展示イベントだけじゃない!? 「水族館大国」日本の飼育技術、調査研究にも注目!
希少生物の保護活動、謎多き生態の解明。各地の水族館が注力している取り組みとは?
2022.12.15
クリスマス仕様の企画展示があったり、水族館には冬ならではの楽しみ方もいろいろ。
でも、そんな観光スポットであると同時に、水族館が果たしている役割や取り組みは多岐に渡っています。
たとえば水生生物を収集・飼育して展示するほか、保護、繁殖活動、調査研究や教育活動などさまざまです。
実は、日本は国土面積あたりの水族館数は世界一。博物館法で認定される水族館のほかにも大小さまざまな関連施設が多数あり、飼育技術も発達していて「水族館大国」とも呼ばれています。
海に囲まれた島国だからこそ、全国各地でご当地にゆかりのある生物を見ることができ、水族館の個性も多彩。
希少生物の保護や解明されていない生態の謎解きが、身近な水族館から広がっていると思うと、ますます興味が募ります。
今回は観光では見えない、各地の水族館の取り組みをご紹介します。
泳ぐサンマが見られる「アクアマリンふくしま」は水槽内繁殖にも世界初成功
“潮目の海”をテーマにしている「アクアマリンふくしま」は、泳ぐサンマの姿が見られる全国で唯一の水族館です。サンマはとても神経質で、養殖や繁殖も難しい魚ですが、ここでは1998年に世界初の水槽内繁殖に成功。長年の研究実績と繁殖技術は、サンマの不漁が続く今、期待を集めているそうです。
福島:世界初! サンマの水槽内繁殖に成功
希少なキタノアカヒレタビラの保全に注力する「上越市立水族博物館うみがたり」
新潟県の「上越市立水族博物館うみがたり」では、地域の水生生物や水環境の保全などに力を入れています。キタノアカヒレタビラという県の絶滅危惧Ⅱ類に指定された淡水魚の保護活動も行っていて、生息調査や外来種駆除のほか、繁殖を目指して来年春の人工授精を準備中なのだとか。個体数の維持を目標に、着々と計画が進められています。
長野:絶滅危惧キタノアカヒレタビラを守れ 人工繁殖に取り組む水族館
プロの飼育技術が学べる“生息域外保全”の活動拠点「びわこベース」
琵琶湖の西に淡水生物を展示する小さな水族館「びわこベース」がオープンしました。代表の関さんは、県立琵琶湖博物館や京都水族館に勤めた経験をもとに、ここを全国でも珍しい、生き物の“生息域外保全”の拠点にと取り組んでいます。これは工事後などに環境が落ち着くまで、生息域から一時的に生き物を預かるシステム。そんなプロの飼育技術を学生スタッフたちが学ぶ場にもなっていて、活動の広がりにも注目です。
滋賀:小さな水族館「びわこベース」
地元を盛り上げる「やながわ有明海水族館」の館長は現役高校生
12年前に倉庫を改装してオープンしたという「やながわ有明海水族館」の館長、亀井裕介さんは現役の高校生。小さい頃から生き物が好きで足繁く通っていたこの水族館で、ついに館長に就任したそう。豊富な知識量と行動力を活かし、人々に柳川や有明海周辺の生き物を伝えようと、人気の名物館長が地元で奮闘中。子どもたちの人気スポットにもなっているようです。
福岡:水族館の館長は高校生!
毎年「美ら海水族館」でウミガメを繁殖、放流。謎多き回遊ルートを調査
沖縄の「美ら海水族館」では、絶滅危惧種に指定されるウミガメの姿が見られますが、同時に繁殖活動や、生態調査なども進められています。沖縄生まれのウミガメたちの回遊ルートも明らかになっていないそうで、毎年、館内で生まれたウミガメの赤ちゃんに標識タグをつけて海に放流しているのだとか。いつか絶滅の危機を救えるようにと調査研究を続けながら、これまでの成果を展示に反映したり冊子にまとめたりして、多くの人に現状を伝えています。
沖縄:謎が多い! ウミガメの赤ちゃん
地域に生息する水生生物の生態や環境などについて日々研究し、さまざまに発信している水族館は全国にたくさんあります。各地の水族館が注力する取り組みに、ぜひご注目ください。