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“海を休ませる”事業を現役漁師が牽引!塩飽Fisheries<推進パートナーインタビュー>

養殖を漁師の副業に。漁を減らして天然魚を育てる“海を休ませる”事業に注目です

2025.03.13

“海を休ませる”事業を現役漁師が牽引!塩飽Fisheries<推進パートナーインタビュー>

“海を休ませる水産商社”として、いま注目を集めている香川県の塩飽Fisheries(しわくフィッシャリーズ)
2024年は海と日本プロジェクトのオリジナル体験学習イベント「かがわ離島レンジャー ミッション:未来の海を守れ!」の実施にも協力いただき、コラボ企画として子どもたちがイベントで考えた“海を休ませる”メニュー「チーヌバーガー」も発売されました。

2023年に創業した塩飽Fisheries(しわくフィッシャリーズ)では、若き現役漁師である大石一仁さんご夫妻と元香川県庁職員の湯川致光さんが、「いま海を休ませる必要がある」と持続可能な漁業の構築に本格的に取り組んでいます。

獲る量を減らして天然魚が大きく育つのを見守る“海を休ませる”をテーマに、養殖業と天然魚販売、飲食業、交流事業といった複合的なビジネスを展開中です。

今回は、海と日本プロジェクトの推進パートナーでもある塩飽Fisheriesの代表・大石一仁さんと取締役・湯川致光さんのお二人に、海を休ませる取り組みの活動内容や、海に対する思いなどを伺いました。

魚が減ってしまった海を回復させるために漁師ができることとは

代表を務める大石さんは、瀬戸内海で代々天然魚を獲ってきた4代目漁師とのことで「小さい時から海に触れてきましたが、いま圧倒的に魚が減ってきています。それは漁師による乱獲も一因だと思っています」と危機感を示します。
漁の頻度を減らして天然魚が育つのを見守る「海を休ませる」という考えは、漁を始めた10代の頃からなんとなく持っていたそうですが、事業化したのは「時代や自然環境のせいにせず、僕たちは自分たちでできる資源管理に力を入れていかなければいけない」という思いが募ってのことだったようです。

事業の立ち上げメンバーである湯川さんは、元県庁職員で、まちづくり事業の観光プログラムをつくろうという交流のなかで大石さんと知り合ったそう。大石さんの熱い思いに触れて、海を休ませる事業の実現を共に目指すこととなったのだとか。

具体的な事業内容をお聞きすると、まず養殖業が挙げられました。
「海を休ませるために漁に行く頻度を減らすと、漁師は稼ぎが減ってしまいます。そうならないように、漁師に最適な副業をと探し出したのが、養殖業でした。
実は漁師には2パターンあって、養殖業者と天然魚の漁師、それぞれ専門的に従事されています。でも養殖業は本来、天然資源を獲り過ぎないようにと生まれたものなんです。
そんな本来のあり方をきちんと取り入れて、海のバランスを整えていこうと考えました。幸い、瀬戸内海に養殖場所はいくらでもありますから。だけど、ノウハウはありませんでした」と振り返る大石さん。

しかし香川県は養殖事業の発祥の地。湯川さんが地元の付き合いの中でハマチ養殖のレジェンドと知り合うことができたそうで、そこから協力を仰ぎ、今は大石さん自身がレジェンドに教えてもらいながら、漁師たちが養殖を副業にしていく仕組みを一から築いているところだそうです。
魚が減ってしまった海を回復させるために漁師ができることとは

子どもも大人も、漁師も企業家も。重要なのはさまざまな接点をつくること

養殖事業と並行して、天然魚の販売も事業の一つとして取り組んでいますが、これは「乱獲の要因の一つになっているのは、天然魚が安く買われてしまう問題があると思うんです。物価高で燃料費も上がって大打撃なのに、魚の価格は上がらない。だからといって獲り過ぎてしまわないよう、我々がなるべく天然魚を高値で買い取って販売していきたいと思っています。買い取った魚にブランド力をつけて、各地域のご当地ブランドとしてプロデュースしていければと思っています」と計画中なのだとか。
実際すでに養殖サバは「海を休ませるサバ」というネーミングで海を休ませるレストランでも提供中です。
子どもも大人も、漁師も企業家も。重要なのはさまざまな接点をつくること01

さらに、交流事業にも取り組んでいます。
そもそも創業前から島起こし団体「本島さかな部」として、子どもたち向けのイベントを行っていたそうですが、始めたきっかけは子どもたちの魚離れに対する危機意識でした。
「魚を食べてもらえないと値段にも反映されていきます。じゃあ魚離れの原因は何かと探ってみると、家庭で魚料理をしなくなっているという背景に気づいたんです。今はほとんどの家庭が共働きなので無理もない話です。だったら親世代に無理をさせるより、子どもたち自身で魚をさばいて美味しく食べようとイベントで教えています」
自分で調理すると、魚がキライな子どもも食べられるようになるという現象がイベント内で起きているそうで、子どもたちが魚を好きになるキッカケにもなっている様子。
今は他の業務が多忙で手が回っていないとジレンマもあるそうですが、イベントは今後も回数を増やして続けていきたいと熱量は高めです。

子どもたちだけでなく、企業研修や大学生のスタディツアーなど大人向けのイベントも実施していて、海や養殖の課題への解決策やアイデアが生まれる機会も増えたのだとか。
「海を休ませる活動は、消費者や漁師に知ってもらわないと意味がないと思っています。そうした方々の耳にも届くようになって、だんだんと興味を持たれてきたように感じています」と大石さん。
最近は、漁師だけでなく企業家や海ごみボランティアなど、さまざまな方がサポートしてくれるようになり、ネットワークも生まれているそう。

