沖縄の小学生26名がオンラインで交流 うるま市伝統の海塩や船の模型づくりに挑戦! 職人が追求する技術や想いを体感 「第1回 しまうみ探検隊」を開催! 2021年9月18日(土)~19日(日)
海と日本プロジェクトin沖縄県実行委員会は、9月18日、19日の2日間でうるま市に伝わる海塩づくり体験や、琉球時代に由来をもつマーラン船の造船技術を模型づくりで体感するプログラム「第1回しまうみ探検隊」を開催しました。
2021.09.30
海と日本プロジェクトin沖縄県実行委員会は、2021年9月18日、19日の2日間でうるま市に伝わる海塩づくり体験や、琉球時代に由来をもつマーラン船の造船技術を模型づくりで体感するプログラム「第1回しまうみ探検隊」を開催しました。新型コロナウイルス感染拡大の影響からオンラインで開催し、小学5・6年生26名が体験を通して交流しました。
このイベントは、次世代へ海を引き継ぐため、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。
イベント概要
沖縄本島の真ん中に位置するうるま市の海を舞台にした体験学習です。海上貿易から発展した歴史文化や、海産物に代表される海の恵みなど、海とともに生きてきた先人の知恵や海への想いを学びました。
期間
2021年9月18日(土)~2021年9月19日(日)
場所
沖縄県那覇市(オンライン)
参加人数
26人
協力団体
プロモーションうるま、うるま市環境課、高江洲製塩所、越来造船、(一財)沖縄美ら島財団
昔ながらの海塩づくり体験で塩と人との営みの歴史を知る
昔ながらの沖縄の風情が残る浜比嘉島には、初めて琉球に降り立った神様が住んだとされる史跡シルミチューがあります。シルミチュー近くの塩工房「高江洲製塩所」の塩職人・高江洲優さんを迎えて、昔ながらの海塩づくりを体験しました。高江洲製塩所での塩づくりは、浜辺からポンプで海水をくみ上げ、竹枝を使って組み立てた「流下式塩田」と呼ばれる装置の上から海水を流す工程から始まります。竹枝の先から滴る海水は、太陽と風の力でゆっくりと蒸発し、20%近くまで塩分濃度を高めていきます。そこから工房内の平釜でじっくりと炊き上げ豊かなミネラルが含まれる100%天然の海水塩が完成するとのこと。今回は事前に送った濃縮海水を自宅でスタンバイ。塩分24%の濃縮海水200mlからは約50gの塩が出来るとのこと。フライパンで煮詰めながら海塩づくりを進めていきます。高江洲さんはユーモアたっぷりにオリジナルの”塩ギャグ”を披露し、参加する子どもたちは終始笑顔で楽しげ。ぐつぐつ10分程度経つと塩が完成。用意していたゆで卵、トマト、おにぎりにつけて自然のミネラルが詰まった塩を味わいました。子どもたちからは、「粗い塩と細かい塩は作り方はどう違うの?」や「食べ物ごとに合う塩の種類はあるの?」など質問があり、高江洲さんは高温で短時間で炊くと細かくなりますが湿りやすくなってしまうため、高江洲製塩所では時間をかけてゆっくり粗い塩を仕上げていることや、ふつうの塩味がおにぎりに合うとしたら、しょっぱい成分であるナトリウムが少ない塩は天ぷらなどに振りかけて食べるのがおすすめと塩のヒミツを教えてくれました。
独自の技術と直向きな努力から生まれた「ありのままのおいしい天然塩」は海の恵みそのもの。自分たちで作った塩を感慨深そうに見つめ、海の恵みを育む自然の大切さを考えました。
船大工の技が光る!マーラン船の模型をつくろう
沖縄では戦前まで那覇と北部の国頭村を往来した「マーラン船」と呼ばれる交易船が活躍していました。マーラン船は馬艦船、足が早く海上を馬のように走ったことからこの名がついたそうです。古くは琉球時代に中国から伝来した卓越した造船技術から生まれたマーラン船は、那覇から生活物資や酒類、北部から木材や竹・黒糖を詰め込んだ樽などを運ぶ生活に欠かせない存在となりました。奄美の徳之島からは牛、沖永良部からは馬を運び、大きな船は子牛200頭ほど運べるサイズだったというから驚きです。時代とともに消えたマーラン船ですが、今もなおその造船技術を伝えるのが、うるま市の越来造船です。
今回はうるま市海の文化資料館から中継し、越来造船4代目の船大工・越来勇喜さんに船の模型づくりを教わりました。マーラン船に使用する木材は、丈夫で耐久性に優れる宮崎県日南市で取れたスギの一種・飫肥杉(おびすぎ)で、今回の船の模型も本物と同じ飫肥杉を使用しました。木材に線を引く工程では、長さを測るのに定規を使用しなかったり、曲線を描くのに竹ひごを用いました。時間を短く作業が進められる工程にも職人の技術が詰まっています。「先生これでいいですか?」「どうしてここに線を引くのですか?」子どもたちは工程ごとに積極的に質問し、高度な造船技術に触れました。先代である父や祖父の仕事に向き合う日々を見てきた越来勇喜さんは、幼いころは職人になるつもりはなかったそうです。本気で目指すきっかけとなったのは祖父である2代目越來文治さんの最後の造船りだったそうです。棟梁である祖父、手元と呼ばれる身近なサポート役2人、作業スタッフ5人が加わり計8人で8か月かけて造り上げた30m級の木造船造りに関わり、船大工の道を志したそうです。子どもたちに、船を通じて海を好きになってもらえたらと想いを届けました。
