アートに触れて海を思う。アーティストたちとのコラボイベントを開催
アーティストからの「海からの手紙」に触れて海の未来を考えるコラボイベントを沖縄県で開催しました。
2021.09.30
アートを通して海の問題を “うちなんちゅ”へ伝えたい、海の未来へつなげたいと、海の日からの4日間、海と日本プロジェクトin沖縄県と県内アーティストたちによるコラボイベント「海からの手紙〜アートで伝える展示会〜」が開催されました。
会場となったのはサンエー浦添西海岸パルコシティ。沖縄県最大級の商業施設で、連日多くの来場者が訪れました。
イベントでは海洋ごみをモチーフにした作品や実際の漂着物の展示、海の豊かさとともに海が抱える問題と海を守るための活動などもたっぷりとご紹介。
唄や三線の音に合わせて絵を描いていくライブペイントや各種ワークショップなども催され、家族連れなど多くの来場者たちの関心を集めました。
好評を受けてイベント後の展示期間は1ヶ月間延長され、来場者数は約2000名にのぼり、来年度の第2回の開催も予定されました。
今回はこのコラボイベントの立役者でもある、推進パートナーの島田春奈さんに、イベント開催までの紆余曲折やいちばん伝えたい思いなどを伺いました。
海の現実を変えるために、海の素晴らしさを伝えたい
このコラボイベントの企画・運営に携わったのは、シーグラスアーティスト・島田春奈さんを中心にした実行委員会。
浦添市でカフェを営むと同時に、ビーチクリーン活動やシーグラスアート制作などパワフルに活動されている島田さんは、これまでも個人で展示活動などを行なってきました。そうした活動のなかで海プロとも出会い、推進パートナーに登録。今回のコラボイベント開催に至っています。
島田さんが伝えたいのは、「海ごみ問題=海の素晴らしさ」だと言います。
「私は沖縄出身ですが、20歳のころ東京のお台場を訪れて、黒い砂浜にびっくりしたんです。そのとき初めて、地元の海の美しさ、素晴らしさに気づきました」
そしてさらに、地元の海の問題について、
「昔は、沖縄県民は県外へ出る機会が少なかったので、地元の良さに気づいていない人も多いんです。それに働くことに一生懸命だから、海で遊んでいるのは観光客、つまり海を汚すのも観光客だろうと思っているようで」と指摘。
決して悪気などはなく、単なる認識不足なのだと島田さん。
「街のごみが海洋に流れ出ている現実や、自分たちが出したごみが海を汚している可能性を伝えて、まずはうちなんちゅから変わっていかないといけない、と思い始めたんです」
まずは地元の海の素晴らしさを知り、自分たちの海を守るために意識を変える、世界中の人が同じように地元をキレイにしていけば、世界も変わる。
「変わるためには、まず伝えていくことが大切だと思いますが、私一人では力不足。ファンにリピートしてもらうだけではなく、もっと幅広い人たちにも伝えていきたいと思いました」
いざ、イベント実施に向けて計画スタート
そこで、多くの人に伝えるために、大きな会場で展示ができればと考えたものの、会場となる大手企業へのアプローチ方法がわからず戸惑ったそう。
「大企業に対して私にできることといえば、熱意をぶつけることくらい。そこで以前からのお付き合いで信頼もしていた海プロ沖縄事務局さんに相談したんです。企画書作りや、実行委員会の立ち上げなど、細かくサポートいただきました」
そして島田さん自身は、参加してくれるアーティストたちを募っていきます。「SDGsを流行りではなく、想いを持って実際にアクションを起こしている方々に参加いただきたいと願っていました。Facebookでつながっているだけで、いつかお会いしたかった人たちに声をかけさせてもらって。今回はじめてご縁が繋がった人にもたくさんご参加いただけました」
コロナ禍で開催延期になり1年猶予ができたことも功を奏しました。4団体から14団体に参加数が増え、結果、10代から50代まで幅広い年代のアーティストや活動家たちが、それぞれの思いを表現してくれたそう。
「表現も伝え方も皆さんそれぞれ違うので、不特定多数の来訪者に何かしらの気づきを持っていただけたのではと思います。専門家の方々とも連携できたので、説得力を持って伝えることができたのも大きかったです」
メンバーを集めてコンテンツを増やし、世界を広げて多くの人々に伝えられたと手応えを感じている様子。
「これも今回の会場の大きさだからこそ、できたことだと思うんです。パルコシティさんには、最初にお会いして思いを伝えた段階で快諾いただいて、イベント開催時には『来年もやりましょう』とお声がけいただいたんです。本当にありがたいです」
尽きない思いが向かう先。海プロと一緒にやりたいこととは
そして来年の開催に向けて、島田さんはすでに計画していることがあるのだとか。
イベントで行ったワークショップの参加者に発達障害のお子さんたちがいらして、高い集中力で、とても上手にシーグラスアートを完成させ、マスク越しにいい笑顔を見せてくれたそう。
この出会いから思うところがあって、「これからは自分のパワーと時間を、親御さんと一緒にこうした子供たちに向けていきたい、と改めて思いました。そして来年のイベントでこの子たちが作った作品をお披露目したい。純粋な作品だからこそ人々の心を打つものがあるのではと思うんです」
個人開催のイベントとは異なる、大規模なイベントだったからこその出会いや発見が、島田さんご自身の可能性も大きく広げてくれたよう。
そして今後、もうひとつ、海プロと一緒にやりたいことがあるのだとか。
「児童施設とご縁があるんですが、沖縄に住んでいても海に遊びに行けない子どもは多いんです。そうした子どもたちに、海の素晴らしさを知るきっかけをつくってあげたい。私一人では実現が難しかったのですが、海プロと一緒に子どもたちに伝えられたら。それが、未来につながると思うんです」
と次なる目標を教えてくれた島田さんの思いは、海のように広く大きく、これからも輝き続けるのだろうなと眩しく感じました。