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メガマウスに聞いた海のお話し 〜海と日本プロジェクト〜

2016.08.31

将来を担う中高生に、貴重なメガマウスザメを間近に見て、触れて、匂いを嗅ぎ、専門家と一緒に、外部調査や解剖調査に取り組むことで、海の環境と生命を感じとり、考えてもらう。

日程
8月11日(木)

開催場所
海遊館(大阪市港区海岸通1-1-10)

主催
海遊館

共催
北海道大学大学院水産科学研究院

参加人数
30名(大阪市立築港中学校17名、大阪府立市岡高等学校13名)

【メガマウスザメ解剖イベント概要】
今年初となる祝日「山の日」に、大阪市内の中高生30名が、「海遊館」で一風変わった体験学習に参加しました。テーマは、メガマウスザメの解剖。メガマウスザメは、大きな口(メガ・マウス)としなやかな胸びれをもつ、世界で108頭(このうち日本では20頭)しか見つかっていない珍しいサメです。
海遊館は世界最大級の規模を誇る水族館で、ジンベエザメやイトマキエイも飼育。今年4月13日に三重県尾鷲市の海で定置網にかかったメガマウスザメ(メス)を譲り受けることができたのも、解剖研究ができる設備やスタッフがそろっているため。そして、今回の体験学習では、「さめ先生」の愛称で知られる仲谷一宏(なかや・かずひろ)北海道大学名誉教授も登場(写真1)。この分野の第一人者である仲谷先生のアドバイスのもと、エイの研究者として知られる海遊館の西田清徳(にしだ・きよのり)館長が指揮をとり(写真2)、カッターを使い、見事な手さばきで飼育展示部の北谷佳万(きただに・よしかず)さんら飼育スタッフが解剖をおこないます。
このメガマウスザメは2日がかりで自然解凍されました。「保存状態がよかったので、予想より鮮度が保てました」(北谷さん)とのことです。

【メガマウスザメ観察】
講義室からバックヤードの作業場へと移動した参加者が、最初に目にしたのは、ブルーシートに包まれ、ガムテープで封印されたメガマウスザメと、それを取り囲む新聞記者やテレビ局のカメラマンでした(写真3)。
「発見されたメガマウスザメのなかには、生け捕りされて、発信機を装着できたケースがカリフォルニアで1例あります。しかし、こういうことはまれです。20頭も発見されている日本でも、北大水産学部や福岡、沖縄、神奈川、静岡などでは解剖しましたが、網から逃げたケースや放流したケースなどがあるので、すべて解剖できたわけではありません。海外の中学生、高校生でメガマウスザメに触ったことがある人はほとんどいないでしょう。まして、みなさんは、今日、解剖作業に参加します。とても貴重な体験をするんですよ」
ハンドフリーマイクを装着した仲谷先生の声が響きました。
「では、これからシートをはがします。ちょっと臭うので、気分が悪くなったら外の空気を吸ったり、救護室で休んでください」
西田館長やスタッフがくり返し注意をうながしましたが、口元を手でおおう人はいません。臭いがこもらないように、屋外と作業場を隔てるシャッターが開けられ、扇風機も回っていたからでしょうか。もっとも、くさいといっても、漁港の岸壁や魚市場に漂うにおいと同程度。腐臭がしなかったのは、保管状態がよく、鮮度が保てたからなのでしょう。

飼育スタッフの手でおもむろにブルーシートがはがされていきます。ざわついていた作業場が静まりかえりました。
最初に現れたのは大きな頭部。海中では締まっているのでしょうが、大きな口元は筋肉がゆるみ、つき立ての餅のように、だらり、べたりとゆがんでいます(写真4、5)。
「触って、皮膚の感触を実際にたしかめてみましょう」
メガマウスザメについて講義を受ける前に、その姿を見ておくだけだと思っていた参加者は、まだ、制服姿のまま。それでもためらわずに近づいて触りはじめました(写真6、7)。
「うわあ、ザラザラしてる!?」
サメ肌を確認して驚きの声をあげる参加者もいれば、黒く鋭い小さな歯に触れて、「キャ〜、歯がすごい!」と叫ぶ人もいます。メガマウスザメに特徴的なよく伸びるノドのあたりに触れて、「ブヨブヨしてる!」と感心する声も。みな、「すごい、すごい」の連発です。

