愛媛県立長浜高等学校水族館部がクラゲ予防クリームを企業と共同開発!
高校生たちの研究から、海にもクラゲにもやさしいクラゲ予防クリームが商品化されました。そしてこの夏、日焼け止め機能を追加した新商品『JELLYS GUARD SUN SCREEN』をラインナップに追加!
2021.08.16
“駆除ではなく危険を緩和して海洋生物との共存を目指す”。そんな生き物にも環境にもやさしいクラゲ予防UVクリーム『JELLYS GUARD SUN SCREEN』が2021年4月に発売されました。
これは海と日本プロジェクト推進パートナーの愛媛県立長浜高等学校の研究を発端に、静岡県の株式会社エイビイエスとの共同開発によって発売したものです。
発端となったのは、それまで多くの研究者が長年解明できなかった世界的大発見となる研究でした。
今回は、その長浜高校水族館部の顧問である重松洋先生と、研究班メンバー1年生の重松そらさんと相原冬奈さんにお話を伺いました。
高校生の世界的発見に世界が注目!
愛媛県大洲市にある長浜高校は、校内に水族館を有する全国でも珍しい高校です。その企画から運営まで全て高校生自らが行なっていて、月に1度の一般公開日には多くの人が訪れます。
運営に携わる水族館部には、イベント班のほか、繁殖班や研究班があり、今回の商品化のきっかけになった研究も、研究班の先輩たちから引き継いできたテーマの一つでした。
その研究成果は、2014年の「第58回日本学生科学賞」で最高賞の内閣総理大臣賞を受賞し、その後も国際的な科学コンテストでさまざまな賞を受賞しています。
「当時の生徒たちの気持ちを代弁すれば、それはもう驚きと喜びで大興奮の発見でした」と教えてくれたのは顧問の重松先生。
受賞した研究テーマは「ハタゴイソギンチャク刺胞射出の秘密」。
なにやら難しそうですが簡単に説明してもらったところ、水族館で飼育しているカクレクマノミがなぜ刺胞動物であるイソギンチャクに刺されないのか?という素朴な疑問について研究したものだとか。10年近い研究の末、カクレクマノミはマグネシウムイオンを身に纏うことで、イソギンチャクの毒針から刺されないことを発見しました。
「当時1年生だった生徒たちは、もともとカクレクマノミの幼魚の行動について研究を進めていたのですが、その年は不思議と実験材料となるカクレクマノミが全く繁殖せず、やむなく先輩が残した研究のヒントから別の研究テーマに変えたんです。そこからわずか1ヶ月ほどで発見に至りました」
まさに「失敗は成功の母」を地で行く展開です。国内外で数々の賞を受賞し注目を集めたことで、その研究をもとにクラゲ予防クリームの共同開発をと打診する電話が舞い込んだそう。2017年9月のことでした。
商品化への道のりは困難の連続…
共同開発の声をかけてくれたのは、静岡県にある株式会社エイビイエス。
「お電話いただいた営業担当の小関様ご自身がサーファーで、クラゲの被害を人一倍実感されていました。そこで、業界からニーズの高い国産のクラゲ予防クリームを作りたいとおっしゃって。我々水族館部の活動にも共感いただき、会社としても水族館部を応援したいという気持ちを強く感じました」
そこから話はトントン拍子で進んだものの、思いの外、研究開発の道のりは長かったのです。
開発の過程を見てきた重松先生は「研究成果を商品化するのは、また違った難しさがありました。研究対象となるクラゲの入手は極めて困難で、毎週のように海に探しに行きました。また、採集できない時期には購入しましたが、これが滅多に入荷しないばかりか高額でした。また有効成分の配合調整が難しく、クラゲ予防効果は高くても時間経過とともにクリームが分離したり、いよいよ完成かと思いきやSPF値が足りずにボツになったり…」と、気長に忍耐強く取り組まざるを得なかったと振り返ります。
「私はこれまで、生徒たちが研究成果を出せたことだけでも満足していましたが、その成果が商品化され社会に役立つことで初めて、本当の意味で研究が完結する、そんなことを気づかされました」と、インパクトが大きかったことが伺えました。
(左)試作品の実験の様子 (右)国内で最も毒性が高いと言われるハブクラゲでも実験
高校生たちの次なる研究、活動にも注目を
商品化が実現した今、現在はどのような研究が行われているのでしょうか。
研究班1年生の重松さんは、「JELLYS GUARDには有効成分として、マグネシウムイオンとカルシウムイオンが含まれています。マグネシウムイオンがクラゲのどこに効いているのかについては先輩たちが解明されたので、今度はカルシウムイオンがどう作用するかを研究しています。それに、クラゲ頼りではなかなか研究が進まないので、人工繁殖に成功しているポリプ(クラゲの幼生)を用いて、クラゲの研究ができないか試しているところです」と現状について教えてくれました。
同じ研究班1年生の相原さんは「新作の発売の際に、商品開発に携わっていた先輩が、とても嬉しそうにしているのを見ていたので、自分もそういう研究がしたい!と思いました」と意気込みを聞かせてくれました。
さらに重松先生は「今後は海外展開も考えています。オーストリアには殺人クラゲとも呼ばれる地球上で最も強い毒性を持つクラゲがいますし、世界中のクラゲで困っている人たちに、私たちの商品が役立つことを願っています。私たち水族館部の夢は、かつてこの長浜にあった水族館の復活です。JELLYS GUARDの売上の一部は水族館部に還元されます。JELLYS GUARDが誕生したことで、大きな夢にも一歩近づきました」と、水族館部としての夢を語ってくださいました。
コロナ禍で発売当初は芳しくなかった販売状況も、7月中旬以降に急に伸び始めてきたとのこと。研究が認められ、商品の社会的認知も進んでいることが、高校生たちの新しいモチベーションにつながっている様子です。
クラゲ予防UVクリーム『JELLYS GUARD SUN SCREEN』は通販サイト等で販売しているのでぜひチェックしてみてください。
最後に、海と日本プロジェクト推進パートナーとしての活動についても伺ってみたところ、「新型コロナが一段落したら、水族館の一般公開日にカフェを開く予定です。そこで紙の容器を使うなどして、プラスチック問題について情報発信をしていきます」と相原さん。重松さんも「海洋ごみ問題を啓発するのぼり旗を海岸線に並べていく活動をしているのですが、今年はエリアを広げる予定で、今日もこのあと海岸で作業してきます」と活動的。
海ごみゼロアワードにもエントリー済みだそうで、次世代を担う高校生たちの今後の活躍からますます目が離せません。
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