石垣島を丸ごと体感!島の成り立ちと構造を学び、自分たちと島と海の環境を未来につなげるくらし方を考える!「第2回 しまうみ探検隊in石垣~イシガキジマのつくり方、くらし方~」を開催しました。
海と日本PROJECTin沖縄県実行委員会は、サンゴ礁に囲まれた石垣島の島の成り立ちや構造と、人のくらしが島や海に与える影響について考える「第2回 しまうみ探検隊in石垣~イシガキジマのつくり方、くらし方~」を、2022年9月23日(金)~25日(土)に開催しました。
2022.10.21
海と日本PROJECTin沖縄県実行委員会は、サンゴ礁に囲まれた石垣島の島の成り立ちや構造と、人のくらしが島や海に与える影響について考える「第2回 しまうみ探検隊in石垣~イシガキジマのつくり方、くらし方~」を、2022年9月23日(金)~25日(土)に開催しました。
このイベントは、次世代へ海を引き継ぐため、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。
開催概要
今回の舞台は石垣島。県内最高峰の於茂登岳や、島の西側の海域には日本最大のサンゴ礁”石西礁湖”が広がる豊かな自然が魅力です。石垣島の成り立ちと構造を島を丸ごと体感しながら学び、島での人のくらしと石・土・水の関わりを理解します。また、海にやさしい畑づくりや商品開発など、海洋環境に配慮した島内での取り組みを体験します。今回の活動を通して、石垣島を題材に、サンゴ礁と琉球石灰岩を有する沖縄県の島々の構造と人のくらしの関係性について学び、豊かなサンゴ礁を未来につなげていくために、私たちには何が出来るのかを考えてもらうことが狙いです。
日程
2022年9月23日(金)~25日(日)
開催場所
沖縄県石垣市
参加人数
20名(沖縄本島から18名、石垣市内から2名)
協力団体
エコツアーふくみみ、わくわくサンゴ石垣島、しかたに自然案内、吉田サバニ造船、コラコラ、㈱花谷農園、農業生産法人㈱畑里、環境省沖縄奄美自然環境事務所 石垣自然保護官事務所
サバニの知恵や文化に触れたり、現地の人も知らない鍾乳洞に潜入!
石垣島に到着して最初に向かったのは久宇良公民館。台風通過後の強風の影響のため、予定したサバニ乗船とシュノーケリングは中止し、伝統的な木造船「サバニ」づくりの知恵や文化について学びました。本体は宮崎産の杉ですが、クサビは石垣産のイヌマキの木を使用しているそうです。今では木造船を作れる人材は日本に10人程度と語る吉田友厚(ともひろ)さん。伝統あるサバニを観光に活用し、海の大切さを伝えていきたいと想いを語りました。
サバニとシュノーケリングの代替プログラムとして実施したのは、島北部にある鍾乳洞の探検。地元のバスドライバーも知らない鍾乳洞です。探検は、草むらを分け入った先にある洞窟の割れ目からスタート。ロープで4mを下り、水が流れる暗い岩場をヘッドライトを頼りに、時に首元までの深い水たまりを泳ぎならがら進みます。島をつくった琉球石灰岩や鍾乳洞で生きる生き物を間近で観察した隊員たち。「怖かったけど水が冷たくて楽しかった」「もう1回入りたい」など興奮気味に探検の様子を語りました。
サンゴ礁と人のくらしはどう繋がっている?
ホテルでの夕食を挟み、夜は、石垣島に駐在する環境省のレンジャーとしてサンゴ保全に取り組む山本以智人さんを迎えて、サンゴ礁と人のくらしについて学びます。世界の海でサンゴが生きられる海域はわずか0.2%に対し、サンゴ礁域では全ての海洋生物の25%もの種類の生き物がくらしています。八重山諸島のサンゴ礁はグレートバリアリーフよりもサンゴの種類が多く、人にとっては水産物だけでなく、家を造る材料、天然の防波堤、遊ぶ場所、観光資源など、様々な面でくらしに豊かさをもたらしています。
そんな豊かな海でも、近年は赤土・生活排水の影響や、地球温暖化によるサンゴの白化が進み、消失の危機に瀕しています。環境省では、天然サンゴを付着させる着床具の形を変えてみたり、石西礁湖全体ではなく特に回復させたい海域を絞って、サンゴの幼生を供給できる拠点化を目指すなど、新たなサンゴ保全の方法にチャレンジしていることが紹介されました。
隊員たちからは「サンゴの寿命は何年ですか?」といった質問や、「自分たちにできる行動をしていきたい」などの感想があり、サンゴ保全活動について意識を高めた様子でした。
イシガキジマはどのように作られた?