【仲谷先生によるメガマウスザメに関する講義】
メガマウスザメは、1976年にハワイのオアフ島で初めて発見されたとき、シーラカンスと並ぶ20世紀最大の魚類学的発見といわれ、世界の注目を集めました。
「漁師さんなどはそれ以前に見ていたかもしれませんが、研究者の目に初めて触れて、新科新属新種のサメとして公表されたのが1983年だった」と仲谷先生。以来、圧倒的に発見数の多い台湾をはじめ、日本、フィリピン、米国西海岸、西オーストラリア、セネガル、ブラジルなど太平洋、インド洋、大西洋の温熱帯海域で見つかっています。
日本で見つかった20頭のうち、福岡県の干潟で座礁して息絶えた1頭をのぞき、19頭は紀伊半島の熊野灘から東京湾に至る太平洋側で見つかっています。
「生きたまま捕獲できれば、海遊館で飼育しながら、メガマウスザメの生態を研究できるのですけどねえ」と西田館長がぼやくとおり、日本で発見された個体は、生け捕りを試みたものの網から脱出したものや、定置網にひっかかっているところを救出されて放流されたもの、標識をつけられて放流されたもの、魚市場に水揚げされたものなど、いずれも生きたまま水族館に運ばれたケースはありません。
しかし、沖縄の美ら海水族館や福岡のマリンワールド海の中道などでは、標本そのものが展示されているので、実際の姿をたしかめることができます。また、静岡の東海大学海洋科学博物館や京急油壺マリンパークなどには剥製が展示されています。

メガマウスザメは、台湾の沿岸で発見数が多く、日本でも数多く見つかっていることから、黒潮に乗って台湾方面からやってくるのではないか?と考えられるそうです。とはいえ、なにせ発見例が少ないため、現時点では、沿岸から沖合の水深12〜200mあたりに生息しているというぐらいしかわかっていません。

メガマウスザメの特徴は、
・体は太く、頭部は大きい。口は巨大で、体の前端に開き、上顎(じょうがく/うわあご)を突出させることができる。両顎歯は非常に小さい(写真8、9)。
・第一背びれは、胸びれ直後に位置し大きいが、第二背びれと臀びれ(しりびれ)は小さい。胸びれは非常に長い(写真10)。尾びれは大きく、下葉(かよう/V字型をした尾びれの、くびれ部分からから腹側)が伸長する(写真11)。
・ひれの縁辺部周辺や頭部腹面には、細かな網目状に溝が走り、ウロコが細かにわかれている(写真12)。
・上顎前面には白色横帯がある。下顎(かがく/したあご)の腹面は銀白色で、小暗色斑(しょうあんしきはん/小さくて暗色の色むら)がブチ状に散在する(写真9)。
・胸びれ腹面は白色で、前縁は黒色(写真10)。
・胸びれは軟骨が多く柔軟なため、飛行機の翼のように硬い胸びれをもつ一般的なサメとは異なり、胸びれを支えている軟骨が肩帯(けんたい)に直角につくため、ひれを前後に動かすことができる。また、ひれの縁辺部周辺に細かな溝が多数あり、これらの特徴から遊泳速度は遅く、ゆったり泳ぐと考えられる(写真10)。

スクリーンに映し出されたメガマウスザメの写真や図表を見ながら仲谷先生の話を聞いていた参加者の表情は、真剣そのもの。なかには身を乗り出して聞いている人もいたほどです(写真13)。
「メガマウスザメは、名前の由来ともなった大きな口をもっていますが、食べているのはプランクトンです。体全体にウロコがありますが、ノドの部分の皮膚はやわらかく、引っ張ると倍くらいまで伸びる。ふつうならホルマリンに漬けておくと、皮膚は硬くなってしまいますが、メガマウスは硬くならず、ゴムのように伸び縮みするんですよ」と仲谷先生。
これらのことから、メガマウスザメの食事方法については、次のように推測できるそうです。

①プランクトンの群れを発見すると、口を大きく開けたまま前進して海水を取り込む。
② 舌を後ろに引いて、口の中いっぱいに海水を満たす。
③そのまま泳ぎつづけ、水圧でノドのゴム状の皮膚を伸ばす。
④ノドがふくらんで、さらに海水が入り、上顎と下顎の両方をグイッと前に押し出して口の中の容積を増やし、限界まで海水を口にふくむ。
⑤ 顎を閉じ、口を閉めたまま、前方に突き出した両顎を元に戻す。
⑥えら穴が開きはじめ、舌を前に押し出し、ノドの筋肉を引き締める。
⑦口の中の海水が、えら穴から体外に出る。このとき、えら穴の内側に密集している鰓耙(さいは/ウロコがたくさん生えた指状の突起物)にプランクトンが引っかかり、これをゴクリとのみ込んで、胃に押し流す。

