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6月17日開催、第1回「海ごみゼロ国際シンポジウム」

当日発表された海洋ごみ対策の最新動向や研究内容などの詳細をまとめました。

2019.07.08

日本財団と環境省の共催で「海ごみゼロ国際シンポジウム」が、2019年6月17日(月)に開催されました。国内外の関係者、海洋ごみ問題の研究者による講演が行われ、最新動向が共有されました。当日の各者の発表の内容をまとめてご報告します。

【オープニング挨拶】

主催者代表として環境省の原田大臣、日本財団の笹川会長より挨拶があり、その後、前日まで開催されていた「G20持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合」の成果について、環境省より報告が行われました。

環境省 原田義昭大臣

環境省 原田義昭大臣
「いま世界中で海洋プラスチックごみ問題の議論が活発になっています。G20持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合では、海洋プラスチックごみ対策についての国際枠組みの創設を採択したところ。政府としては、新素材の開発などを盛り込んだ海洋ごみ対策拡張プランを取りまとめたところです。本日は国際機関や国内外の科学者の方々から最新の知見についてご講演いただくほか、わが国の取り組みの紹介や、全国の優れた取り組みに対する表彰を行います。このシンポジウムが海洋環境保全の機運をさらに盛り上げ、新たな汚染を出さない社会が実現することを祈ります」

日本財団 笹川陽平会長

日本財団 笹川陽平会長
「地球は生命体であり、その7割は海洋です。人口100億人時代において、人類の生存に海洋がいかに強い影響力があるか忘れがちですが、海洋保全無くして人類の生存はない。人類が無意識のうちに海洋を破壊し、人類が地球よりも早く滅びてしまう危険性を強く感じています。海はすでに悲鳴をあげています。
いま、世界が急速に海洋ごみに関心を持ち始めてくれています。今年実施した全国一斉清掃活動「海ごみゼロウィーク」には約50万人が参加、海洋国家日本として世界に模範を示そうという声があがっています。危機的状況を共有して、人類が地球と同じだけ生きられるよう努力することが、現代を生きる人間の責任ではないかと思います。本日は素晴らしいスピーカーがお集まりなので、皆さん方と情報を共有できることを心から喜んでいます」

環境省 高橋康夫 地球環境審議官

環境省 高橋康夫 地球環境審議官
「これまでに国連のSDGs、ハンブルグサミットのG20行動計画の合意、今年3月の国連環境総会(UNEA4)では海洋プラスチックごみおよびマイクロプラスチックに関する決議が採択され、海洋ごみ対策にグローバルに取り組む素地ができつつあります。
今回のG20閣僚会議では、各国の行動計画の実施を促進するため「G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組み」の策定が合意されました。具体的には、陸域を発生源とするプラスチックごみへの包括的ライフアプローチ、適正な廃棄物管理、海洋プラスチックごみの回収、革新的な解決方法の展開、各国の能力強化への国際協力の実施などです。
こうした成果を踏まえ、今後もみなさんとの連携を強化して国際的な海洋プラスチックごみ対策を推進していきたいと思います」

【講演】

「海洋ごみによる危機」をテーマに講演が行われました。国際機関からの報告としてOECD環境局長、最新の科学的知見について海洋問題の研究者3名が登壇しました。

講演1「海洋ごみ対策に向けた再生プラスチック市場の改善」
OECD Rodolfo.Lacy(ロドルフォ・レーシー)環境局長

講演1「海洋ごみ対策に向けた再生プラスチック市場の改善」
「プラスチック生産は現在も年次4%の成長率で伸び続け、回収が追いつかず、早急な対策が必要です。またプラスチックごみが漁協と観光に及ぼすコストは130億米ドルにも上っています。
解決には「循環型経済」の脈絡での検討が必要であり、OECDはここに注力しています。代替素材やプロダクトの再設計も必要です。一方、リサイクル率はわずか6%で、ここはパラダイムシフトが必要です。現在バージンプラスチックと区別されていない二次プラスチックには、ライフサイクルベースの評価によって競争価値を持たせる、さらには公的調達のルール整備、リサイクル税制度の導入なども有効と考えられます。
新しいコミュニケが発表され、今後、「理論」から「実施」に移行されます。グローバルに取り組んでいくことが可能になるでしょう。OECDはマイクロプラスチックに関する取り組みに注力していきます」

