海と日本公式サイトの最新ニュースをウィジェットで埋込み

<iframe class="uminohi-widget official-newest" src=" https://uminohi.jp/widget/newest/" width="100%" height="800" frameborder="no" scrolling="no" allowtransparency="true"><a href="https://uminohi.jp">海と日本PROJECT【日本財団】</a></iframe><script src=" https://uminohi.jp/widget/assets/js/widget.js"></script>

リアルな海の魅力と現状を伝える、ふくおかFUN<助成事業者インタビュー>

ダイバーによる海の現状報告。海を守るために、次世代の育成にも注力!

2025.01.16

リアルな海の魅力と現状を伝える、ふくおかFUN<助成事業者インタビュー>

「ダイバーにしかできない社会問題解決がある」と、福岡を拠点に活動をはじめて約10年という一般社団法人ふくおかFUNですが、2024年度の日本財団 海と日本プロジェクト助成事業として取り組んできたのが「海の魅力をリアルに体験!海とつながるプロジェクト」です。

取り組みは主に4つあり、ひとつは、体感した海の豊かさを守り伝えていくためにはどうすれば良いのかを子どもたち同士で話し合ってもらうシュノーケリング体験イベント「“ひろい”海の活動」です。
また2日間の日程で実施した環境保全活動の普及啓発イベント「THINK for the OCEAN」では企画から運営まで10代から20代の若者たちが中心となって活動しました。
学校や企業で授業・講演をすることにより海の現状を伝える「海の学校」は、テーマ設定から対話を重ねながら場づくりを行っています。
そして、海中の変化を記録し続け社会に共有していくために「潜水調査・撮影」を実施しています。

活動を支えるボランティアスタッフも常に40名ほど登録があり、その7割がダイバーとのこと。海のためにできることをしたいと集まってくれているそうです。

「環境活動には終わりがありません。でも諦めたら終わりです。だから、やるからには楽しんでやっていきたいと思っています」という代表理事の大神弘太朗さんと、スタッフの大江由美さんに、これまでの取り組みや実際の活動内容について伺いました。

シュノーケリング体験で子どもたちにリアルな海を感じてもらう

まずは、助成事業「海の魅力をリアルに体験!海とつながるプロジェクト」の大きな4つの取り組みについて、一つずつ紹介してもらいました。

シュノーケリングの体験イベント「“ひろい”海の活動」には今年、小学3~6年生の子どもたちとその保護者を合わせて約40名が参加されたそうです。
「都市部の海にはネガティブなイメージを持たれがちですが、実は博多湾にはたくさんの生き物がいることを伝え、海の魅力や課題について考えてもらうイベントです。
『初めて海に入ったけど海がしょっぱい』と驚く子も多かったのですが、6~8人のチームで体験して感じたことや自分にできることをたくさん対話してもらいました。
“こうあるべき”を伝えるのではなく、個々の意見を対話によってブーストさせていくことが目的の一つです」と大神さん。

子どもたち全員が意見を言えるように、ふくおかFUNに所属しているさまざまな年代のスタッフもサポートしながら、「ごみ拾いをしよう」「ごみにならないようにモノを大事にする」「今日見た世界を伝えたい」と、今年も子どもたちから多様な意見が出されました。
シュノーケリング体験で子どもたちにリアルな海を感じてもらう01
シュノーケリング体験で子どもたちにリアルな海を感じてもらう02

若者たちの手でつくりあげた環境啓発イベント“THINK for the OCEAN”

また環境保全活動の普及啓発イベント「THINK for the OCEAN」は、福岡市主催の「環境フェスティバルふくおか」との連携イベントとして2日間にわたって開催しました。これはブース出展ではなく、若者たち自身でイベントをつくるプログラムです。

数年前に大神さんが専門学校で教員を務めていた縁もあり、参加したのは専門学校生や大学生、若手社会人などで、企画から運営まで若者たちが中心となってつくり上げてもらいました。
準備したコンテンツも、海洋プラスチックアートや玄界灘でとれた魚介類を味わうことのできる飲食ブース、未利用魚を使ったドッグフードの販売、ブイで作ったスピーカーを使った音楽演奏や、高校生たちの古着ファッションショーなど多彩。

「当初は、別の助成事業団体であるイドベタさんとの共同企画として進めていたところ、福岡市からお声がけをいただいた環境フェスティバルの日程とちょうど重なってしまって。折衷案として“連携イベント”としてTHINK for the OCEANを同日開催させてもらうことになったんです」

