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「逗子海岸映画祭」で世界を見聞! 地域を巻き込んで環境活動もパワーアップ<助成事業者インタビュー>

地元の新しいローカルカルチャーを育てながら注目イベントを手掛ける逗子海岸映画祭実行委員会へインタビュー

2023.07.06

「逗子海岸映画祭」で世界を見聞! 地域を巻き込んで環境活動もパワーアップ<助成事業者インタビュー>

海と日本プロジェクトでは海に関する全国のさまざまな事業を助成しています。ゴールデンウィークに逗子海岸で開催された「逗子海岸映画祭ボトムアップクリーンプロジェクト」も2023年度の助成事業のひとつです。

逗子海岸映画祭はその名の通り、逗子海岸で映画を楽しむというローカルなイベントで、2010年の初開催以来、毎年ゴールデンウィークに催される恒例イベントとして地元に定着しています。

海岸で潮風を感じながら映画を鑑賞して自然との一体感も楽しめるイベントですが、2022年度からはさらに、環境問題へのアプローチも強化。来場者と一緒に海洋環境対策に取り組めるようなイベント設計にも注力しています。

この逗子海岸映画祭の運営に携わっているのは、地元のクリエイターやアーティストたちで構成された「シネマキャラバン」 「シネマアミーゴ」という、地元カルチャーを牽引する2つのグループのメンバーたち。
「地球と遊ぶ」をコンセプトに、国内外で吸収した各地の文化を地元に持ち帰り、この映画祭で共有しているのだとか。10年以上続けられてきた活動ですが、今後は次の世代への引き継ぎにも目を向けているとのこと。

目の前に美しい海が広がる逗子という土地で、行政や地域の人たちと深く緩やかにつながりながらどんなことを目指しているのか、実行委員会の長島源さんにお話を伺いました。

潮風を感じながら海岸で映画鑑賞! 地球環境を考えるGW恒例イベント

4月29日から始まった2023年の逗子海岸映画祭は、悪天候のため会期後半は中止を余儀なくされましたが、それでもエリア内外から若者を中心にたくさんの人が訪れ大盛況でした。
イベントで上映されるのは、日毎のテーマに沿った作品たち。名作映画から、アート、音楽、カルチャー、自然環境や社会問題などさまざまなジャンルの作品です。
5月6日は残念ながら中止となりましたが「OCEAN DAY」と題して、16の島国に残る伝統的なパフォーマンスを記録した音楽ドキュメンタリー「大海原のソングライン」がセレクトされました。
潮風を感じながら海岸で映画鑑賞! 地球環境を考えるGW恒例イベント
▶︎ZUSHI BEACH FILM FESTIVAL

プロデュースをしたシネマキャラバンは、国内外を旅するなかで見つけた各地の魅力や文化、人との縁を次の土地へと運ぶプロジェクトで、もう一方のシネマアミーゴは、常設スペースで映画を切り口にカルチャーを発信するなど、地元に密着した活動がメイン。この2つが連携して1年に1回、活動の集大成として開催しているのが逗子海岸映画祭なのです。

そして自然環境の中で“地球と遊び”ながら、地球のことを考えようと企画したこのイベントの根源にあるのは、美しい海が自慢の故郷で持続可能な地域づくりを目指そうという思いだったそう。
「シネマキャラバンでは海外の地方都市を訪れる機会も多いのですが、行く先々で感じるのは一極集中への懸念や、地域活性化への欲求などです。
そこで大事になってくるのは、地域に人を定着させ得る文化をつくっていくことだと考えています。文化が地域に根付けば活気あるコミュニティがうまれる、そこを大事にしたいと思っています」と長島さん。

これまで、サン・セバスチャン(スペイン)、白川郷(岐阜)、ジャカルタ(インドネシア)など、旅先でローカリティの大切さに共鳴する人々にたくさん出会い、映画祭にも若いアーティストが参加してくれているそうです。

潮風を感じながら海岸で映画鑑賞! 地球環境を考えるGW恒例イベント-2

持続可能な逗子にすることを目指してローカルカルチャーを創出

そもそもこの取り組みの始まりは、逗子、葉山、鎌倉など三浦半島界隈でいろいろな活動をしていたメンバーがある店で出会い、一緒に地域活動をやっていこうと盛り上がったのがきっかけだったそう。2006年頃のことで、まだ20代でした。
「みんなが地元に住んで仕事をしたい気持ちをもちながらも、実現するのは難しい状況でした。それなら自分たちで地元に仕事や文化をつくってしまおうかと」、そう思い至ったのだとか。
いったんは、それぞれ現状の仕事に戻り、数年後、30歳になった長島さんが同じ逗子出身の志津野さんとともにシネマアミーゴを立ち上げ、翌2010年に仲間と第1回の逗子海岸映画祭を開催。

「第1回は仲間内だけの参加で、まわりからは『若い人たちが好きにやっているイベント』だと見られていたと思います。ただ、続けていくうちに地域の方も来てくれるようになり、5年目くらいから対外的な注目を集め始めたように思います。行政や商店街などからも関心が寄せられて、協力してもらえるようになりました」

