水の輪:三陸能舞台~海と日本PROJECT~
2019.02.13
水の輪:三陸能舞台は、日本財団が推進する「海と日本プロジェクト」のサポートプログラムです。豊かな東北の三陸沿岸の海をテーマにした新作能を上演することで、もう一度海と向き合い、海と共存する未来をつくるきっかけを作りました。
公益財団法人山本能楽堂は、2018 年8 月15 日、16 日と岩手県大船渡市越喜来地区で、震災後、今年初めて越喜来漁港で「三陸港まつり」が開催されることを紀念して「海と日本 水の輪:三陸能舞台」事業を実施しました。ユネスコ世界無形遺産の能楽と三陸に伝わる民俗芸能が出会う5つのプログラムにより、三陸の海の美しさ、豊かさを芸能の力で再発信し、次代へと三陸の海の魅力を伝えていくことを目的としています。
古典芸能の「能」と地域に根付いた三陸の郷土芸能が一緒になって公演をすることで、両者のつながりや営みを改めて検証し、豊かな東北の三陸沿岸部の海をテーマに結び付け、三陸のこどもたちと一緒に新たな能の作品を一緒に作り上げることで、想いを共有し、豊かな三陸の海からの恵みを再認識したいと考え実施しました。
日程
① 2018年8月15日(水)16:00~17:30
② 2018年8月16日(木)15:30~16:00
③ 2018年8月16日(木)17:00
④ 2018年8月16日(木)19:30~21:30
⑤ 2018年8月16日(木)18:00~21:00
開催場所
① 浦浜芸能伝承館
② 大船渡市立三陸公民館
③ 円満寺
④ 越喜来漁港特設ステージ
⑤ 越喜来漁港 防潮堤
参加人数
約3,500名
主催
公益財団法人 山本能楽堂
トークセッション「海と生きる」
8月15日(水)浦浜芸能伝承館
16:00~16:30 「海に暮らす」 佐藤寛志
震災直後から全国のボランティア仲間とともに海に流されたがれきを撤去する活動を続けてきた佐藤氏に、三陸の海の美しさ、尊さについて語っていただきました。
佐藤氏は、震災直後に帰国しダイバーによるボランティア団体を設立。漁師とダイバーとの二人三脚で海底清掃や漁業再開へ向けた取り組み、磯焼け対策や心の復興をテーマにした写真展を開催するなど、三陸の海の復興に尽力。小学校の道徳の教科書にもその取り組みが掲載されています。
16:30~17:30 クロストーク 能楽×浦浜念仏剣舞 山本章弘×古水力×武藤大祐
浦浜念仏剣舞・金津流浦浜獅子躍の保存会会長・古水 力氏と観世流能楽師・山本章弘氏による鼎談を実施しました。モデレーターには武藤大祐氏を迎え、三陸に伝わる民俗芸能とユネスコ世界無形遺産の能楽のつながりや差異について考察し、民俗芸能と伝統芸能の「今」そして「これから」について考えました。
山本氏は、大阪城近くの山本能楽堂(国登録有形文化財)を中心に「現代に生きる魅力的な芸能」として、能楽の普及と継承につとめています。古水氏はダンス批評家、振付家として、20世紀のアジアを軸とするダンスのグローバル・ヒストリー、および振付の理論を研究していらっしゃいます。
半能「石橋(しゃっきょう)」
8月16日(木)15:30~16:00 大船渡市立三陸公民館
「三陸港まつり」が大震災の後初めて、7年ぶりに越喜来漁港で開催されることを紀念して、能「石橋」を上演しました。「石橋」は、獅子の顔をした「獅子口」という名前の能面をつけた、白獅子と赤獅子の豪壮な舞が見ものです。獅子の舞は、古くは唐楽に由来し、世阿弥の時代には、猿楽や田楽に取り入れられていたものが能「石橋」になりました。
半能「石橋」の前には、被災地さんりくと県内陸のこども同士が大震災とお互いの芸能の魅力について語り合い、被災地の復興、未来に向けたエールを交換する「子ども芸能交流」がおこなわれ、その後に半能「石橋」を上演しました。
謡 奉納
8月16日(木) 17:00 円満寺
魂の鎮魂のための謡を円満寺で奉納しました。
奉納の前には、浦浜念仏剣舞、金津流浦浜獅子躍も奉納されました。
新作能「水の輪」
8月16日(木) 20:15~21:50 越喜来漁港特設ステージ
【三陸千五百松原】
能楽堂には鏡板があり、そこには必ず老松が描かれていて、能はその老松の前で上演されてきました。今回は、三陸の豊かな自然風景を取り入れながら、地元のこどもたちが、「能舞台の老松」をイメージして松の葉に海のイメージを描きます(500枚)。さらに、大阪をはじめ各地のこども達も三陸の海のイメージを松の葉に描き(1000枚)、両方の松の葉を組み合わせて15本の大きな老松を防潮堤の前に設置し、その前で、新作能「水の輪」を越喜来のこども達と一緒に上演しました。
今年第44回を迎える「三陸港まつり」のフィナーレを飾る「金津流浦浜獅子躍」「崎浜念仏剣舞」「黒岩鬼剣舞」「浦浜念仏剣舞」 の芸能の共演の中で、新作能「水の輪」を上演致しました。「水の輪」は水の浄化をテーマに環境問題についてこどもたちと一緒に考える新しい能楽です。今回、新たに、東北の自然や地名、三陸の美しい海の様子を公演内容に盛り込みました。
越喜来の海をきれいにするため、こどもたちが「気仙ことば」で登場し、美しく掃除をします。やがて越喜来の海から水の神様が現れ、越喜来の海の美しさをたたえ、越喜来の繁栄をことほぎます。
今回は、三陸と大阪を中心とした全国各地のこどもたちによる1500枚の老松の葉を使った、三陸の宇海の色に染まった15本の老松の前で、こどもたちと一緒に能を演じました。
海中映像『海に暮らす』上映会
8月16日(木)18:00~21:00 越喜来漁港 防潮堤
三陸ボランティアダイバーズ代表の佐藤寛志氏は、東日本大震災をきっかけに、湾内のガレキを取り除く活動を続けていらっしゃいます。 震災後約7年でのべ5千人のダイバーが参加し、ボランティア活動を通じて、海で人と人が繋がることを実感されています。漁師と二人三脚で、漁場の復活、再生を目指してきた佐藤さんによって撮影された、三陸の海の美しい映像を、越喜来漁港の防潮堤に投影しました。
昨年、大船渡市で大船渡出身の東京芸術大学・大学院生の千葉紘香さんによる三陸を舞台にした「海との対話」が上演されたことを継承し、今回は、「海との対話」の中の、佐藤寛志氏による 海中映像『海に暮らす』を越喜来漁港の防潮堤を使って上映します。みなさまに「豊かな三陸の海」のイメージを共有していただき、海との生活、海の偉大さ、海のあたたかさを感じていただければと思いました。
イベントレポートは実施事業者からの報告に基づき掲載しています