大阪湾を知ろう!2018~海と日本プロジェクト~
2018.08.30
大阪湾を知ろう!2018は、日本財団が推進する「海と日本プロジェクト」のサポートプログラムです。大阪湾の海遊館前岸壁の生物調査を行い、専門家による講義を受けました。
天保山岸壁(海遊館前岸壁)や大阪南港野鳥園干潟の水質測定や生物観察を通して、地元の海「大阪港」が大阪湾の中でどのような特徴のある海なのかを考えることを目的としています。
日程
5月26日(土)、6月10日(日)、7月14日(土)、7月25日(水)、8月4日(土)
開催場所
海遊館(天保山岸壁)、大阪南港野鳥園
参加人数
のべ78名
主催
海遊館
海遊館前の岸壁からカゴを引き上げ!
海遊館では、地元の大阪市立築港中学校、大阪府立市岡高等学校との連携により大阪湾の天保山岸壁(海遊館前岸壁)、ならびに大阪南港野鳥園の干潟の環境調査を行っています。今年度は、5月26日、6月10日、7月14日、7月25日、8月4日の計5回実施しました。
最終日となった8月4日は、築港中学校の参加予定者が学校行事の都合により減ったため、引率教員2名を加えても総勢で6名。少人数での観察会でしたが、この日は最高気温が37.1度を記録し、10時の開始時刻にはすでに30度を越え、炎天下のなか、汗だくで海遊館前の岸壁に沈めておいたカゴと付着板の引き上げ作業となりました。
ジリジリと真夏の日差しが照りつけるなか、海遊館飼育展示部普及交流チームの北藤真人さんと飼育展示部設備チームの有元健悟さん、飼育展示部普及交流チームサブマネージャーの川邉由里子さんが海中から引き上げ作業を行いました。その様子を見守る参加生徒諸君。ヘドロにまみれたカゴは、強烈な腐臭を放っています。引き上げたものは台車に載せ、100メートルほど離れた海遊館内の学習室へ移動。築港中の男子チームは、顔を歪めながら台車を押すのを手伝ってくれました。
海遊館前から引き上げたカゴの生物調査
カゴにはムラサキイガイ(ムール貝)が、付着板にはヨーロッパフジツボがびっしりと付着しています。カゴの中にはヘドロがたまって何も見えません。ところが、「魚だ!」「カニだ!」と、ピンセットを使って付着物を探っていた男子諸君から声が上がりました。ドロドロ、グシャグシャな付着物。それでも、「気持ち悪〜い」という声が聞こえていたのは最初だけ。次々とカニが見つかり、水槽に40匹ほど集まった頃には、生徒も引率の先生もカゴの前にしゃがみこんで、“獲物”探しに熱中した生物調査となりました。
カニはヨツハモドキ、タカノケフサイソガニ、イソガニ、ヒメケブカガニなどで、歯ブラシで泥を落としてから海水を入れた水槽に移すと、酸素チューブの先端に群がったり、カニ同士で団子状にくっついたり、見るからに生き生きと動きまわっています。海遊館前の岸壁付近には海底にヘドロが溜まり、底層の溶存酸素量は、充分に溶け込んだ状態を100%とすると、20%ほどしかありません。「生物が生きるのが難しい濃度で、この状態が長時間続けば生物にとって致命的です。」と、話す北藤さん。
「夏は水温が高く酸素を含む表層水と、底層水が混ざりにくくなっています。そのため、海底付近では溶存酸素量が減り、生物が死にやすい。そして、その死骸をバクテリアが分解する過程で酸素が消費されてしまうので、ますます溶存酸素量が低下してしまいます」
それでも、引き上げた生物は生きていました。観察された生物は、前述のもの以外に、ウミウシの仲間のウミフクロウ、イソギンチャクの仲間、ヒドロ虫(ヒドロチュウ)の仲間、ゴカイの仲間のチロリやタマシキゴカイ、棘皮動物のマヒトデ、ホヤの仲間のカタユウレイボヤ、魚類のクロソイ幼魚など、種類の多さには驚くばかりです。しかも、澄んだ海水に移し替えると、どれも動きが活発になりました。とりわけ、ヨーロッパフジツボの活動には目を見張るものがありました。
今回は、海岸動物研究者で大阪市立自然史博物館外来研究員の大谷道夫先生も講師として参加されていました。大谷先生が水槽を指し、「フジツボの先端部をよく見てください。何かヒラヒラと動いていますね。これは蔓脚(まんきゃく)といいます。フジツボは、この蔓脚を伸ばして海水中のプランクトンを獲って食べるんですよ。」と解説。海中から引き上げたときには、干からびて死んでいるように見えましたが、まさに、息を吹き返したという言葉がぴったりの活発な動き。酸素を嫌う嫌気性のバクテリアはともかく、多くの生き物にとって、いかに酸素が重要か思い知らされる光景です。
大阪湾の生物についての講義
1時間ほど生物調査と観察を行った後、後半は北藤さんと大谷先生が講師となり、勉強会が行われました。5月以降に行った調査のまとめです。
すでに別の環境学習で水質調査した結果をもとに、天保山岸壁、大阪港沖、関西空港島沖、阪南市(大阪湾南東部)の西鳥取漁港の各水域の水色や水温、塩分濃度などの違いを解説。さらに、大阪湾の全体的な海岸動物の分布の特徴や外来種の存在、生物多様性の重要性などについて両講師から講義を受け、2時間半に及んだ最終回は無事に終了。「海の宝アカデミックコンテスト」に応募したいと語る参加者諸君の作品は、きっと、大阪湾の魅力を伝える力作になることでしょう。
<チラシ>
イベントレポートは実施事業者からの報告に基づき掲載しています