子供時代の原体験が海への意識・行動と関係。「海と日本人」に関する意識調査
日本財団は、2019年5月から6月に実施した「海と日本人」に関する意識調査結果について、2019年7月12日(金)に発表しました。この調査は、現在の日本人の海への意識、行動の実態を明らかにし、日本人の海への理解や関心を高め、次世代に海を引継ぐために取組むべき内容や目標を定めることを目的に行われたものです。
前回の2017年の調査から2年を経て、「海へ行きたい派」、「行きたくない派」の対比であらためて海への意識・関心度を調査し、今回、その最新データが日本財団 海野光行常務理事より報告されました。
発表後には質疑応答が行われ、閉会後も個別取材が続くなど、各メディアから大きな関心が寄せられました。
日本財団 海野光行常務理事
今回の調査では一般的データに加え、「子供時代の原体験」と「海への意識や行動」との相関関係などを調査しました。
まず海へ「行きたいか/行きたくないか」の設問では、各年代とも7割が「海に行きたい」と回答し嬉しい結果が得られたものの、3割が海に行きたくないと回答しています。
この「海に行きたい人」「海に行きたくない人」それぞれの意識を深掘りしてみると、「海に行きたい人」の特徴としては、子供の頃に海に行った経験が「年2〜4日」以上が63%にのぼり、86%が「子どもの頃の楽しい海の思い出を持っている」「とても楽しい思い出がある」と回答。数だけでなく質的にも良い原体験を持つことが、現在の「海に行きたい」という意識と関係していることが伺えます。
また自らの体験からか9割以上が「子どものうちに海体験があることが大切」と回答しているものの「自分の子に十分に海体験を提供できている」のは25%と意外に少数であり、提供できていない理由として「海まで時間がかかる」「忙しい」など物理的な理由が多数あがっています。子どもを海へ連れて行きたいが実践できていない歯がゆい状況があるようでした。
次に「海に行きたくない人」の特徴としては、子どもの頃の海体験が「年に1日未満」と回答した人が68%もいました。海に行きたい人の63%が「年2〜4日」以上だったことと合わせてみると、海での原体験がその後の海への関わり方を左右するひとつの要因と言えそうです。
「海に行きたくない人」における「子どもの頃の海体験は大切」との回答は5割程度にとどまり、次いで「わからない」という想像ができない人の割合が大きいのも、原体験の少なさが関係しているのかもしれません。また「自分の子に十分に海体験を提供できていない」割合は8割以上で、理由は「疲れる」「特に必要と思わない」「海を好きではない」「海へ行った経験が少ないため積極的には海へ行かない」など、海へ行きたい人と比べて心理的な理由でのポイントが高い点も特徴的でした。
海を守る行動についての設問でも、海に行きたい人と海に行きたくない人の回答には差がみられました。海に行きたい人は「浜辺で自分たちが出したゴミを持ち帰る」「生活排水に配慮している」など、自分の行動が海とどう関係しているか意識している割合も高いという結果が現れました。
一方、海に行きたくない人は「海の豊かさを守ることを意識して行動している」割合が相対的に低く、特に「浜辺で自分たちが出したゴミを持ち帰る」割合には大きな開きがありました。ただ、例えば「ペットボトル回収機が利用しやすい場所にあれば利用したい」が61%を示すなど「海を守る活動への参加意向」は高いことから、参加したい気持ちがあるもののどう行動したら良いかわからない、という状況があるらしいことが推察されます。
今回のこうした調査結果を踏まえ、日本財団では今後のさまざまな施策、取り組みを推進していきます。
①行きたい派、行きたくない派に関わらず、 親子でともに海への楽しい学びにつながる機会と体験の提供
②自治体・教育機関や民間企業などのあらゆる機関を通じて誰もが参加できる海洋活動の充実
③海と生活の関係性を理解できる海洋リテラシーの促進とベー スとなる科学的根拠の充実やツール開発
④海の日の固定化を含む活動の活性化
詳しい調査結果は、こちらからご覧ください。
「海と日本人」意識調査結果