふなだまりgionbune愛護会の公式フェイスブックページ
https://www.facebook.com/groups/532251511126473
講師がワクワクする狭間のあれこれ
今回は「ヨコハマの海を狭間と言う視点でみてみたい」がコンセプトです。講師が用意したスライドにはたくさんの狭間が記載されていました。水平方向と鉛直方向の狭間、陸域と海域の狭間、流入抑制と自浄作用の狭間、上層と下層の狭間、表層と低層の狭間、水層と底層の狭間、水面と水上の狭間、満潮と干潮の狭間(潮間帯)、自然と人間の狭間、海と川の狭間(干潮域)、人と人の狭間、行政と市民の狭間、…それぞれの狭間に見えるもの、触れるもの、感じるものに講師はワクワクするようです。
ただそれぞれの明確な説明となるとなかなか表現が難しいようで「水平方向と鉛直方向の狭間」説明するスライドには「うまく説明できねぇ~」と書いてありました。

ワクワクする狭間

「うまく説明できねぇ~」そうです
緑豊かな海岸線と生き物の豊かな海を目指して
陸と海の狭間にあたるヨコハマの海岸線は鶴見区から金沢区まで直線距離では17.5Kmですが総延長はは約140Kmあります。かつては14km程度だと言われていた市民が近づける海も近年は整備がすすみ24㎞程度まで増えたようです。残されたほとんどは護岸で、コンクリートによるものがほとんどです。さらに市民が近づける砂浜は少なく、海の公園に1Km、八景島西浜に50m(どちらも人工)、自然の砂浜として野島海岸に500m、市民との距離は決して近いものでないようです。それでも講師は横浜港内にある砂浜は野島海岸、富岡並木のふなだまり公園、海の公園、八景島の4か所で、ぜひ覚えてほしいと言っていました。
また講師は山下公園で開催される世界トライアスロン大会 横浜大会でも環境系の調査などでお仕事をされていました。その調査などを通じて山下公園前の海中ごみであったり実はわかめがたくさん生えていたりと言う画像を数多く見せてくれました。
ヨコハマ海洋市民大学実行委員会も講師の「横浜の海岸線をすべて海から見てみたい」という希望を叶えるべく企画を立ち上げ、実際に2回の動力船による調査と1回のカヤックによるを調査を行っています。これまでの講師の調査と併せ、岸壁の形状や干潟や砂浜の有無、生物の付着状況、海岸線での緑の多さ(少なさ)などを映像に収めることができました。これらのデータは現在時間をかけつつ丁寧に解析を進めています。このような横浜の海も、公共下水道の整備にともない、水質が大きく改善されてきた結果なのです。現在海底にはアマモが生えていたりワカメが生えています。陸域と海域の狭間、上層と下層の狭間、表層と低層の狭間、水面と水上の狭間などの狭間を感じることができました。

講師スライドより(横浜港の砂浜)

山下公園前の海中ごみ
みんなで描く横浜港の未来
講師の活動はダイバーや環境の技術者としての調査だけではなく、多くの市民を巻き込んだ活動にも広がっています。グリーントライアスロンや横浜うみ博などに横浜港のジオラマを持ち込み、たくさんの市民にお声をかけ「横浜港へのあなたの思いを書き込んでください」、「横浜港をデザインしてみませんか」など市民からの生きたデータ収集にも力を入れています。横浜港のジオラマ展示とワークショップでは小学生を中心に900枚を超える付箋が集まったそうです。
誰かが考えた横浜港ではなく、自分たちが考えた、望んだ横浜港になってくれると最高ですね。またこの山下公園前の海底につては民間企業との連携で海底地形調査の結果も報告されていました。
ここでは陸域と海域の狭間、自然と人間の狭間、行政と市民の狭間などを学びました。

