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海と共にどう生きるか。海と人とを学びでつなぐ3710Labの教育プロジェクト<助成事業者インタビュー>

“海洋教育”と “海洋環境デザイン”の多彩なワークショップは子どもにも大人にも大人気

2024.08.01

海と共にどう生きるか。海と人とを学びでつなぐ3710Labの教育プロジェクト<助成事業者インタビュー>

昨年9月末、東京で「第2回 国際海洋環境デザイン会議」を開催した一般社団法人3710Lab(みなとラボ)は、日本財団 海と日本プロジェクトの助成先団体として、継続して活動を続けている団体のひとつです。

“海と人とを学びでつなぐ”をテーマに、学校や社会に不足している“海を知る機会”をつくり、海と共にどう生きるかをみんなで探究していくプラットフォームづくりを目指して活動を続けています。
現在、取り組んでいる2つの助成事業のうち、「海洋教育事業」では学校や企業、地域などと一緒に教育プログラムをつくってワークショップを実施しています。
またもうひとつの「海洋環境デザイン教育プロジェクト」では、高校や大学で海洋環境デザインのワークショップを行うほか、年に1回「国際海洋環境デザイン会議」を開催。2023年度の第2回会議では初めて展示会も企画し、これまで発信してきた“海洋環境デザイン”という概念の認知に手応えを感じているそう。

みなとラボでは、海洋環境と人間の共生のためのデザインを“海洋環境デザイン”と定義して、望ましい関係を築くことを目指してきました。
今回は「海洋環境デザインという言葉が、これからもっと一般化されていくことがひとつの目標です」と言う、代表理事の田口康大さんにお話を伺いました。

海洋教育事業では海をテーマに子どもたちの好奇心を刺激するワークショップを実施

みなとラボの助成事業のひとつである海洋教育事業は、海をテーマにした教育プログラムを学校現場や地域に入って一緒につくり、実践していく取り組みです。海と人の共生に向けたワークショップを各地で行っています。
これはかつて、東京大学の教員として田口さんが従事していた日本財団との連携事業のなかで、大学としてはできない活動をみなとラボが担っていた部分でもありました。

「ワークショップの対象は主に幼児や小中学生で、子どもたち自身のこれをやりたい!というモチベーションを引き出してあげることを心がけています。そこにプロが関わることで想像を上回る一歩先の領域にまで踏み込んでもらえたらと努めています」
そうしたワークショップにイキイキと取り組む子どもたちの姿を目にすると、保護者たちもやってみたくなるようで、大人向けにも実施して欲しいというオーダーも入ってきているそうです。
海洋教育事業では海をテーマに子どもたちの好奇心を刺激するワークショップを実施01
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「例えば鹿児島県の与論町でのワークショップでは、子どもたちに島の魅力を独自の視点で掘り起こしてもらい、執筆も撮影もすべて島民だけで制作する『ヨロンジャーナル』を2020年度と2021年度に発行しましたが、今年度は、『大人にもデザインリテラシー、デザインスキルを提供したい』『どんな視点が必要なのか教えて欲しい』との要望を受けて大人向けのワークショップを計画しているところです」

海洋教育事業では海をテーマに子どもたちの好奇心を刺激するワークショップを実施04

海洋環境問題にアプローチする“海洋環境デザイン”とは

そんな海洋教育事業の活動を続けていくなかで、 “デザイン”という柱が立ってきたそうです。大きく影響したのは海洋プラスチックごみ問題。とりわけプロダクトデザイン分野ではプラスチックをどう使っていくのか、デザインはどう寄与できるのかを考える必要がありました。

そこで新たに立ち上げたのが、海洋環境デザインプロジェクト。
海と人との共生に向けたデザイン、“海洋環境デザイン”で、海洋環境問題の解決にアプローチすることを考えようというプロジェクトです。

海洋環境デザインのワークショップは、高校生以上、特に大学で多く実施しています。
深澤直人さんのような著名デザイナーを講師に起用されるなど話題も集めていましたが、知名度を狙ってのことではないそう。「たとえば知り合いのデザイナーとプラスチック問題について話していると、プラスチックをどう扱うかばかりに終始しがちなのですが、そこに地球環境や教育の視点を足してみると、共感していただけるんです。そうした方々が『一緒に取り組みたい』と協力してくださっています」

具体的なワークショップの内容は、実施先によってそれぞれ大事にすべき学習ポイントが異なるので、どんな内容が適しているのか、デザイナーも含めディスカッションを重ねて探っていくので、準備に3ヶ月ほどかかることもあるそうです。

そして、「少しずつ海洋環境デザインという言葉が知られてきて、みなとラボの存在や活動も知ってもらい各方面からお声がけいただけるようになったことに、大きな成果を感じています」という田口さんに、あらためて、デザインの力とは何か、お聞きしてみました。
「良いデザインというのは多くの人に届くんです。言葉であれ仕組みであれ、いいデザインは多くの人に届き広まっていきます。それがデザインの力だと思っています。
さらに福祉的な視点から、誰しもがデザインの力に触れられることを心掛けています。デザインが一部の関心層のものだけとなると、結果的に格差につながりかねない。だからこそ、離島など遠隔地域でのデザインワークショップの実施を大事にしていきたいと思っています」
海洋環境問題にアプローチする“海洋環境デザイン”とは01
海洋環境問題にアプローチする“海洋環境デザイン”とは02

