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受け継がれた思い、警鐘、教訓を次の世代へ。各地の海の民話をアニメーション化<助成事業者インタビュー>

海ノ民話のまちプロジェクトが手がけた67篇の海ノ民話アニメーションを公開中!今後の展開にもご注目を!

2024.05.09

受け継がれた思い、警鐘、教訓を次の世代へ。各地の海の民話をアニメーション化<助成事業者インタビュー>

日本各地で語り継がれてきた海の民話を発掘して、アニメーションをつくっていく「海ノ民話のまちプロジェクト」。日本財団 海と日本プロジェクトの助成事業のひとつで、海とのつながりや地域の誇りを子どもたちに語り継ごうと、2018年に活動がスタートしました。
昨年度までに67作品が完成し、海ノ民話のまちに認定された自治体は65市町村。2024年度は新たに25作品を制作予定です。

海ノ民話アニメーションは完成後、自治体へ贈呈され、さまざまに活用されています。自治体の観光PRのほか、教材として授業に活用されたケースは50以上、土産物など地元企業とコラボ開発した関連商品も約100点にのぼります。

日本には各地に海にまつわる伝承や民話が存在していますが、近年は他の地域文化と同様に継承が困難となっていました。
「海ノ民話のまちプロジェクト」は、こうした先人たちの思いや海への警鐘、教訓が詰まった海の民話の定着、文化保全を進めようと、アニメを用いてアーカイブしていく試みです。
両輪として推進する「海ノ民話のまちネットワーク事業」では、海ノ民話のまちのネットワークを活かしながら新たな取り組みを模索、展開していきます。

今回お話を伺ったのは、この両プロジェクトを推進する一般社団法人日本昔ばなし協会の代表理事でアニメーション監督を務める沼田心之介さん。
親子2代にわたり「まんが日本昔ばなし」を制作している沼田さんですが、各地の海ノ民話の舞台を訪れては「誰よりも僕が一番感動しています。この感動をアニメでみなさんにお伝えしたい」と意欲的です。そんな制作の背景やこれからの展望についてなど、お話を伺いました。

まんが日本昔ばなしの制作陣が参画。各地の有力な実行委員会がプロジェクトの推進力に!

海ノ民話アニメーションの制作チームには「まんが日本昔ばなし」を担当していたスタッフとプロデューサー、いわゆるレジェンドたちが参加されていて、演出家は50~60人いるそうですが、その全てを統括しているのが沼田監督です。

さっそく、昔ばなしと海ノ民話アニメーションとの違いを伺ってみたところ、「『むかしむかしあるところに』で語り始める昔話は、誰でも受け入れやすくなるよう場所を特定せず、エンタメ性を重視しています。反対に海ノ民話では、『○○県の○○市のお話です』と地域の歴史や文化に寄せています。教育的な視点が優先事項としてあることが明確な違いです。そのうえで、子どもたちが興味をもって楽しめるようにエンタメ性を成立させていきます」
まんが日本昔ばなしの制作陣が参画。各地の有力な実行委員会がプロジェクトの推進力に!

実際の制作の流れとしては、まず全国から海の民話を募集して、審査で選ばれた“海ノ民話のまち”に、地元で実行委員会を立ち上げてもらいます。
郷土史家や共同研究会、自治体の方などさまざまなメンバーで構成されますが、この実行委員会の中心で地方テレビ局さんが幹事として地元企業や行政などをつないでくれるおかげで、活動はかなり協力的でスムーズ。たいへん心強い存在なのだとか。

「実際に取材させてもらうのはお寺の住職だったり語り部さんだったりとさまざまですが、会話をするとネットに出ていないような思いがけない情報が得られることがあります。地元の人には当たり前のことでも、僕ら外の者から見たらとても興味深い。そういったディテールを組み込むほど物語はリアルになる。アニメの表現に説得力を持たせることができるんです」
まんが日本昔ばなしの制作陣が参画。各地の有力な実行委員会がプロジェクトの推進力に!02

誰もが知る「まんが日本昔ばなし」なので、どこに行っても好意的に受け入れられ、地元の人にはおおむね喜んでもらっているそうですが、反面、「よそ者が勝手につくった」と批判されないよう、配慮や調整が重要だと気を引き締めます。
地元の方々の気持ちを汲むことはもちろんのこと、「海ノ民話のキモは海の学びですが、アニメーションとしてのエンタメ性も重要で、演出家たちもこだわりを持っています。僕の主な仕事はそれらの調整かなと思っています」と教えてくれました。