湯川さんも「まだ課題はありますが、養殖業や交流事業など複合的に取り組むことに意味があると考えています」と続けます。
「なかなか意識を向けにくい水産問題への理解を深めてもらうために、いろんな方々に向けていろんな接点をつくることが重要だと思っているんです。それぞれの事業が考えを伝える手段でもあり、そこにビジネスを組み込んで複合的な、持続可能なシステムにしていきたいと考えています」
子どもも大人も、漁師も企業家も。重要なのはさまざまな接点をつくること02

子どもたちが考案!未利用魚を使った「チーヌバーガー」が海プロコラボで誕生

2023年の創業から2年ではあるものの、メディアでの露出も増えているそうで、実際に2024年度の海と日本プロジェクトのオリジナル体験学習イベントへ協力を依頼したのも、メディアで取り上げられた活躍を拝見したことがきっかけでした。

協力依頼のお声がけ直後に「やりたいことと合致しています!」と快諾いただき、初タッグを組んだ2024年度のオリジナル体験学習イベント「かがわ離島レンジャー ミッション:未来の海を守れ!」では、瀬戸内海の環境改善や離島の漁師の資源を守る取り組みを、小学生たちに学んでもらいました。
2日間にわたるイベントに参画いただき、大石さんは「これまで携わってきたイベントの延長のように感じていました。子どもたちが質問してくれたなら楽しんでくれたんだなと思うので、今回も興味を向けてくれたようでよかったです」

湯川さんは「私は小学生と対峙したのは初めてだったので新鮮でした。さまざまな子がいましたが、全般的にみんな関心が高めだったと思います。前向きに取り組んでくれているなと感じました」と嬉しそう。

そんなイベントから“海を休ませるメニュー” 「チーヌバーガー」も誕生しました。
チヌとはクロダイのことですが、香川県では市場価値がほとんどないという未利用魚です。臭い、美味しくないというイメージが根強く、スーパーでもあまり目にしない魚ですが、「捨てるのはもったいない」という想いから子どもたちが料理を考案。そのなかから選んで塩飽Fisheriesが商品化したのが「チーヌバーガー」です。
採用の理由は「美味しかったというのはもちろん、ネーミングがいい!というところです」と大石さん。
「子どもたちにも親しみやすいバーガーに仕立てたら、味も想像しやすいだろうし、取っ掛かりとしていいなと思いました」という大石さんに続いて、湯川さんも「さっぱりとした淡白な魚にガツンと感があるタルタルソースがプラスされて、おいしいバーガーに仕上がっていると思います!」と自信を覗かせます。
4月に本島でオープンする「海を休ませるレストラン」の初店舗でも提供されるそうなので楽しみです。
これまで出張販売を行なっていましたが、店舗では飲食の提供だけではなく料理教室の開催も予定されています。子どもたちのイベントに同行していたお母さんたちが調理に興味津々な様子だったので要望に応えようと企画したもので、これをきっかけに本島に遊びに来てもらえたらと、楽しみにもしているそう。詳細はInstagramで随時発信される予定です。
子どもたちが考案!未利用魚を使った「チーヌバーガー」が海プロコラボで誕生01
子どもたちが考案!未利用魚を使った「チーヌバーガー」が海プロコラボで誕生02

魚も海藻もたくさん!子どもの頃に感じた豊かな海を自分たちの手で取り戻したい

大石さんの海へ思いの強さは、数々の言葉からも感じられましたが、あらためてお尋ねしてみると「子どもの頃の海とは、明らかに様子が変わったと感じています。昔のように小魚がわんさかいて、海藻もいっぱい生えているような豊かな海に戻ってほしい。自分たちの手で戻していきたいと思っています」と言葉にしてくださいました。

そのために現在もさまざまな挑戦を続けられていますが、今後の予定について伺うと、「まだ言えないことも多いのですが」と躊躇いながら、湯川さんから「ただ愚直に、地道に、ご縁を大切にしていこうと思っています。海の豊かさを知る場やきっかけをつくり、人をつなげて、海を休ませる活動を応援してくれる方の輪を広げていきたいです。その先に、島で働きたいといった動きが作れたらいいなと。海に携わる人たちがリスペクトされる社会になればいいなと思っています」と教えてくれました。

最後にアピールしておきたいことを、と大石さんにお聞きすると「5月18日にサワラ祭りをするのでぜひいらしてください!」とのこと。
「会場は本島で、毎年500〜800名くらい来場されます。一番人気はサワラの解体ショー。サワラを食べたことはあるけど見たことのない子どもたちがほとんどなので、すごく人気です。
ほかにも、生きた瀬戸内海の魚たちに触れ合ってもらう「さわれる水族館」や、サワラづくしの漁師メシなどもたくさんあります。お勧めは「サワラのタタキ」ですね」

情報によると、このサワラのタタキは、サワラを食べ慣れた香川県民でもビックリするぐらい美味しい!と評判の一品だそう。
そこまで言われたら、ぜひ味わってみたくなるもの。サワラ祭りに先駆けて4月〜5月からEC販売も予定しているとのことなので、お見逃しなく。
そして、塩飽のおいしい魚と漁業スタイルの進化にこれからも、ぜひご注目ください!
魚も海藻もたくさん!子どもの頃に感じた豊かな海を自分たちの手で取り戻したい01
魚も海藻もたくさん!子どもの頃に感じた豊かな海を自分たちの手で取り戻したい02