2日目はヤマバレーと呼ばれる海岸地域へ。岩場から海岸へ10m以上降りていく急な崖を歩きながら岩壁を観察。岩壁に近づいて見るとサンゴの模様が確認でき、かつてここがサンゴ礁だったと確認できます。石垣島で自然環境教育を行う「エコツアーふくみみ」ガイドの大堀健司さんから石垣島の島の成り立ちや構造について学びました。
石垣島の地質は古い岩石と琉球石灰岩で構成されます。古い岩石にも様々な種類があります。2億年も前の変成岩である片岩やマグマが地下深くで冷え固まった後に浮上してきた花こう岩、火山噴火でできた安山岩やデイサイトなどがあります。古い岩石の周りにサンゴ礁が育ち、時間をかけて琉球石灰岩となり陸地となり、島が構成されていきました。琉球石灰岩でできた陸地はサンゴ礁段丘とよばれ、人が生きるために必要な住居や畑の多くはサンゴ礁段丘の上に築かれていきました。今回調査したヤマバレーは、花崗岩由来の砂とサンゴのかけらが一緒に確認できる珍しい砂浜が広がります。マグマがゆっくり冷える過程で結晶が成長してできる水晶も探しました。子どもたちは「島が琉球石灰岩だけじゃないことが分かった」「水晶がキレイで感動した」など感想を述べ、島の成り立ちというスケールが大きいテーマにも真剣な表情で耳を傾けていました。
海岸線を進め!コーステアリング探検
午後は野底崎に移動し、コーステアリングに挑戦。コーステアリングとは、岩場が続くなど先に何があるかわからないような海岸線を歩いたり登ったり飛び込んだりしながら進んでいくイギリス発祥のアクティビティ。石垣島では古くから子どもたちが海岸線で同じような遊び方をしていたことから、昔と変わらない海での遊び体験と、海岸線の地形や石灰岩と安山岩の崖の違いなどを体感することが目的です。
吹通川の河口をスタートし、ゴールの下地の浜を目指しました。5名ずつ4班に分かれて、4つのポイントに設置された宝を探しに進みます。強風の心配があったため、岩場に上らない平坦で安全なコースでしたが、腰ほどの高さの浅瀬で泳いだり歩いたりしながら海を存分に楽しみました。見つけた4つの宝にはそれぞれキーワードが隠されており、つなげると1つのメッセージが。「ジオケーキヲタベテイシガキジマノチシツヲリカイセヨ!」。海から移動した隊員たちを待っていたのは、石垣島の地質をモデルにしたジオケーキ。わくわくサンゴ石垣島の大堀則子さんがこの日のために準備したオリジナルケーキです。
ケーキを食べる前にみんなでケーキの制作過程を撮影した動画を鑑賞。野底層やトムル層は地質別に色分けした蒸しケーキで表現、一番新しい琉球石灰岩はレアチーズを流し込んで冷やし固めて完成。みんなで美味しくいただきながら、島の構造の理解を深めました。隊員たちは「こんなに長い時間かけて海を歩いたのは初めてで、宝探しが楽しかった」「複雑な地質で作られているんだと分かった、ケーキがおいしかった」と笑顔で振り返りました。
畑とサンゴ礁はどうつながっている?