注目を集めたのは、自分たちが良いと思うものの質を上げながら毎年続けていった結果、そのこだわりが意図せずSNS映えという需要にマッチしたのではと長島さんは分析されていますが、とくに今年は遠くから参加してくれる若者も多かったようです。

「10年はやろうという意気込みで始めましたが、10年経ってみると当時参加してくれた子どもが大人になってBARなどの運営に参加してくれていたりして。次の10年を考えるようになりました。
海プロが掲げる『海の未来を次世代につなげる』にも共通しますが、改めて世代を超えた取り組みにしていきたいと強く意識しているところです」

次世代へ受け継ぐことを見据えて、今後はファミリー層を含めた幅広い層で、少しでも多くの人たちに参加してもらえるようにしていきたいと、抱負を語ってくださいました。

持続可能な逗子にすることを目指してローカルカルチャーを創出

持続可能な社会と環境問題は切り離し不可。海洋環境対策をイベント来場者へアピール

持続可能な地域自立型社会を目指す取り組みなので、これまでのイベントでももちろん環境問題はずっと意識されてきましたが、「助成を受けたことでイベント内容も海洋環境対策へのアプローチを強化できました」と長島さん。

具体的には、例えば地元の市民団体と協力して会期中毎朝、一般ボランティアの参加を募りながらビーチクリーン活動を実施しました。参加者は海岸の清掃活動を通して、恵まれた自然環境の恩恵を受けてこのイベントが開催されていることを実感し、海への愛着も深めた様子だったとか。
またイベント会場内では、環境負荷軽減を図るためドリンク提供にはリユースカップを利用しましたが、これも利用者に自然と受け入れてもらえたそうです。

多彩な環境対策を紹介するブース「グリーンステーション」でも、さまざまなコンテンツを用意。海藻で押し花をつくるワークショップや、マグロ屋さんによるマグロと海を守るトークショー、漂流物が隠された砂場ブースでの宝探しゲームなども楽しんでもらえた様子です。

他に、海洋環境問題について理解を深めてもらえるようにと、海ごみを特集したタブロイド紙を発行してアピールも強化しました。

映画を楽しみながら、きれいなビーチを守る活動に触れてもらいましたが、長島さんは「その効果や未来への影響などは、今後の継続した活動による意識啓発が必要だと感じています」とイベントを終えた今、気持ちを新たにされていました。

持続可能な社会と環境問題は切り離し不可。海洋環境対策をイベント来場者へアピール-1
持続可能な社会と環境問題は切り離し不可。海洋環境対策をイベント来場者へアピール-2 持続可能な社会と環境問題は切り離し不可。海洋環境対策をイベント来場者へアピール-3

さらに、この逗子海岸映画祭は、逗子市からお声がけをいただいて「逗子アートフェスティバル」のプレイベントという位置づけで共催の形がとられていますが、地元自治体と良好な協力体制が築けている点も、イベントの成長要因の一つと考えられそうです。
長島さんは「逗子市の場合は、人口約6万人という程よい規模感で、行政と市民の距離も近いんです。市民活動をされている人たちはお互いに名前を知っていて、今回のビーチクリーン活動などもそうですが、何かのタイミングで気軽に連携できる素地がある。市長ともお友達感覚といった雰囲気があるんですよね。お金は出せないけど市民の活動は応援するよといった環境です。それに神輿に乗っていた私が逗子出身者だったことも、やりやすかったのではないかなと。移住者と地元民の間に不協和音が発生するケースも少なくないと思うので」と、ラッキー要素が多かったと振り返りますが、他の地域でも参考にできるポイントが多々ありそうです。

持続可能な社会と環境問題は切り離し不可。海洋環境対策をイベント来場者へアピール-4

地元、逗子の海に思うこと、できることとは

最後に、出身地である逗子の海についての思いも伺ってみました。
「逗子は、海ごみ問題などでは比較的、国内でも綺麗な海をキープできていると思います。ただ海は地域で考えるだけでなく、地球規模で考えないといけません。
生まれも育ちも海の前でしたから、この環境が維持できるように今後もさまざまな海洋問題に向き合いながら、地元カルチャーの醸成に取り組んでいけたらと思っています」

さらには、「将来的には、通年で環境対策も含めた海の活動ができる場所を、常設的に運営できるといいなと数年前から考え続けています。
例えばサン・セバスチャンだと夏以外も海の家や海のカフェがあって、マリンアクティビティが利用できたりして、海が日常になっているんです。だから逗子にももっと、通年で利用できる海の施設があってよいのではと思います。行政や地域の他の活動団体とも連携しながらそんな仕組みを構築できないかなと、今もまだ諦めていません」と語ってくれました。

美しい海と一緒に、逗子で育てた新しい文化を次世代へ受け継いでいく。そんな尽きない思いは、海のまちを、まちの人々を輝かせる養分になっているのかもしれません。
これからどんな進化がみられるのか、来年の映画祭とこれからの海との向き合い方にも注目したいと思います。
地元、逗子の海に思うこと、できることとは