完成アニメーションを各地で多彩に活用!長期的視点で今後の展開にも注目

完成した海ノ民話アニメーションは各地でさまざまに活用されますが、上映会やフィールドワークなども好評です。
「長崎の青島の小学校では、民話の舞台になったスポットを子どもたちと一緒に回りまして、かなり仲良くなりました。島を離れる際には、別れを惜しんでくれる子どもたちが島の慣習で海に飛び込んでいて、その光景はとても印象的でした。島の子どもたちにとってはテレビ業界やアニメ業界の人間が珍しいからか、質問がいつまでも止まらない状態になって…その熱気はすごかったですね」と、子どもたちが喜ぶ姿を感慨深く振り返ってくれました。

また土産品など、地元企業とコラボした商品開発も全国で100商品以上が発売されています。たとえば滋賀の井筒八ッ橋本舗や秋田の米菓匠 鼎庵、ほかにも「僕の地元だと、江ノ島の中村屋羊羹さんが、藤沢市の海の民話『五頭龍と弁天様(ごずりゅうとべんてんさま)』とコラボしたオリジナルの『弁天塩羊羹』を販売してくれています。有名な老舗なので、よくコラボしてもらえたなと感慨深いです」と沼田さん。
実行委員会のなかに商工会議所や観光業のメンバーがいることもあり、各地の有名企業や老舗との連携が実現しているのだとか。地元を代表する土産品になればと期待も高まります。

さらには、道後温泉のど真ん中に民話を起用した自販機が出現したり。今治市内では30校以上になる全中学校でアニメを使った授業が3年連続で実施されていたり。某自治体ではアニメから新たに絵本を制作する予定もあるそうで、それぞれの地域にマッチした独自の活用事例が増えてきました。

完成アニメーションを各地で多彩に活用!長期的視点で今後の展開にも注目01
完成アニメーションを各地で多彩に活用!長期的視点で今後の展開にも注目02

こうした浸透や広がりは、まだまだ大きくなるだろうと予想されますが、この機運を逃さず活性化につなげていこうと計画中です。
2023年度を締めくくった今年3月には、アニメーション上映会と公開シンポジウムを開催。「僕も勉強になる話でしたし、今後のプロジェクトのヒントになりました」とおっしゃる通り、有意義な2日間でした。
子どもたちは上映会で人気声優たちとのアフレコ体験などで和やかに盛り上がり、公開シンポジウム「『海ノ民話』から学ぶもの~作家・芸人・学者の視点から~」では、ゲストがそれぞれの立場や視点から海ノ民話の考察、価値や可能性についての意見交換がなされました。
今後の目標について伺うと、まず100篇の作品を制作し、多言語化も進めていくこと。民俗学的な調査や研究を行い海ノ民話を体系的にまとめていくこと。さらに長期的には、ユネスコの世界の記憶遺産への選定も視野に入れて活動をしていくことなどが、明かされました。

完成アニメーションを各地で多彩に活用!長期的視点で今後の展開にも注目03 

アニメで感動体験を共有!できることならすべての自治体の作品をつくりたい

個人的には事業のどんなところがやりがいに感じているのかお聞きすると、
「いっぱいあります!現地を取材して、シナリオをつくって、絵コンテを描いて。最初から最後まで向き合っているので、現場で地蔵などゆかりのものに遭遇すると僕が誰よりも一番感動していますね。課題も、そんな僕と同じ感動をアニメで皆さんに味わってもらえるようにすることかなと。旅行代理店と組んで民話ツアーにするとかも面白そうです。何でもないところが観光地になり得るんですから。民話を入口にして地域を発展させていけたらと思います」
すでに民話ツアーは、実験的に福島県で子どもたちに体験してもらったそうなので、今後の展開が気になります。
アニメで感動体験を共有!できることならすべての自治体の作品をつくりたい01
アニメで感動体験を共有!できることならすべての自治体の作品をつくりたい02

最後に、自宅から海まで5分という沼田さんに、海への思いを伺ってみると、「子どもの頃から海で遊ぶのが当たり前で身近な存在でした。でも今の子どもたちにとっては、海は怖いとか汚いといったネガティブなイメージが強いのだとアンケート結果に表れていて、ショックでしたね。そのイメージを払拭して、海と親しみ正しく恐れる、という海との付き合い方に、この取り組みが繋がればいいなと考えています」と沼田さん。

日本全国の海に赴いて、地域によって海はぜんぜん違うから面白いという沼田さんですが、海辺のまちからも山間のまちからも偏りなく海ノ民話へのエントリーがあることにも驚いているそう。
「どのまちにも海ノ民話があるので、できれば…1,000以上あると思いますが、すべての自治体でつくりたいです。さらには『海ノ民話館』みたいなものができたらいいなと思っています」と尽きない思いを披露してくれました。

世界に誇る日本のアニメーションで、全国津々浦々の海の記憶を次の世代へ語り継いでほしいと願っています。
アニメで感動体験を共有!できることならすべての自治体の作品をつくりたい03