自分たちの横浜港は自分たちで

横浜港のジオラマにつけられた大量の付箋
富岡並木ふなだまり公園での活動
ここから「富岡並木ふなだまりgionbune公園愛護会」会長の高島さんにマイクが渡ります。富岡八幡宮のある豊かな漁場だった海岸線は1970年代以降の開発により埋立地へと姿を変えます。しかし富岡八幡宮の神事を継続するためにこの公園が作られ、水域が残されました。愛護会の皆さんはこの公園の清掃や剪定を中心に活動しています。また同時にメンバーに高齢者が多いこともあり地域の高齢化についても何らかの力になりたいと考えているそうです。会がめざすのはとにかく地域を・ふなだまりをきれいにすること(早朝4時半からの清掃活動は週に6日で年間300日以上の活動日!)、そして石井講師の力を借りて水質調査を続けることです。
その成果としてこれまでの活動を評価され市長表彰をお受けになる予定です。これは清掃だけではなく地域課題を解決するコミュニティづくりなども評価されているのだと筆者は感じました。清掃活動を続けることで水辺がきれいになり、最近は子どもたちも水辺に近づくようになり地域の方からも褒められることが増えてきました。この清掃活動の将来形として、愛護会は落ちているごみを継続的に拾うけれど、ここを訪れるひとのごみはそれぞれが家に持ち帰ってもらうことが次の目標だと高島さんは語ります。またここでもごみの量などがきちんとデータ化され活動の成果がひと目で分かるように整理されています。ここではふなだまりにまつわる様々な狭間のお話を聞きました。

ただの清掃活動ではない愛護会活動

地域との関係性も大切にされています。
このあと朝4時半からの清掃活動の動画、そして海中の様子を今回動画でご提供いただいた河童隊の中川さんからは「ふまだまりは泥の海底で見た目で汚いと思われるけれど、実際にはハゼの稚魚などの貴重な生息地だ」という内容のコメントがありました。
並木ふなだまりの水質向上に向けて
この取り組みは立地条件、水質調査、生き物調査などが進められています。講師は「マンションのすぐ近くに水辺があるなんて、ぜいたくな空間です」と語ります。そのぜいたくな水域に流れ込む雨水の状況を下水道関係のマップから説明があり、ふなだまりの水際線を構成する護岸や砂浜の説明、水底に転がる転石とそれに生息する生き物などの説明が続きます。この後は先ほど登場していただいた河童隊の中川さんによる海中の映像での解説が続きます。実に豊かな海(汽水域)であることが分かります。水深は3m程度あるそうです。そして満潮と干潮の潮位差が2m程度あるそうなので干潮時には干潟が出現するようです。
ここからは講師の集めた詳細な様々なデータから見えるもの、分かることの解説が続きます。市民の取組りであってもやはり科学的なアプローチが重要で「きれい・汚い」と言う言葉だけではなくそれを裏付けるデータがあることでより理解が進むのだと思い、筆者の頭の中には「市民科学」という言葉が浮かんでいました。詳細は割愛しますが、ふなだまりの水温だけでも右肩上がりの傾向がみてとれ、温暖化を証明しているようなグラフを見ることができました。また講師は言っていませんでしたが「定量と定性の狭間」も大切な狭間だと感じました。ここでは公共用水域及び地下水の水質測定結果というデータが紹介されていて印象的でした。
参加者の声
・データがすごい。50年分もあるとは驚いた
・内容がとてつもなく濃く大量で、質問をしようにも頭の整理が追い付かなかった
・ときどき出てくる自虐的なジョークが真面目な内容に反して面白かった
<団体概要>
団体名称 :ヨコハマ海洋市民大学実行委員会
URL :https://yokohamakaiyouniv.wixsite.com/kaiyo/
活動内容 :横浜市民が横浜の海が抱える社会課題を自ら考え解決に向けて行動できる海族(うみぞく)になるための養成講座を年10回(コロナ禍以前は年20回)開催している。座学だけではなく実際に海や海を学べる野外講座も開催している。

日本財団「海と日本プロジェクト」
さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。
https://uminohi.jp/
参加人数:42人