3日目はサンゴにやさしい八重山ローカル認証「コラコラ」を推進する花谷農園で、サンゴにやさしい畑づくりについて学びました。「農業といえば土の上に注目されがちだけれど、土の中に生きる土壌微生物が大切です」と、講師の花谷まゆさん。土壌微生物の大きさはアリの1000分の1、両手ですくった土の中に600億匹もいて、自然界では、植物は光合成で得たデンプンの3分の1を根っこから放出して微生物をおびき寄せ、微生物が分解する栄養を根っこから吸収する共生関係にあるそうです。
一方、農業で肥料・農薬・除草剤を使うと、地中の微生物は体の水分を奪われて死滅していき、化学物質が地中で蓄積すると30cm程度の深さで固い硬盤層ができます。微生物が減った地中では水や空気の流れがストップし、硬盤層以上に根っこが地中に伸びません。そういう土では植物は病気になり、それを改善するためにまた農薬を、といった悪循環といえる状態になるといいます。花谷農園では肥料・農薬・除草剤を使用せず、微生物を増やすための取り組みをしています。微生物のえさとなる有機物を土に加え、微生物が多い土づくりを行います。こうした地中では、土は0.2mmサイズの団粒となり、これを糸状菌がまとめることで団粒同士の間に隙間が生まれ、水や空気が通りやすくなります。すると根っこが深くまで伸び、増えた微生物から根っこに栄養が届く好循環が期待できるといいます。微生物が根っこにもたらす栄養はミネラルそのもので、ミネラル豊富な野菜が育ちます。
畑では、隊員たちが雑草の根を抜いて確認したり、その場でもいだオクラを試食し、「しょうゆをつけなくても甘い!」など驚いていました。
また、地中深くまで根を張るために保水力が高く、雨などで表土が海へ流れてサンゴに悪影響を与える赤土流出問題にも有効です。通常の畑と団粒構造の畑の模型を使ったデモンストレーションでは、「こっちの畑は全く赤土が流れ出ない!」と感心した様子でした。海を守る畑の仕組みを理解した隊員たちは「こんな野菜をたくさん食べたい、買いたい」と興味を示していました。
海を守る月桃の活用法とは
続いて向かったのは農業生産法人畑里さん。県産ハーブを使ったお茶づくりを営む伊良皆高虎さんは、ローカル認証コラコラに賛同しています。グリーンベルトで育てた月桃を何かに活用したいと思い立ち、月桃の葉から精油やハーブティーを作っています。
隊員たちは今回、月桃の枝から葉をハサミで切り落として釜に入れまでの行程を体験。親指サイズの小瓶いっぱいの精油をつくるために、300キロもの月桃の葉が必要というから驚きです。伊良皆さんは、どうしてこんな大変な取り組みをするのか、そもそもどうして海を守る活動がしたいのか、想いを語ってくれました。釣りが好きだという伊良皆さんはこの10年20年で魚が釣れなくなったと実感しているそうです。自身が子供のころに遊んだ、きれいなサンゴ礁ときれいな魚がたくさんいる海を自分の子供たちの世代に残したい、子供たちにもそのまた子供たちのために海を残していってほしいと隊員たちに語りました。
「自分にできることとして月桃オイルや月桃茶をつくり、それが売れれば月桃を植える人が増え、グリーンベルトが広がって、海を守ることにつながっていけば」という伊良皆さんの熱いメッセージに、隊員たちは集中して聞き入っていました。最後にみんなで月桃茶を飲み、「ムーチーとはちょっと違う味だけど、美味しい!」と爽やかな味わいを楽しみました。
海へのメッセージを発信しよう!
最後のまとめ学習は初日と2日目の夜に振り返り学習を担当し、本イベントの監修を務めるしかたに自然案内の鹿谷麻夕さん。振り返りでは、それぞれのプログラムで知ったこと、考えたこと、感じたことを書き出しました。それらを元に、未来の海に向けたメッセージを作ります。今回は沖縄の文化である琉歌(8・8・8・6)のリズムで言葉を考えました。琉歌は前半の8・8で風景や出来事を、後半の8・6で心や気持ちや希望を表現します。班のメンバーで意見を交わし、合計6種の琉歌が生まれました。このあと、琉歌に含まれるメッセージをデザイナーが吟味して、最後に学んだ農業生産法人畑里さんの月桃茶のパッケージに載ります。また、望ましい島や海をイメージしたイラストも描き、こちらもパッケージに表現されます。さらに那覇市と浦添市を走る沖縄都市モノレール「ゆいレール」と「しまうみ探検隊in石垣」がタイアップし、11月に特別車両内でイベントが紹介される予定です。
全行程を終えた子供たちは、「もっと海について知りたいから帰りたくない」「石垣島のきれいな海を体験できて良かった」と嬉しそうに語り、2泊3日ですっかり仲良くなった友達同士で移動中のバスや飛行機でも喋り続け、わずかな自由時間を惜しむように楽しんでいました。
参加した子ども・保護者からの声
・「自然を守ると言っているだけではだめで、行動しなくてはならないと思った」小6女子
・「洞窟探検やコーステアリングは貴重な体験で楽しかった」小5男子
・「また石垣に行って親と巡りたい。自然を残すためにできることをしたい」小5女子
・「帰宅途中の車内で長い時間熱く語ってくれました。親がさせたくてもできない体験をしまうみ探検隊でやっていただき、本当に感謝しています」保護者
・「あまり学校での出来事などは教えてくれないのですが、普段と全く違った顔ですごくイキイキしながら話してくれる姿を見て感動しました。優しく温かく見守ってくれてありがとうございました」保護者
イベントレポートは実施事業者からの報告に基づき掲載しています
参加人数:20人