講演2「海洋プラスチック汚染の現状と将来太平洋における50年後のマイクロプラスチック浮遊量の予測」
九州大学応用力学研究所附属大気海洋環境研究センター 磯辺篤彦教授

講演2「海洋プラスチック汚染の現状と将来太平洋における50年後のマイクロプラスチック浮遊量の予測」
「数年前に太平洋でマイクロプラスチック浮遊量の調査を行いました。北太平洋は、南太平洋より一桁、日本付近でさらにもう一桁、密度が高く、また50年後をモデリング予測すると、とくに東アジア海、北太平洋中央部の浮遊量が高くなっていました。
ただし、科学は未熟です。海洋プラスチックごみを減らさないと深刻な海洋汚染が進んでしまいますが、一方で、プラスチックは贅沢品ではなく、むしろ貧困層、途上国での使用が疾病予防につながっている側面もあり、プラスチックを排除することへのリスクも認識すべきです。
重要なのは、両方のリスクを理解すること。持続可能な削減を実現するには、国際的な枠組みのもとで取り組む必要があります。研究者同士でデータの比較ができるような標準化も必要です。研究者としてこれらの課題に取り組み、海洋プラスチックごみ問題に対応していく必要があると考えています」

講演3「海洋ごみと海および人の健康の背景」
ワシントン大学 Elaine M. Faustman(エレーヌ・ファウストマン)教授

講演3「海洋ごみと海および人の健康の背景」
「マイクロプラスチックは、ありとあらゆる場所で生成されます。大気中に排出される多くのプラスチック粒子は、最終的に海洋に行き着きます。工学的製品として使われる100ナノメートル未満のプラスチックは、腸膜を通り抜け脂肪に吸収されるため、問題は深刻です。ビールや塩などの食料品にも含まれていることがわかり懸念が浮上しています。ナノプラスチックは目に見えませんが、大気中、海洋中にも分布しており、清浄な環境であるはずのピレネー山脈にもナノプラスチックが堆積していました。
一方、いま世界中でナノプラスチック、マイクロプラスチックを測定しようという市民や研究者の動きがあり、こうしたステークホルダー、コミュニティを巻き込んでいくことも大切です。この対話を継続していきましょう」

講演4「世界に共通する問題、EU独自の解決策:海ごみに打ち勝つー欧州連合(EU)の視点」
WMU-笹川世界海洋研究所 Aleke Stofen-O ‘Brien(アレク・シュトゥーフェン=オブライエン)

講演4「世界に共通する問題、EU独自の解決策:海ごみに打ち勝つー欧州連合(EU)の視点」
「EUのプラスチック生産量は世界の25%を占め、年間15〜50万トンのプラスチック廃棄物がEU海域へ流出しています。市民も憂慮する社会的認知度の高い問題です。
EUでは現在、すべての加盟国がごみの漂着と影響をモニタリング・分析しており、昨年は廃棄物管理義務が改定され、レジ袋の使用制限・包装規定も設けられました。リサイクル・リユースも、各自治体ごとに2025年までに重量比55%、2035年までに65%の達成に向け取り組んでいます。
EUプラスチック戦略の最新情報としては「使い捨てプラスチック製品に関する指令」が採択され、2021年までに実施対応が必要になりました。飲料ボトルは2025年までに90%の回収率を目指し分別収集をしていきます。
野心的な目標を設定しており、より多くの研究、社会意識、政府の注力と産業界の参入が必要になります。認知度を高め全員で問題意識を持つことが重要です」