「国際海洋環境デザイン会議」と「OCEAN BLINDNESS -私たちは海を知らない- 展」

昨年9月から10月の11日間で開催した「第二回 国際海洋環境デザイン会議」では、海洋環境問題についてさまざまな論点と視点に「デザイン」の座標をもって向き合いました。海洋環境デザインという概念をどう伝えていけばよいかという道筋が見えたこと、さらに今回はエキシビション「OCEAN BLINDNESS -私たちは海を知らない- 展」で、ワークショップの成果物など海洋環境デザインの具体的な事例を共有できたことも有益だったとのことです。

これまでは「概念はわかるけど、実際には何ができるのかわからなかった」という声があったそうですが、今回は具体化したモノやコトをさまざまなバリエーションで見せることができ、「こういうことか」「自分にもできそう!関われそう!」と、多くの人の興味関心につなげられたようで、田口さんも「海洋環境に対してデザインで何ができるかというモデルをひとつ示すことができたと思います」とホッとした様子です。

「興味深かったのは、会期中に複数の大学がゼミや授業で訪れたことです。学生に展示のレクチャーを行ったりしたのですが、そんな経緯からゼミの講評を依頼されたり、後に大学の授業に呼ばれることが多くなったことです。また、会期中に何度も足を運んでくれる方や、知人を連れて再訪してくれる方が多かったことも嬉しかったです。」と、感慨深げでした。
「国際海洋環境デザイン会議」と「OCEAN BLINDNESS -私たちは海を知らない- 展」01
「国際海洋環境デザイン会議」と「OCEAN BLINDNESS -私たちは海を知らない- 展」02

海の情報プラットフォームは海に頼って生きる日本にこそ必要不可欠

「海洋環境デザイン」という言葉を一般化していくことがひとつの目標ですが、みなとラボではさらに、海と人とのつながりが感じられるプラットフォームづくりを目指しています。

「今はまだ、海に関する情報や仕組みが“点”でしか存在していないと思うんです。
例えば具体的なプログラムや取り組みも、さまざまな分野で“点”として存在していますが、それぞれを俯瞰して全体を把握できる仕組みが不足していると思います。情報をワンストップで取得できて、やりたいことを相談できる場を提供したい。海と人との関わりの文化の集積と研究とともに、海と人との共生に向けた活動の推進拠点を作りたいと考えています。
海の資源に頼って生きている日本ですから、そろそろそうした基盤づくりが必要だと思います。生活を支えてくれている海は一緒に暮らしているのと同じようなものなので、「海に住まう」感覚を取り戻したいですね」

そんなプラットフォームづくりの施策のひとつになるのか、みなとラボの公式サイトにある、ちょっと耳慣れない「オポポ」の名称が気になり、聞いてみることに。
オポポとは、オーシャン・ポータル・ポート(Ocean Portal Port)の略だそうで、オポポを使うことで子どもたちが何か自主的に取り組める場を提供できればと開設されたものだそう。

「海と日本プロジェクトの他のプログラム参加者たちを中心に子どもたちが集まってきていて、いまどんな取り組みをしようかと話し合っているところです。その話し合いは子どもたちが主体となって行われます。記事をつくりたい、インタビューをしたい、カードゲームつくろう、海を知ってもらうアイテムをつくろう、など子どもたち同士でディスカッションが行われている様子です」

なんだかとても楽しそうですが、実は子どもたちだけでなく40代や60代など大人からも、このオポポ部への参加希望が多く寄せられているのだとか。
そんな状況を受けて、「本格的な活動を始める一歩手前で、ふらっと訪れて気軽に仲間と繋がれる、そんな場所になれればいいなと思います」と、ニーズにあわせて仕組みを柔軟に進化させていました。
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思い通りにはならない。わかるようでわからない。そんな海は対話する存在

そんな田口さんにとって海とはどんな存在なのでしょうか。お聞きしてみると、ひとことで言うのは難しいとだいぶ考えこんでから、
「自分を確認できる場所かなと思います。鏡みたいに、不安なときには何が不安なのかを投影して再確認させてくれたり、安心もさせてくれる。言って欲しいことも、言われたくないことも突き付けられてしまいますが(笑)」と、まるで家族について語っているよう。

さらに、「自分の中では『対話する存在』かもしれません。海も人も、自分の思い通りにはならない。わかっているようで、わからない存在。だからこそ向き合って、対話する。海を自分の中に持っておくことも大事ですね」

教育人間学が専門で、海の専門家でもないのに縁があって海洋教育に入っていった田口さんですが、最初は海洋教育をどのように社会の中に形作っていくのか、模索していたそうです。でも、海をテーマにした対話の活動を通して、海の思い通りにならなさ、対話の必要性みたいなものに接したとき、初めてその道筋が見えたそう。
「教育学者として海に向き合っている人っていないと思うので、いまは使命をもって取り組んでいます。そして楽しみながら取り組むことを心がけています」と笑顔です。
思い通りにはならない。わかるようでわからない。そんな海は対話する存在01

最後に田口さんから、今年6月に発売された書籍『OCEAN BLINDNESS 海洋環境デザインの未来』についてご紹介です。
海とのつながりが見えていない私たちのOCEAN BLINDNESSな現状へのアプローチとして多彩な海洋環境デザインの事例を紹介した本で、世界各地のアクションや建築、プロダクト等の海洋環境に寄与する取り組みも掲載されています。デザイナーを志す人、未来をよりよくデザインしようとするすべての人におすすめしたい一冊で、「この本を手掛かりとして、今後もいろいろとやっていきたいと思っているところです」とますます意欲的。

そして「第3回 国際海洋環境デザイン会議」の開催時期や内容は現在、絶賛協議中とのこと。続報を楽しみに待ちたいと思います。
思い通りにはならない。わかるようでわからない。そんな海は対話する存在02

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