サンゴの生態とサンゴ礁の役割を学ぼう
海の熱帯林と呼ばれ、海の生態系の重要な存在として有名なサンゴ。実は沖縄の子どもたちでも実際に海の中でサンゴを見た経験がある人は多くありません。沖縄美ら島財団総合研究センターの山本広美先生は、サンゴを知ると沖縄の海の特徴が分かると教えてくれました。動物であるサンゴはイソギンチャクと同じ仲間で、体の中に褐虫藻という藻を住まわせ、その力を借りて固い骨をつくり成長します。サンゴが褐虫藻から得た栄養分は食物連鎖を通じて多様な生き物を支えています。サンゴが長い年月をかけて積み重なってできる地形をサンゴ礁といい、熱帯の海での豊かな生態系とは、サンゴ礁を中心とした生態系で、少ない数でも多くの種類の海の生き物が生息する生物多様性のことを意味します。その貴重なサンゴが危機に晒されています。大雨で海に流れ出た赤土は、水中を濁らせ光の透過を妨げサンゴと共生する褐虫藻の光合成を妨害します。また、海水温が高くなると褐虫藻が逃げ出してしまい、サンゴは栄養が得られず衰弱してしまいます。これがサンゴの白化減少とされ、サンゴ礁の危機、ひいては熱帯の海の危機となっています。子どもたちは「サンゴの持つ毒はどうやって生み出すのですか」、「地球温暖化を止めるにはどうしたらいいですか?」など、サンゴの生態そのものや、取り巻く環境変化への対策について考えていました。山本先生はサンゴ礁の役割と海の豊かさを知り、それを人に話し、危機に立ち向かうために自分たちに何ができるか考えてほしいとし、子どもたちは熱心にメモを取っていました。
海中道路周辺の自然環境はどう変わった?
うるま市を代表する観光スポット「海中道路」は2022年に開通50年を迎えます。講師にうるま市環境課の目取真康裕さんを迎え、海中道路の歴史や自然環境について話を伺いました。平安座島と本島を結ぶ全長5.2キロの道路が建設されるまで、交通手段は干潮時に浅瀬を歩いて渡るか、満潮時に渡し船を利用するしかなく、島の人々の不便さは計り知れないものでした。沖縄が日本に復帰した1972年に完成した海中道路は、島の人々の生活を大きく改善し、完成以降は沖縄の原風景が色濃く残る離島4島の魅力に触れようと多くの人が訪れる人気スポットとなり発展し、今に至ります。
一方、潮流の変化による漂着ごみの滞留や生活排水の流入による自然環境の悪化が心配されています。うるま市が現状分析のために環境調査や生物調査を行ったところ、シーカヤックや養殖場などの海辺はきれいな状態が確認できたものの、悪臭が確認される本島側と海中道路の接合する三角地点では基準値を越えた数値が検出されました。海が汚れてしまった主な理由は、海藻類や漂流物の堆積や生活排水によるものだそうです。うるま市では海の自然環境の再生に向けて、多くの実績をあげている干潟耕転(干潟を耕すこと)や浄化剤の散布を実施したほか、地域の方々と一緒に干潟のクリーンアップ活動に取り組みました。
こうした取り組みの結果、現在では水質改善の兆しが見え、貝やカニなど以前は生息が確認できなかった生き物たちが戻ってきたそうです。また、堆積して悪臭の原因となっていた海藻を肥料にして農業に活用する実験も始めています。目取真さんは、自然環境の再生に向けた道のりは始まったばかりで、行政だけでは難しく地域の方々と一緒になって継続していきたいと説明してくれました。子どもたちは、「空かみた写真だときれいな海中道路なのに、環境が悪くなっているところがあって驚いた」など感想を述べました。暮らしの豊かさと元気な海の調和を目指すには人の生活が与える海への影響を知り、暮らしの中で自分にできる事を考えることが大切だと学びました。
テーマごとの学びをカタチに!メッセージと絵で表現しよう!
うるまの海を舞台に学んだことを2つのチームに分かれて意見交換、発表する内容をまとめました。それぞれの意見をコトバと絵を駆使して描くコトバグラフィッカー・ちょこさんの協力を得て、2日間を通して感じたうるまの海の学びを表現しました。
続いて、未来の海はこうであってほしい!という願いを込めたメッセージを書き出しました。みんなのメッセ―ジはグラフィックとしてイベント後に完成を目指し、うるまの海水塩が使われた商品「あらじお黒塩」と塩せんべい「みすてないでね」のパッケージにデザインされ、10月末までの発売を目指します。今回のプログラムの様子は新聞や放送で紹介するとともに、オリジナル商品の販売という形を通して海と日本プロジェクトの活動の発信につなげていきます。
イベントレポートは実施事業者からの報告に基づき掲載しています
参加人数:26人