【日本の取り組み報告】

環境省と日本財団より改めて、日本の挑戦について具体的な報告が行われました。

「海洋プラスチックごみ問題に対する日本の政策」
環境省 田中聡志 水・大気環境局長

環境省 田中聡志 水・大気環境局長
「5月末に海洋ごみ問題についての政府決定がありました。『プラスチック資源循環戦略』では段階的な目標を明らかにし、『海岸漂着物対策推進基本方針』に海洋プラスチックごみ問題を追加。これらを踏まえ『海洋プラスチックごみ対策のアクションプラン』で具体的な項目がまとめられ、いよいよ国内対策を精力的に進めていきます。
まず3Rとして代替素材への転換支援やリサイクル設備導入の支援など、資源循環体制の構築を行います。またバーゼル条約改正を採択しリサイクル不適応な汚れたプラスチックごみを国際取引の規制対象としました。新しいのは漁具・漂流ごみ対策で、漁業者の海洋ごみ等の回収・処理を支援していきます。
国際協力ではASEAN+3で大きな進展があり、マルチステークホルダーのプラットフォームの新設、海ごみナレッジセンターの設立が合意され、これから協力していきます。
プラスチックスマートキャンペーンでは多くの企業・自治体の優れた取り組みを共有し、フォーラムで理解と共有を進め国際的に発信。進捗を点検しながら国内外で進めていきます」

「CHANGE FOR THE BLUE」
日本財団 海野光行 常務理事

日本財団 海野光行 常務理事
「包括的な海洋ごみ対策プロジェクト「CHANGE FOR THE BLUE」の取り組みについて、立ち上げから半年間の実施内容をご紹介します。
(株)セブン-イレブン・ジャパンとはペットボトル自動回収機の店舗設置を開始しました。日本コカ・コーラ(株)との共同で実施しているのは、海洋ごみ発生メカニズム解明のための河川流域調査です。自治体との連携では先進的活動を展開されている富山市と、地域ぐるみの対策を展開。東京大学とは科学的知見の充実を図るため海外大学も含めた研究基盤づくりを進めています。
環境省との共同事業である海ごみゼロ活動は3本柱で事業を推進中です。新しいステークホルダーとの連携としてコスプレイヤーとのごみ拾いイベントも開催しました。
事業期間は3カ年の予定で、今後は国際機関と連携した展開を実施していきたいと思っています。世界島嶼国サミットの開催も計画中です。企業との連携でも具体的な事業計画を実施に移していきます。
ごみ問題は最後は人の心の問題だと思っています。人の意識を変えることから可能になる変革、技術開発もあるのではと、今後も貢献していきます。結果、海に関心を持つ人を増やして、海を次世代へ引き継ぎたいと思っています」

「CHANGE FOR THE BLUE」プロジェクト共同事業の進捗報告

「陸域から河川への廃棄物流出メカニズムの共同調査」
日本コカ・コーラ株式会社 技術本部 柴田充 QSE環境サステナビリティ部長

CHANGE FOR THE BLUE」プロジェクト共同事業の進捗報告
「陸域を発生源とするプラスチックの海洋への流出を止める」ことを目指し、共同調査に至りました。全国8ヵ所の河川流域で調査を計画し、すでに4ヵ所で一時調査を終え、今後データ分析に入ります。
スマホアプリを活用した調査分析を今後も展開する予定で、9月をめどに1度目の公表、分析結果に応じて必要な調査等を進め、年内に取りまとめて政策提言を図っていきたいと考えています。海洋ごみ問題解決に向けて、皆さんと一緒に取り組みを進めていきます」

「海ごみゼロウィーク結果報告」
海と日本プロジェクト「CHANGE FOR THE BLUE」 推進事務局 波房克典

CHANGE FOR THE BLUE
5月30日〜6月8日前後の約10日間で「海ごみゼロウィーク」を開催し、全国1500ヵ所、50万人が全国一斉清掃活動に参加されました。特徴的な取り組みとしては、5月30日の「ごみゼロの日」に、江の島で環境大臣とともにキックオフイベントを開催し、テレビ報道もたくさんしていただきました。
またユニークだったのは、ごみ拾いをスポーツ競技化したイベントの開催。また世界コスプレサミットと連携して若者たちからSNSで世界へ発信してもらうなどしました。
全国にムーブメントが広がっているこの取り組みが、大きなうねりとなって海洋ごみ対策の一助になるよう、引き続き推進していきたいと思います」

海ごみゼロ国際シンポジウム