仲谷先生の計算では、全長5mのメガマウスザメが口を広げたときの容積は約600リットル。これは、ドラム缶3本分に相当します。上記のとおりノドがふくらむので、実際にはもっと大量の海水が入ると考えられているそうです。
「これまでの発見例からいろいろとわかったこともあるのですが、正確なことはまだ解明されていません。国際自然保護連合の“絶滅の恐れのある生物種のレッドリスト”では、軽度の懸念がある種(LD)と評価されていますから、今日の解剖も含めて、調査研究を進めていくことが重要でしょう」と語る仲谷先生は、メガマウスザメが発見されたと知らせを受けると、現地に急行し、調査をおこなってきました。
1時間の講義終了後、着替えて、いよいよ解剖開始です。



【メガマウスザメ解剖】
メガマウスザメの解剖作業は、前出の北谷さんを中心に、飼育スタッフによって進められました。今回、解剖するのは頭部やひれをのぞく内臓部分と背骨。解剖の前にもう一度、仲谷先生が実物を前に説明をおこない、つづいてスタッフの指導のもとで、参加者が全長や体の各部を測定。棒とメジャーを使って、緊張した面持ちで作業を進めていきました(写真14)。
さらに、えら穴や口の中に手を入れて、舌や鰓耙(さいは)の形状を確認。「わぁッ、ねばねばしてる!」、「モチモチしてる!」などと、それぞれに感想を口にしています。最初に触れたときは、おっかなびっくりでしたが、用意されたゴム手袋を外して、素手で触っている参加者もいます。徐々に、メガマウスザメの体内へと近づきつつありました。
北谷さんがカッターを手にしました。作業場に緊張が走ります。腹部にカッターの刃が当てられました。スーッと刃が滑りました。スマートフォンを手に撮影する人、固唾をのんで見守る人、ちょっと後方から覗き見る人・・・、反応はいろいろです。スケソウダラの身のように白っぽい色をした、厚さ5〜6cmほどの筋肉が露出しました。そして、筋肉の下からツルっとなめらかな肝臓が現れました(写真15)。
「これが肝臓です。触ってみましょう!」と仲谷先生。
暑さと臭いに耐えられず2名の女子が退席していたものの、それ以外の参加者はみな積極的に観察し、手で触れ、カメラを近づけて写真を撮っています。ものすごい好奇心!
「マグロの解体は見たことがあったんですけど、サメの解剖は初めて。しかも、それが幻のメガマウスザメなので、今日は参加できてよかったです」と中学生の女子。
「高校では生物をとっていて、こんな機会はないからと、先生に勧められて参加しましたが、メガマウスザメは思っていたよりデカくて圧倒されました。でも、触ってみると、ぷにょぷにょしていて、ゾウみたいな感触でした」と高校生女子。
一方、海遊館の近くに住み、釣りが趣味という中学生男子は、タブレットで盛んに写真を撮影。「下顎の部分を触ったら、ぶよぶよしていてゼリーみたいだった。めったに見られないサメなので面白いです。将来は、魚でもなんでも、生き物に関わる仕事に就きたいです」とメガネの奥の目を輝かせていました。
肝臓、膵臓、胃、腸、子宮、卵巣、脊柱管の解剖と、胃の内容物の確認を終えたころには、すでに午後4時近く(写真16、17、18、19)。屋外は33℃の猛暑。暑さを忘れるほど夢中で挑んだ解剖体験でしたが、そろそろ撤収の時間です。
「サメって面白い!」
こんな声があちこちから聞こえてきました(写真20)。
好奇心のほこ先は、メガマウスザメから500種いるといわれるサメの世界へと広がりはじめたようです。




写真16、17
胃と腸(写真上)。腸を切り開いたようす(写真中央・左)。胃液で溶けたプランクトン(写真中央・右)。未消化のカタクチイワシ(写真下・右)。


その他
メディア掲出
8/11 「毎日放送 voice」「テレビ大阪ニュース リアル」 (テレビ)
8/12 朝日新聞デジタル(web)
8/12 毎日新聞(新聞)
8/12 朝日新聞(新聞)
8/13 大阪日日新聞(新聞)

イベントレポートは実施事業者からの報告に基づき掲載しています

日本財団

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