湧き水が豊富な神代農園でわさび栽培を見学し、わさびが育つことができる地域の環境や食文化について学びを深める「【おいしい流域】わさび:調布深大寺 わさびを育むたくさんの小さな源流」を開催しました!
一般社団法人 おいしい未来研究所は、「【おいしい流域】わさび:調布深大寺 わさびを育むたくさんの小さな源流」を開催。湧き水が豊富な神代農園でわさび栽培見学をし、ライフワークとして湧き水をめぐっている玉利康延さんから湧き水の恩恵を学びました。
2024.10.18
一般社団法人 おいしい未来研究所は、湧き水が豊富な神代農園でのわさび栽培見学と、文脈デザインについて研究している玉利康延さんをお迎えした講義を通して山から川、そして地表に湧き出るお水の恩恵について学ぶ、「【おいしい流域】わさび:調布深大寺 わさびを育むたくさんの小さな源流」を2024年9月28日(土)に開催いたしました。
このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。
開催概要
山から海までのつながりを「食べること」を通して学ぶ「おいしい流域」プロジェクトの第四回目。水の循環システムの仕組みや、山が水に与える影響、川魚の生態系や木の山に対する影響、多摩川流域の住宅化・工業化に伴う生態系の変化を学んだこれまで3回の講義に続き、第四回では多摩川中流域の崖線の湧水と暮らしの関係について学びます。イベントで学んだことを体験を通して実感し、日常生活に戻った際に川が自分の生活にどのように接続しているのか考えるきっかけにすることを目的としています。
日程
2024年9月28日(土)
開催場所
東京都 調布深大寺
参加人数
18名
玉利さんレクチャー「わさびの生育に欠かせない湧水と、湧き出す環境・仕組みとは何か」
集合場所は、東京都調布市にある深大寺の入り口。湧水が出ている場所や清らかな水が流れる水路が目に留まります。参加者が集合して自己紹介を終え、さっそく湧き水に触れてみると「冷たい!」との声が上がりました。それから講義の場所である神代農園へ。深大寺から神代農園までの道のりでも、湧水によって滝が流れるスポットや、水が湧き出ている証拠でもあるふきが生えている岩場を見ました。深大寺エリアは、多摩川中流域に位置しており都心から1時間ほどの距離ですが、こんなに暮らしの近くに湧き水があることが意外にも新しい発見でした。
そして、神代農場にてわさびの食文化と、その生育環境としての多摩川流域について理解することを目的に講義を行いました。文脈デザイン研究者であり、「東京で源流の水で生活することはできるのか!?」をライフワークとして湧水をめぐっている玉利さんより、①わさびとは②湧き出す環境・仕組みについてお話しいただきました。まず、わさびとは日本原産の野菜であり、寄生虫を防ぐ効果のある薬味として日本の生食文化になくてはならないものとして重宝されてきました。わさびの生育には2~18℃の水が常に流れ続ける環境が必要で、水が湧き出す環境で育ちます。つまりわさびのある場所は湧き水が豊富であるとも言えます。
わさびを求めてやってきた神代農場は湧水を活用した農業を行っています。位置的に説明すると、「多摩川支流 野川の上流域の谷戸」。少し抽象度をあげて、本流・多摩川〜流域(野川をはじめとする支流を含むエリア)〜谷戸(丘陵地が侵食されて形成された谷城の地形)〜崖線(河川が削ってできた崖)の解説によって、なぜ神代農場のあるこの場所はわさびが育つ=湧水が豊富な土地なのかを教えていただきました。
その一方で、参加者の多くが住んでいる下流の地域では木が減ったりアスファルト化されていることによって土中の水の吸水量が減っています。洪水などのリスクが高まる→崖を削ったりコンクリートで固めたりする→綺麗な水があって豊かな生態系がある場所が減っていく→子どもたちの親水性が保てなくなっている→よく知らないから河川に手を加えてしまうという悪循環を生んでいると玉利さんの課題感を教えていただきました。子どもたちにとっては少し難しいお話となったかもしれませんが、本イベントのように、身近な流域に触れ、山から海までのつながりや私たちの暮らしと密接に関わる水のことを学ぶ機会の重要性を再認識できたように思います。
神代農園見学・わさびの試食
神代農場の管理人、宍戸さんに農場をご案内いただきました。神代農場は、約25,000㎡の広大な敷地で、湧水を活用したわさび、しいたけ、お米の栽培と、ニジマスの養殖、腐葉土の管理も行っています。武蔵野の里山の景観を残し、湧水が湧き出るこの場所はかつての原風景です。草木が生い茂る階段から降りていくと、湧水が流れる池のような場所が現れます。沼の上に作られた20cmほどの橋を渡ったりしながら、いくつもの湧水スポットやそこに自生するさまざまな植物を発見することができました。
そして、今回の主役「わさび」の登場です。17℃くらいの湧水が流れる土地にわさびがずらっと育っています。よく見るとわさびの茎を支えるように根本を石で挟んでおりそこから根をはっています。実際にわさびを収穫するところを見せていただきました。土が柔らかく、スッと一瞬で抜けました。
そして、その場でわさびをすりおろして試食させていただきました。用意していただいたおろし金は鮫皮と金属の2種類。豊かな湧水で育ったわさびは、つんとした辛味はまったくなく、鮫皮でおろしたほうは爽やかな香りがあり、金属のほうはよりピリッとした刺激を強く感じました。子どもたちも、わさびの育つ環境を体感したことで、興味を持ってわさびにチャレンジ。わさびを舐めて辛そうな表情をしていましたが、鮫皮のほうが辛くない!と味の違いを発見していたのは驚きでした。
また、事前に宍戸さんがサワガニを見つけて、子どもたちに見せてくださいました。綺麗な水を好むイメージのあるサワガニですが、土をほぐして柔らかくしてくれるためわさびの生育にもとても役に立っているのだそうです。
お蕎麦屋さんで食事
講義を終えて、神代農場を後にし、矢田部茶屋さんに移動しました。矢田部茶屋は深大寺のすぐそばにあるお蕎麦屋さんです。
深大寺そばのはじまりについては諸説ありますが、その歴史は江戸時代に遡ります。蕎麦を栽培するため、蕎麦を打つため、蕎麦を茹でるため・・蕎麦は水が非常に重要な食べ物です。湧水が豊富な深大寺エリアエリアだからこそ、おいしい蕎麦が人気となり現在のように多くのお蕎麦屋さんが軒を連ねているのでしょう。矢田部茶屋では、特別に神代農場の見学でいただいたわさびを持参させていただきました。わさびとともに深大寺そばを食しながら、豊かな水が育んだ日本の食文化に思いを馳せました。
参加した子ども・保護者からの声
・「ここから湧き水が出てる!」「湧き水は冷たい!」といった子どもたちの声
・「わさびは辛いと思っていたけれど削りたてはとてもおいしい!」と、好奇心旺盛に挑戦・発見していく子供の姿
・「深大寺エリアを流域で捉え自分たちの暮らしている場所の地形について知ることができる貴重な機会だった」という、大人からの学びの声
今回の講義では、湧き水が豊富な神代農園でわさび栽培を見学し、わさびが育つことができる地域の環境としての湧水の仕組みを学びました。次回は貴重なタンパク源として多摩川流域で獲られていたナマズから、当時の食文化と暮らしについて学びを深めていきたいと思います。
イベントレポートは実施事業者からの報告に基づき掲載しています
参加人数:18人