水族館で地元の海の食材をアピール!コラボメニューの共同開発に高校生が挑戦
石巻の海の食材の利用価値を再提案!仙台うみの杜水族館×宮城県水産高等学校でコラボメニュー開発
2022.02.24
2021年夏、仙台うみの杜水族館で、地元の海への思いが詰まったユニークな期間限定フードメニューが注目を集めました。
海と日本プロジェクトとのコラボで誕生した、仙台うみの杜水族館と宮城県水産高校という2つの推進パートナーが共同開発した「ホヤとセリのかき揚げ冷やしうどん」「サバ出汁豆乳ラーメン」「銀鮭カレー」「藻塩ソフトクリーム」のオリジナル4メニューが発売され大ヒットしたものです。
宮城県水産高校は、2020年に海と日本プロジェクトとのコラボ商品として発売された、地元高校生たちによる「石巻の優しいサイダー」の企画開発に携わった参加校のひとつでした。
一方、仙台うみの杜水族館も、地域との取り組みをしていきたいとの強い思いを持った地元企業で、「石巻の優しいサイダー」のキックオフ販売会の会場を提供いただくなど、高校生の頑張りを間近に見て「次はぜひ一緒に」と今回のコラボが実現したのです。
コラボ企画の始動後、実際に具体的な内容を詰めるなど取り組みを進めていったのは、宮城県水産高校3年、調理類型クラスの高校生たちでした。
今回はそんな三陸の海の魅力を伝えるメニューを、どういう思いでどう開発していったのか、卒業を間近に控えた3人の高校生に伺いました。
高校生たちが地元の海をイメージしたメニュー開発に挑戦!
コラボ企画に取り組んだのは、卒業と同時に調理師免許が取得できるという調理類型クラスのメンバー5名。各自がそれぞれ地元の食材をアピールするオリジナルメニューを考え、試作まで担当しました。
2020年のコラボ企画にも参加してくれた阿部 優斗くんは、「サイダーづくりのときは『石巻のPRを』という前提のもとに開発したのは1商品だけでした。でも今回は『地元の海の食材・魅力を広める』という視点から、ただPRするだけでなく、人気がなくなってきている石巻の魚介類に利用価値をつけて広めたいという狙いがありました。だから食材の新しい使い方を再発見できるようなメニューをいろいろ開発したかったんです」と明かし、料理としての美味しさも担保しなければと試作に磨きをかけていったといいます。
企画・試作・プレゼン。さまざまな体験で奮闘!
コラボ企画は5月から動き出して、わずか一週間ほどでメニューが決定したとか。学生たちは震災を経験しているせいか地元や海への愛情も強く、短い期間内で20〜30ものメニュー案を最初の企画会議でプレゼン。コスト面も含めて実現可能なメニューを検討するにあたり、ひとつひとつのメニューや食材について会議の席で多くの質問があったそうですが、学生たちの回答は、知識も食材への思いも深く想像以上の熱弁ぶり。大人のサポートが不要になるくらい高校生主導で進められていったそうです。
そしてスピーディにプロジェクトは進行して、予定通り「海の日」7月22日から販売を開始。
人気メニューとなったサバ出汁豆乳ラーメンの開発を担当した生出 祐貴くんは、「自分でメニューを考えて試作品を改善しながら料理を完成させていきましたが、実際に多くの人に食べてもらえたことに感動しました。美味しかったとコメントを寄せられたのも嬉しかったです」と喜びを滲ませます。
また加藤 緩美さんは、店頭に掲出するPOP制作を担当し、料理のイラスト化にも挑戦しました。
「水族館の担当者さんと特にやりとりを重ねたのは、『実物に近いリアリティ』と『地元の食材を生かしたメニュー』を伝える部分。思いや美味しさをわかりやすく表現するのが難しかったです」と試行錯誤したポイントを教えてくれました。
そして今回、チームの企画リーダーを務めた阿部くんは、「僕の主な役割は、みんなで出し合った企画を取りまとめて水族館に提案する窓口でした。やりとりの回数は少なかったですが、事前に提案内容をしっかりと練っていけたので、満足できる企画が作れたと思っています」と満足そう。
とはいえ、初の試食会は緊張したようで、「自分たちで美味しいと思ってはいても自信が持てなかったんです。でもみなさんに美味しいと言ってもらえて、とても嬉しかったし、調理師を目指すうえで、みんなの励みになったと思います」と語ってくれました。
さらにはプロの仕事に触れたことも良い経験になった様子。
「一人前を作るのと、お客さんに提供する何百という数を作るのでは違うと思うので、自分たちが提案したメニューと同じ味、クオリティで商品化するのは難しいのではないかと想像していたんです。でも水族館さんに提示された試作は一発で納得できるものだったので、すごい!と思いました」
想定外の人気ぶりに期間を延長、追加メニューも開発
今夏のコラボ企画では、一ヶ月間の販売期間中に想定を上回る合計1,751食を提供しました。
特に人気が高かったのは「ホヤとセリのかき揚げ冷やしうどん」。会期後半から「サバ出汁豆乳ラーメン」が追い上げましたが、なかでも注目を集めたのは「ホヤ醤」と呼ばれるホヤを使った調味料でした。
これは東京の人気ラーメン店「麵屋武蔵」から先輩方が授業で講習を受け共同開発した調味料で、うどんのトッピングなどに使うと旨味がグッとアップします。今回は水族館側でレシピを再現して提供したそうですが、お客様から「売ってほしい」という声が届くほど好評でした。
そんな反響を受けて阿部くんも「先輩たちから受け継いできた『ホヤ醤』をお披露目できて、認知もされて、大成功だったと思います」と嬉しそう。
さらには、大好評の声に応えて第二弾、第三弾コラボメニューも発売することが決定。追加で4メニューを開発し、水族館フードコートは10月まで大いに賑わったそうです。
振り返って採点するなら100点満点で120点!
最後に、今回のコラボを振り返って高校生3人にそれぞれ点数をつけてもらったのですが、3人とも100点中120点!と回答してくれました。
「調理について学び始めて2年くらいですが、みんなに美味しく食べてもらえるメニューを開発できたこと、クラスのみんなと協力して、やりがいを感じました」と生出くん。
加藤さんも「自分たちで考えたメニューやPOPに、お客さんが反応する姿を直に見ることができたのも、売り上げを上げられたのも嬉しかったです」としみじみ。
阿部くんも「メニュー開発から販売までの一連の工程を体験できる機会なんて高校生にはなかなかないと思うので、すごく貴重でした。深く関われて、とても充実していました」と全力で取り組んだ日々を懐かしく噛みしめている様子。
さらに、今回のコラボを通じて海の食材や魅力を多くの人に知ってもらえてよかったと振り返りながら、「海の食材が使われなくなるのは悲しいこと。海の魅力は海辺に暮らしていても全てを知ることは難しいですが、これからたくさん知ってもらえるように、料理で石巻の海を、東北の海の魅力を伝えていきたいと思っています。震災から10年経った今も立ち直れていない人はまだいるので、海の魅力を再確認することで少しでも元気になってもらえたら嬉しいです」と地元の人々に心を寄せていました。
地元メディアで取り上げられて母校への認知も広がったそう。先生によると、現在2年生の皆さんもやる気満々とのこと。来年度の新たな挑戦も、楽しみにしています。
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