環境フェスティバルが扱うテーマは海のほかに山や川、エネルギーなどさまざまで、それぞれ独立したブースが多数出展されます。
運営全体をサポートする若いスタッフたちには、事前に「自分たちが発信するだけでなく、せっかくだから他団体の話や考えを聞いていこう」と伝えて、会場内を巡ってたくさん対話をしてもらったそう。
そしてステージから数時間に一度、環境問題についてメッセージを発信するなど、連携イベントとして会場を一つにつなぐ役目も担えたようです。

「スタッフ全員がイイ顔をしていました。『20代若者が考える自然環境の未来』と題して発言する機会をつくるなどしたことで、拍手をもらう場面が全員にあったので、みんなが活躍したイベントになったと思います」と嬉しそう。

イベントには2日間で3,000名を超える方々が来場し、「いろんなことが体験できた」「スタッフの方といろいろ話せて勉強になった」などと好評で、子どもも大人も「ごみが落ちていたら拾おうと思った」と意識を変えるきっかけになったようです。
若者たちの手でつくりあげた環境啓発イベント“THINK for the OCEAN”01
若者たちの手でつくりあげた環境啓発イベント“THINK for the OCEAN”
若者たちの手でつくりあげた環境啓発イベント“THINK for the OCEAN”03

現状のリアルな海を伝える「海の学校」と「潜水調査・撮影」活動

「海の学校」は、学校や企業で海の現状を伝え、海の魅力や課題についてお話をする活動です。2024年度は27回開催して、小・中・高・大学、一般市民を含めて聴講者は約1,600名になりました。

テーマ設定は毎回、主体者側と一緒に検討して、学術的な要素も加えてわかりやすく伝えていきます。
例えば、博多湾には緑色のマイクロプラスチックが多いのですが、これは学校や施設から側溝や川を通って海へと流れ出てしまった人工芝の破片。知らず知らずのうちに海洋ごみを発生させてしまっていること、自分たちがマイクロプラスチック問題に直接かかわっていることを知ってもらい、海のために何ができるかを考えてもらったりします。

海中の変化を記録する「潜水調査・撮影」活動では、海が今、どのような状況なのかを把握するために、ボランティアダイバーたちと2024年度は11月現在で 44 日ほど潜って記録を続けています。そのデータは「海の学校」で海の現状を伝える要素としても活用しているそう。
現状のリアルな海を伝える「海の学校」と「潜水調査・撮影」活動01
現状のリアルな海を伝える「海の学校」と「潜水調査・撮影」活動02

守りたい環境があれば人の意識は変わる…団体設立のきっかけは20年前の原体験

ふくおか FUN の設立にあたっては、20 年ほど前にきっかけになった原体験があったといいます。
「大学時代に西表島を初めて訪れた時に、島民が自然を守っている姿を目の当たりにして、自分の住む博多はどうしてこんなに、ごみだらけなんだろうと愕然としたんです。
そうか、守りたくなるような環境があると、人はごみをなくそうという意識になるのだな…と感じました」

そこから大神さんはダイビングインストラクターの資格を取得。ダイビングショップに勤めながら「もっと世界中の自然を見てみたい」と思い、世界一周を目指して旅へと出発しました。2011年の東日本大震災をきっかけに帰国。南三陸町にボランティアダイバーとして入った時に、「ダイバーにしかできない社会問題解決がある」と感じたと言います。

「海中や海底のごみの回収もそうですし、海の状態をいち早く社会に伝えられる。また、それを有識者と共有することで学術的なアプローチが可能になります。
ただ資金が尽きれば、有能なボランティアダイバーも活動が難しくなってしまう。継続するためには社会構造も含めて考えないといけないなと。本気でやれるチームをつくろう、取り組み続けるためには組織化が必要だと考えたんです」
このような想いのもと、2014 年 12 月にふくおかFUNを設立されました。

設立当初とは体制が少し変わったそうですが、西表島の原体験から理念に掲げている「自然伝承」についても、その価値観やアプローチは変化しているのだとか。
「これまでは自分でつないでいこうという考えでしたが、それだと本質的な解決、自然伝承はできないと限界を感じました。
最近は、若手を育成して裾野を広げることに注力しています。協力者たち自身が、思うように動ける器づくりが必要だと。そうしなければ、本当の意味では海を守れないと思っています」

また、海と日本プロジェクトに関わって変化したこともあると言います。
「僕らの、例えば海中の変化を記録する活動などは一般には理解されにくく、事業化が難しいのですが、助成を受けるにあたって『社会課題として社会にインパクトを与えられるように、もう少しこうしたら?』とアドバイスを受けました。足りないものを補ってもらったことで、それが事業化の足掛かりになったんです。
また海と日本プロジェクトの福岡事務局(RKB)の活動に接することで、たくさんの人がいろんな関わりを持って活動していることを知りました。ステークホルダーを得ながら活動を大きくする方法などを学ばせてもらって、実際につながりもできて感謝しています」
さまざまな刺激を受けて、近年さらに活動が大きく広がっている様子です。
守りたい環境があれば人の意識は変わる…団体設立のきっかけは20年前の原体験

関係者も感涙。行政や学校、自治体とともに叶えたイベント開催の実績

「いまでは、たくさんの方から期待を寄せてもらっています。続けてきた活動が実を結んだのだと手応えを感じます。ふくおかFUNに職員として集い、変わらずに一緒に向き合ってくれる仲間がいてくれることも大きな成果です」と大神さん。

そんなスタッフのひとりである大江さんは、これまでの活動を振り返って、2020年に開催した海中海岸同時清掃イベント「FUNクリーンアップデー」を含む3日間が、特に印象深い出来事だったと教えてくれました。
「3日間連続で海洋ごみについて考えようというイベントでした。1日目に海中海岸同時清掃を実施し、2日目にその海岸からwebイベントを行って、3日目には回収したごみを小学校に持ち込んで、海洋ごみ問題についてリアルに学んでもらうという企画だったのですが、企画を実現させた関係者たちの連携が印象に残っています」としみじみ。

大神さんも、
「普段は運搬することの難しい海洋ごみを多様な主体と対話を重ねながら企画を進めたことで、無事にイベントを実現できました」
おかげで子どもたちには大きな学びになり、関係者みんなで涙しながら達成感を分かち合ったのだとか。
関係者も感涙。行政や学校、自治体とともに叶えたイベント開催の実績01

「どの活動にもストーリーがあって、その積み重ねで10年続けて来られたのだと思っています。
今年度は、河川と海の繋がりに着目した活動を展開していますが、そのきっかけは新しく入ってくれた若手職員の熱量でした。活動を続けるには本気であることが重要だと思っているのですが、本気を持った職員ががんばっています」と、また新しいストーリーが綴られているようです。
関係者も感涙。行政や学校、自治体とともに叶えたイベント開催の実績02
関係者も感涙。行政や学校、自治体とともに叶えたイベント開催の実績03

トライ&エラーは当たり前。諦めず、楽しみながらネイチャーポジティブを目指す

そして今後について伺ってみると、「目指すのはネイチャーポジティブの実現です」と宣言。
これは2030年までに生物多様性の減少を止めて、そこから好転・回復させようとする目標で、COP15やG7 2030年自然協約などにおいてもその考え方が掲げられるなど、国際的な認知度も高まっているキーワードです。ふくおかFUNでは、水産ではなく環境の面からもアプローチを考えていて、他自治体へも働きかけながら、海の声を河川流域や山へも届ける仕掛けづくりを2025年度から始める予定とのこと。

「ですが、どこまでできるか焦りもあります」とポツリ。
「実は今、かなり落ち込んでいるんです。全国的にですが福岡も例外なく、アマモの藻場がかなり消滅しているのを目の当たりにしたばかりで、心が折れそうです。
でも僕らが諦めたら終わってしまう。焼石に水かもしれないけれど、せめて福岡、九州を健全な状態にしたい。今は苦しい状況ですが、生き物がいっぱいの海にできると信じています。
環境問題には終わりがないので、諦めないことが重要。トライ&エラーが当たり前ですから。そしてやるからには楽しくやっていかないと!と思っています」と笑顔を見せてくれました。

Field&Underwater Naturalistsの略であるという「ふくおかFUN」のFUNには、楽しむという意志も込められているようです。
トライ&エラーは当たり前。諦めず、楽しみながらネイチャーポジティブを目指す01

「活動するなかでさまざまな主体と関わりますが、言葉や価値観、手法や意思決定のプロセスがそれぞれ違います。違うことを前提に、対話を諦めないこと。その先に協働が生まれると思っています。
とくに海の問題はクローズになっている部分があるので、オープンな環境をつくって、肩書きに縛られない活躍ができるよう、ふくおかFUNの“この指とまれ”に集まってもらえたら、と思っています」

活動スタートから11年目を迎え、ますます力強く躍動されていますが、これからも関係者との対話を重ねて、福岡の地で本気の協働を広げていかれることを期待していきたいと思います。
トライ&エラーは当たり前。諦めず、楽しみながらネイチャーポジティブを目指す02
トライ&エラーは当たり前。諦めず、楽しみながらネイチャーポジティブを目指す03